闇の誕生
悪夢のレーティングゲームが終わり1ヶ月も立たないうちに世界中で神器を持っている人間が暴れているという事件が起き始めた。
その事件について風見鶏の公式新聞部も動ける者から動き始めていた。
それは、清隆やリッカも例外ではなかった。
二人はエリザベスにより少し多めの神器持ちが暴れているという情報を得てある工場に来ていた。
メンバーはリッカと清隆の二人のみであった。
ほかのメンバーも違う地域に鎮圧をしに出かけていた。
カテゴリー5の二人が同時に行くのには少し理由があった。
「桜火・紅蓮乱舞!!」
「吹っ飛びなさい!風魔の術!!」
清隆の桜の連撃とリッカの風の攻撃が次々と神器持ちの人間を吹き飛ばしていく。
「な、何なんだ!?」
「風の魔法……。まさか、風見鶏の!?」
「あいつらの顔、思い出した!?風見鶏と呼ばれる魔法使い集団の要注意人物!?」
「孤高のカトレアと桜の守護者だ!!」
「あ、あんな化け物たちに敵うわけないじゃないか!?」
神器持ち達の悲痛の叫びが木霊する。
しかし、二人はそんな言葉に耳を傾けることなく次々と倒していった。
全員をノックダウンしたところにちょうど杉並が現れる。
「ご両人、ご苦労だったな」
「杉並先輩もお疲れ様です」
「杉並、こいつらのこと頼んだわよ」
杉並は数人の非公式新聞部のメンバを連れ、倒されている人間たちを空間の中に連れていっている。
「ここもハズレのようね」
「ウム。だが、そろそろ接触してきても良い頃合なのだがな」
「そうですね。噂の英雄派の誰かが」
今、3人の会話の通り、二人が行動している時は、英雄派の誰かが動きを見せている時だった。
まだ、風見鶏や他のメンバーだと完全に戦闘・捕縛が出来るか不安なためこの二人が動いていたのだ。
「まぁ、今回も接触はなさそうだな。そうだ」
杉並は何かを思い出したのか懐から封筒を取り出し、二人に封筒を渡す。
「これは?」
「それは、いつも働いてもらっている褒美にと俺個人からのささやかなプレゼントだ」
清隆の質問に淡々と答えてその場から杉並は姿を消していった。
「ねぇ、清隆。その中身ってなんなのよ?」
「え?あ、そうですね。今開けます」
清隆は封筒の封を破りなかにある物を取り出す。
「これは、何かのチケットですかね」
「見せて見せて」
清隆が何かのチケットを取り出し、内容を見ようとしたときにリッカにひったくられる。
「これは、〇〇ランドの温水プールのチケットよ」
「へぇ、で、チケットが2枚ですけどどうします?」
「ちょっと待って」
リッカがそのチケットを詳しく見る。
「これ、有効期限が今日までになってるわよ。清隆」
「何です?」
「今からここに行くわよ!」
「は、はい!え?え~!」
清隆の声が響きわたった。
ということで、清隆とリッカの二人は〇〇ランドの温水プールまで来ていた。
「リッカさん、遅いなぁ」
「清隆ぁ!」
清隆がぼやいているとすぐにリッカが姿を現す。
「どう、清隆。この水着」
「えぇ、とっても似合っていると思いますよ。じゃ、早速泳ぎましょうか」
「えぇ!」
清隆はリッカを引っ張りプールの方に走っていく。
(ほんと、子供みたいにはしゃいじゃって。でも、そこが清隆のいいところでもあるんだよなぁ)
リッカは自分の想いを口に出すことはなかった。
???side
○○○がこの世を去ってもう数年になる。
俺はいつもの様に彼女の大好きだった桜の木の下にやって来た。
彼女が笑っていた姿。
彼女の泣いていた姿。
彼女の怒っていた姿。
今でも鮮明に俺の記憶の中に思い浮かんでくる。
彼女の夢。
俺は一生懸命頑張った。
その成果を彼女に見て欲しかった。
でも、その彼女はもう俺の目の前には居ないんだ。
そう実感するだけで自然と俺の頬を涙が伝う。
そんな時だ。
俺の知らないうちに黒い仮面のようなものが現れた。
『オマエノネガイヲカナエテヤロウ』
仮面が突然しゃべったような感覚に陥った。
だが、仮面がしゃべるわけもなく気味も悪いのでその仮面は次の日に近くの海に捨てた。
しかし、家に帰るとその捨てたはずの仮面が再び帰ってきていた。
『オマエノアイスルモノモヨミガエル』
その言葉に俺の心は仮面に奪われてしまったのかもしれない。
『サァテヲノバスガヨイショウネン』
俺の心が危険だと告げていた。
しかし、この仮面の言うとおり○○○が蘇るのだとしたら。
そんなことはありえないとしても……。
俺は少しの希望を持ち、仮面に手を伸ばした。
仮面に手を伸ばして数日後のことだった。
仮面から○○○を蘇らせる方法が頭の中を駆け巡るように思い浮かんできた。
その方法は人の命をとても軽く見ている行為だった。
それでも、俺の大事な人がもう一度俺の前に姿を現してくれるのだとしたら。
もう一度、あの笑顔を見えるのだとしたら。
俺はその方法を試すことを決意した。
その時、突如目の前から黒服の男性が姿を現した。
「お前は何者だ!」
「私の名はトゥルーマン。ミスターTとでも呼んでください、我が主『ダークネス』」
ミスターTの話の内容ではあの仮面はダークネスと呼ばれるモノで選ばれし者の願いを叶えてくれる代物らしい。
ミスターTはダークネスの付き人のようなもので宿主の手下として働いてくれるらしい。
最初は夢のような話だったが、現実味が有りすぎて信じるしかなくなってしまった。
「分かった、ミスターT。では、俺の手下として俺の願いのために働け」
この日から俺は自分の名を捨て、ダークネスと名乗ることにしたんだ。
ダークネスとなって1年後。
「準備は整っているか、ミスターT」
「はい、後は最終調整のみとなっております」
「そうか、なら俺はいつもの場所にいるから終わったら呼びに来てくれ」
「了解しました」
俺はその場所を後にした。
そして、俺がやってきたのは小さな公園。
「もう、こんな季節か……」
俺は、その公園の真ん中に咲く桜の木を眺める。
俺の生涯をかけて守ると約束した女性の好きだったもの……。
いつか、子供が生まれたらお花見をしようという約束……。
死ぬ寸前まで桜が見たいという彼女の願い……。
喧嘩をしてはいつもこの木の下に君は来ていたね。
そして、いつもお互いがここで謝って笑顔になった。
ここで、君は俺に教えてくれたね。君の過去を……。
そんな思い出の場所……。
「もう、こんなにも桜が咲いている……。それなのに、君は俺の隣には……居ないんだ」
俺は落ちてくる花びらを手の上に乗せる。
俺の頭の中にはいつだって笑顔の君がいた。
「君はこんな手段しか取れない俺を軽蔑するかもしれない。それでも、俺は君ともう一度この桜を見たい」
ダークネスはそっと桜の木を撫でる。
「どうか、彼女と俺が帰ってくるまで咲き続けておくれ」
「……ダークネス様」
ダークネスが振り向くと公園の入口にミスターTの姿があった。
「最終調整、終了しました。いつでも、大丈夫です」
「ありがとう、ミスターT。君にも色々迷惑をかけたね」
「いえ、もったいなきお言葉です。では、参りましょう」
ミスターTを追いかけるようにダークネスも公園から出ていこうとする。
「さぁ、最後の終わりを始めますか……」
ダークネスは空を見上げる。
「全てを守り抜くことができるかな?芳乃を受け継ぎし『芳乃清隆』」
ダークネスの呟きは桜吹雪の音によってかき消された。
その後ろ姿はかつて英雄と呼ばれた男の姿にそっくりだった。
『幾度の年月を超えようと……』
どれだけの年が刻まれようと……。
『どれだけの犠牲を払おうと……』
例え、それが人の道から外れようとも……
『叶えたい想いがある……』
彼女のことが俺は大好きだ……
『叶えたい願いがある……』
彼女の笑顔を見たい……
『叶えたい約束がある……』
彼女ともう一度お花見をしたい……
『守らなければならない場所がある……』
この桜が枯れてしまう前に……
『交わしたい言葉がある……』
そして、別れの言葉をきちんと伝えたい……
一歩一歩とゆっくりと歩んでいく……
これは全てを切り捨てた少年の……
終わりを迎えるための序章……。
再び二人きりになれた清隆とリッカ……
リッカは清隆と自分との距離について語る……
覇龍との一件でさらに自分たちと距離を引いてしまった清隆に……
だからこそ、リッカは再び清隆に伝えたかった……
自分の気持ちを……
決して変わることのない『愛』を……
そして、リッカは決意する……
もう一度、『愛』を伝えることを……
次回「告白」
それでも、私はあなたのことが好きなの!一人のリッカ・グリーンウッドは葛木清隆が好きなの!