温水プールを満喫した二人は近くにあった大きな公園に来ていた。
二人は缶コーヒーをのんびりと飲んでいた。
「久しぶりに羽目を外したわね」
「ほんとにですね。風見鶏時代には毎日外していたのに、最近はいろんなことがありましたからね」
その言葉に二人の頭に浮かんだのは最近の出来事だった。
悪魔、天使、堕天使の存在。
すべての勢力の和平会談。
冥界でのレーティングゲーム。
イッセーの覇龍の覚醒。
たくさんの出来事がいっぺんに起こった。
「ねぇ、清隆は後悔してない?」
「どういう意味です?」
突然のリッカの言葉に清隆は聞き返した。
「悪魔たちと関わることよ」
「後悔なんてしませんよ。だって、大切なものが見つかったから」
清隆はそう言いながら手を広げ、そこに桜を出現させる。
「ずっと、嫌いだった『芳乃』の名前。静流や美琴、ティアナやスバル、アスナやシノン、ゼノヴィアに黒歌や小猫。たくさんの仲間とも巡り合えた。それに生きる目標もできた。守りたい約束が出来た。こんなにもいいことがあったんですよ。後悔なんてあるわけないじゃないですか」
「……」
リッカは無言で清隆の言葉を聞いていた。
「清隆、私はあなたのことが好き」
「……俺も、リッカさんやみんなのことが大好きです」
「違うの!私は!あなたのことがひとりの女性として好きなの!仲間とかそんなの関係なく!」
「ッ!?なんども言ってるじゃないですか。リッカさんは俺よりももっといい人が現れるって」
リッカを鎮めるように清隆が言う。しかし、リッカは止まらない。
「私は!私は清隆には一人の女性としてみてもらいたいの!」
リッカの真剣な眼差しに清隆はその想いを否定できなかった。
「兵藤の覇龍を止めてからあなたは私たちにさらに一線を引いてしまった。何があったのかを聞こうとは思わない。それでも、私はあなたのことが好きなの!一人の女の子としてリッカ・グリーンウッドは葛木清隆が好きなの!」
「リッカさん……」
清隆はゆっくりとリッカを抱きしめる。
「分かりました。俺、ループ世界のことも断片的にしか覚えていないけどリッカさんに惚れていた世界も存在することを知っています。それに、俺もリッカさんのことを真剣に考えるんで少しだけ待ってもらえませんか?必ず答えを出します。だから、少しだけ俺に時間をくれませんか?」
清隆がそう真剣にリッカに言うとリッカは涙を流しながら頷いた。
「え、えっ!?ど、どうして泣くんですか!?」
「だ、だってぇ、ヒック、清隆がやっと私を見てくれたことが嬉しくて」
「リッカさん……」
清隆は気づいてしまった。
リッカも普通の女性だということに。
リッカが泣き止むまで清隆はリッカを抱きしめ続けた。
それから数分後。
「ごめんなさいね、清隆。みっともない姿を見せちゃって」
「そんなことは構いませんよ」
「えぇ、そうね。ッ!?清隆!!」
「え!?」
ドゴーーーーーーーーン!!!!!!!!!!
突如、二人を大きな爆撃が襲った。
ギリギリのところで清隆はリッカに突き飛ばされ爆風だけを浴びた。
「ゲホッ、ゲホッ!ってー!ッ!?リッカさん!」
煙が晴れていく。
リッカは無事そうだが、何かの魔法によって閉じ込められていた。
「リッカさん!「来ちゃダメ!」え?」
清隆が駆けつけようとするとリッカが清隆を止める。
「ほぉ、流石カテゴリー5の魔法使いといったところかな」
二人がその声に驚き、見上げるとその先には黒い仮面を付けた男が姿を現した。
「だが、その様子だとカテゴリー5でもそれを破るのは無理なのだろう?」
「えぇ。こんな魔術は短時間では破るのは不可能よ」
リッカのその言葉に清隆が驚く。
「まぁ、目的は果たしたし、そろそろ戻ろうか」
仮面の男はリッカの居る球体を浮かせる。
「待ちやがれ!」
「やめなさい清隆!」
清隆がそう言い、両手に魔力を溜めるモーションを起こす。リッカは止めるがその声も遅く、一瞬で仮面の男は清隆の懐に潜り込む。
「遅すぎだ、芳乃清隆!」
「グハッ!」
清隆は腹部を数発殴られ、少し後退する。
「弱すぎだよ、本当に。お前は弱すぎる。それに、お前では絶対に俺には勝てない。どんな手段を使おうとだ」
「あんた!いい加減にしなさい!」
リッカが怒鳴りながら懸命に魔術を解公とするが一向に解除できない。
「無駄だ。その魔術は君専用に改良を施してある。絶対に君の力では解けない」
そう言い、再び清隆に迫る。
「お前は弱さを罪ではないと言うだろう……」
「グハッ!」
再び、仮面の男の拳が清隆に突き刺さる。
「だが、お前のその弱さは罪だよ……」
「グッ!?」
素早い拳の嵐が清隆を遅い、最後に蹴りが炸裂し清隆を吹き飛ばす。
「お、お前は何者なんだ……」
「そうだな、名乗らないのは失礼だな」
一度、男はリッカの方を向き再び清隆を見る。
「我が名はダークネス。全てを終わらせるピリオドだ。そろそろ、こちらの時間もあるので失礼させてもらおう」
「ま、待ちやがれ!」
ドガガーーーーーーン!!
清隆が両手に魔力を溜めた瞬間、両手が爆発した。
「ぐ、がぁ…、な、何が…」
「言い忘れていたが、先程の攻撃の途中で君の両手に魔法を使おうとすると爆発する魔術を組ませてもらった。もう、両腕は使い物にはならないだろうな」
「ダークネス様」
そして、ダークネスの横に一人の男性が現れる。
「なッ!?お前!」
突然清隆が怒鳴る。
「やぁ、ミスターT。そちらもうまくいったようだね」
「ハッ。ダークネス様の作戦通りです」
ミスターTは背負っている少女を見せる。
「葵!」
「葵ちゃん!!」
そう、ミスターTの背負っていた少女は葵だったのだ。
「心配することはない。彼女は生きている。では行こうか」
「まぢやがれ!!」
「まだ、口を動かす余裕があるか……。もう、お前には失望した。お前に永遠の夢を与えてやろう」
ダークネスは瞬間的に清隆のもとに行き、額に手を添える。
「ち、ちくしょう……」
清隆はそっと意識を手放すように倒れ込んだ。
「では行こうか、リッカ・グリーンウッド」
「私をどこへ連れていく気?それに、私があなたに協力をするとでも?」
「君は必ず俺に協力をする。絶対だ。どこに連れていく、か。陽ノ本葵と君は俺の目的に必要な存在だからな」
ダークネスは周りを見渡す。
「ダークネス様?」
「まぁ、構わんだろう。俺の目的を叶える祭壇のある城『夢幻城』だ。そろそろ、おしゃべりは終わりだ」
そう言って、ダークネスはミスターTたちを連れ、その場から消えた。
直ぐに一人の影がそこに落ちる。
「フム。あいつは一体……。それに、夢幻城とは一体……。おっと、そんなことよりも、葛木の手当をせねば」
その男性は直ぐに清隆に近づく。
「ひどい傷だ。だが、なぜこのような倒し方なのだ?これではまるで殺す気はもともとから無いようなやり方ではないか。それに、陽ノ本も連れて行かれた。とりあえず、風見鶏に連絡を入れるか。これは何か嫌な予感がする。急いで、風見鶏に帰らなければ。奴らを追えるか?」
男性の使い魔であろうカラスたちはその声と共に声を上げながら飛んでいく。
「それにしても、魔術師か。ガーディアンでもないだろうな。では、はぐれか?まぁ、ここは風見鶏に帰って考えるとしよう」
男性は清隆に簡単な治癒魔法をしてその場から立ち去っていった。
時は遡る……
清隆達とは別の場所で神器持ちの敵を相手に戦っていた風見鶏勢……
そこに突如現れた敵『ミスターT』……
その謎の力に翻弄されていく仲間達……
傷ついていく仲間達を助けるため、一人の少女が立ち上がる……
次回「葵の覚悟」
嫌なら最後まで抗います。この命尽きるまで……