時は少し遡る。
「皆さん、上です!」
「ハァァ!!」
「甘いわ!」
「シノン!スイッチ!!」
「…行く」
葵、愛紗、星、アスナ、シノンもまた、全国各地に現れている神器持ちの人間たちの相手をしていった。
「人数は多かったが、大した強者は居なかったな」
「そうだな。皆、ケガはないな?」
星はそう言い皆を見る。
皆はその言葉に縦に首を振った。
「では、風見鶏に連絡を…ッ!?何奴!」
星は近くに落ちている石を龍牙で天井付近に弾き飛ばす。
星のその行動でその場にいた全員が戦闘準備に入る。
「おやおや、まさか私に気がつく者がいるとは驚きです」
そう言って現れたのは黒いスーツを着た男だった。
「何者だ!!」
「まぁ、バレては名乗らないのは失礼というものかな。私はトゥルーマン。ミスターTと読んでくれて構わない。では悪いが、君たちにはここで消えてもらおう」
そう言った瞬間、ミスターTから強烈な殺気が放たれる。
「クッ!?なんという禍々しい殺気だ…。先程の神器持ちとは比べ物にならない。アスナ、シノンの二人は葵と共に下がっていろ!星、行くぞ!」
「あぁ!」
「「禁手!!」」
愛紗と星の神器である青龍偃月刀と龍牙の形が鎧へと進化していく。
「魔龍騎士の鎧!」「聖龍騎士の鎧!」
二人は禁酒になるとミスターTの下に駆け抜けていった。
「葵ちゃん、下がろ。葵ちゃん?」
アスナが葵に呼びかけると葵はじっとミスターTの方向を見ていた。
「葵、どうしたの?」
シノンもその行動が不思議に思い、葵に聞いてみた。
「い、いえ、ミスターTさんの気配がなぜ私に分からなかったんだろうと思いまして」
「どういう意味?」
「私は元々探知系の魔法が得意です。だからこそこのメンバーの中に私がいるんです。でも、彼は私の探知魔法の中に簡単に入り込んできた。何か嫌な予感がします」
「大丈夫よ、あの二人だってそんなに弱くないんだから」
「アスナの言うとおり。二人は強い」
3人は少し離れ、愛紗たちの戦いを見ることにした。
「ハァァァァァ!!」
「フッ」
愛紗の鋭い攻撃をミスターTは軽々とよける。
「ハァァ!!」
そこに星も追撃をかける。
「遅い」
しかし、星の攻撃も片手で受ける。
「お前達、確かに少し強いかもしれない。だが、所詮その程度。一般人と比べれば雑魚と変わらん!」
「クッ!」
ミスターTは星を弾き飛ばす。
「弾き飛べ、闇礫!」
ミスターTは大量の黒い礫のようなものを二人に飛ばす。
「まだだ!黒龍葬!!」
「行くぞ!聖龍天翔!!」
ミスターTの攻撃を二人も迎撃する。
しかし、ミスターTのあまりの手数に二人の方が若干押され、ダメージを追う羽目になった。
「ほぉ、今の攻撃を防ぐか。ただの人間如きが少しは楽しませてくれるようだ」
ミスターTは二人をあざ笑いながら見下していた。
「何という攻撃力だ。咄嗟に力を出さなければ……」
「そうだな……」
二人は自分の周りを見ながらつぶやく。
周りには大きな穴がいくつか空いていたのだ。
そう、先程の礫の一つ一つの威力をここの地面が物語っていた。
「流石噂通りの風見鶏の連中だな。あの方の言うとおり一筋縄ではいかない。だが、たかが知れている。行くぞ、魔法使い。絶望を見せてやる」
ミスターTは両手に魔力を溜め、二人の前まで駆け出す。
「速い!?だが、その程度!」
「静流の速さに比べれば遅すぎる!」
ミスターTの攻撃を二人は再度によける。
「見えるのと体で反応できるかは全然違うぞ?」
ドゴッ!ドゴッ!
「「グフッ!!」」
二人はミスターTの攻撃をもろにくらいそのまま殴り飛ばされる。
「ゴホッ!ゴホッ!な、何が起こったのだ!」
「私にも何がなんだか。確かに我々は奴の攻撃をよけたはずだ」
愛紗と星も何が起こっているのかわからなかった。
その二人の様子をミスターTは笑ってみていた。
「経験不足だな。まぁ、わざわざ自分の技をばらすような馬鹿なことはしないぞ?自分で考えればいい」
ミスターTはそう言うと両手に魔力を溜め、それを圧縮し始める。
「次はそう簡単には防げんぞ?そういう攻撃を放つのだからな。あの方の願いだ。せいぜい死んでくれるなよ。ザ・カタストロフィー!!」
ミスターTの手から黒く禍々しい魔力が放たれる。
「星!行くぞ!」
「任された!」
「黒き龍よ、その想いを刃に乗せろ!」
「白き龍よ、その願いを刃に乗せろ!」
「「双龍双覇斬撃波!!」」
黒き龍を模した愛紗の斬撃と白き龍を模した星の斬撃が融合し、ミスターTの攻撃に向かっていく。
そして、二つの攻撃が中央でぶつかり大きな爆発が起こる。
「ハァハァ、ど、どうだ!」
「今のはさすがにやりすぎたか……」
愛紗の声に苦笑いをしながら星も続く。
「クックック。いやぁ、さすがに驚いた。今のと相打ちをするほどの攻撃を出来る人間だとは。それに、なかなか、興味深い。任務中でなければもう少し遊びたいところだ。しかし」
しかし、ミスターTは何事もなかったかのようにゆっくりと歩きだしてきた。
その光景に愛紗と星は驚きを隠せなかった。
ミスターTはゆっくりとアスナ、シノン、葵の3人の下に歩いていく。
「今回はその娘に用があるのでな」
ミスターTは葵を指差し、笑いながらゆっくりと近づいていく。
「ま、待て!!」
愛紗が叫ぶが体が動かなかった。先程のダメージと魔力の消費により二人とも体が動かないのだ。
「おっと、そこの二人はもう動けないはずだ。それほどのダメージと魔力消費をしたのだからな」
ゆっくりとミスターTが近づく。
「シノン!葵を連れて逃げて!行くよ、アロンダイト!フォルムチェンジ!!」
アロンダイトの刀身が二つに別れていく。
「『デュアル・アロンダイト』!!ハァァ!」
瞬間的にアスナは加速し、ミスターTの懐に潜り込む。
そして、ミスターTの腹部を斬り付ける。
「え?なっ!?」
しかし、切り裂いたところからミスターTは黒い影になり消えアスナの横に現れる。
「フム。貴様も悪くはない。今の瞬間加速も申し分ない速さだ。だが、相手が悪かった。闇へ誘え」
「しまっ!?ガハッ!!」
アスナの腹部にゆっくりと手を近づけ、そのまま黒い波動のようなものを受けアスナは吹き飛ばされる。
「残りは……」
ミスターTはゆっくりとシノンと葵の方を向く。
「わ、私が守らなきゃ……」
シノンは銃口をミスターTに向けるが手が震え、うまく狙いが定まらない。
「ほぉ、その震えた手で私と戦うと?」
ミスターTが笑いながら一歩、また一歩と近づいてくる。
「わた、私が「もういいですよ、シノンさん」あ、葵?」
葵はシノンの銃にゆっくりと手を置き下に下げさせ一歩踏み出す。
「私がそっちに行けばみんなには手をだしませんか?」
「ほぉ、取引か。陽ノ本葵。私にメリットが?」
「嫌なら最後まで抗います。この命尽きるまで。清隆さんに怒られそうですが」
「あ、葵!「シノンさんは黙っていてください!」…クッ」
葵の言葉にシノンは下がるしかなかった。
「それでいいんです。戦闘時には冷静に戦況を見なければなりません。ミスターTさんは言いましたよね。私が目的だって。私が死んだら困るのはあなたじゃないんですか?」
葵の言葉にミスターTは少し考え込む。
「まぁ、素直についてくれるならそれでかまわないか。なら、約束しよう。この4人には手を出さない」
「ありがとうございます」
葵はミスターTにの横に立つ。
「少しお前には眠ってもらうぞ」
そう言い、ミスターTは葵の頭に手を置き、魔法をかける。
葵はそのままゆっくりと意識を手放した。
「ま、待て!」
シノンがミスターTを睨みつける。
「無駄だ。貴様では私と戦うことすらできん。陽ノ本葵の願いで生かしておいてやる。せいぜい、救護を頼んでさっさと風見鶏に帰るんだな」
そう言い残し、ミスターTは葵を連れてその場を去った。
シノンはゆっくりと跪く。
シノンの視線の先には涙を流す愛紗と星、意識を失ってボロボロのアスナの姿が瞳に映る。
「わ、私は……」
シノンは涙を流すことしかできなかった。
ダークネスの呪縛が解けずに眠り続ける清隆……
彼の病室に次々と訪れる彼を慕う少女たち……
少女にとっては自分の呪縛を解いてもらったヒーロー……
少女にとっては自分を魔法使いとして導いてもらったヒーロー……
少女にとっては自分を認めてくれたヒーロー……
少女にとってはいつもそばにいてくれる無敵のヒーロー……
少女たちに再び絶望が走る……
次回「眠り続けるヒーロー」
こんなにも暖かい。それなのにこっちに意識はない。どんなときも彼にはいろいろなものを背負わせてしまいました。皆彼を好いている。なぜ、皆は私を恨まないんでしょうか……