「そうですか、リッカさんと清隆君が」
「はい、陛下。相手は本物の魔術師です」
「ッ!?そうですか」
学園長室で話しているのはエリザベスと杉並だった。杉並の言葉にエリザベスは驚きを隠せなかった。
「とりあえず、清隆君に会いに行ってもいいかしら?」
「はい。ですが、未だに意識は戻りません。むしろ、おそらく何かの魔法もしくは魔術にかかっているかもしれません」
二人はそう言ってそのまま清隆の眠る病室まで歩いていった。
コンコンッ
「失礼するわ」
「「エ、エリザベスさん!」」
中にいたのはシャルルと巴だった。
「二人ともいたのね」
「ほぉ、今は二人だけか」
杉並もエリザベスの後ろから姿を現す。
巴は杉並を見た瞬間、席を立ち杉並の下に歩いていく。
「どうした、五条院「ドガッ!!」ガフッ!!」
「と、巴さん!?」
「巴!何してるの!?」
巴の突然の行動に二人も驚きを隠せなかった。
そう、巴が杉並の顔面を思いっきり殴ったのだ。
しかし、殴られた当人が一番平然とし、そのままゆっくりと立ち上がった。
「なぜ、なぜ清隆がこんな目に遭っているんだ!!答えろ、杉並!!」
「それを、皆が集まり次第直ぐに伝える。今は落ち着け、五条院。今回の敵は本当に一筋縄ではいかない可能性がある。俺を殴っても何も変わらん」
「クッ!分かっている!分かっているんだ、そんなこと!!」
巴はゆっくりと病室から出ていく。
「と、巴「待って、シャルルさん」エリザベスさん?」
シャルルが巴に近づこうとするがそれをエリザベスが手で静止させる。
「今は一人にしてあげましょう。それに、あなたも少し顔を洗ったほうがいいですよ?」
エリザベスはシャルルの目元をハンカチを取り出しそっとふく。
「ずっと泣いていたのでしょう?目が赤くなっているわ。大丈夫、私と杉並君でここにいるから」
「あ、ありがとうございます」
そう言って、シャルルも病室をゆっくりと出ていく。
そして、エリザベスは先程まで巴の座っていた椅子にゆっくりと座り清隆の顔をのぞき込む。
「本当に眠ってしまっているんですね」
「陛下?」
エリザベスはゆっくりと清隆の手を握る。
「こんなにも暖かい。それなのにこっちに意識はない。どんなときも彼にはいろいろなものを背負わせてしまいました。皆彼を好いている。なぜ、皆は私を恨まないんでしょうか」
「その答えは陛下自身がもう分かっているのでは?」
「……そう、皆は優しいですから」
そのまま、少し時間が流れ誰かが走ってくる足音が響きわたる。
「兄さん!!」
「清隆!!」
現れたのは姫乃とサラだった。
そして、二人はエリザベスと目が合う。
「え、エリザベスさん。兄さんは……ッ」
「姫乃!?」
姫乃は清隆の姿を見た瞬間その場に座り込んでしまう。
直ぐにサラがフォローに入る。
「そんな…どうして……」
「とりあえず姫乃、私たちは出ていきましょうか。エリザベスさん。後で事情の説明をお願いします」
「えぇ、いつもの場所にみんなを集めておいてくれると助かるわ」
「はい。分かりました」
サラはそう言い残し、姫乃を連れて部屋を出ていった。しかし、エリザベスと杉並は気づいてしまった。サラの瞳にも涙が浮かんでいることに。
「皆それぞれショックを受けてしまっています。特に葛木妹にはダメージが大きいでしょうね」
「えぇ。シャルルさんにとっては自分の呪縛を解いてもらったヒーロー、巴さんにとっては自分を魔法使いとして導いてもらったヒーロー、サラさんにとっては自分を認めてくれたヒーロー、姫乃さんにとってはいつもそばにいてくれる無敵のヒーローでしたから、清隆君は。私たちもいつまでもここにいてもあまり意味もありません。それよりも、アスナさん達は?同じように襲撃を受けたと聞いたのだけど」
「彼女たちは大丈夫です。むしろ、愛紗と星に関してはすぐに修行に戻りました。よほど悔しかったのでしょう。目の前で仲間を失ったことが」
杉並を窓から外を眺めながらそう言った。
「そう、分かったわ。なら、今から皆に説明をしたいので先程サラさんにも言いましたが、もう一度皆のシェルに集まるように伝えてもらえますか?」
「了解しました、陛下」
その後、二人は清隆の病室を後にした。
二人が約束の場所にたどり着くと皆が真剣な眼差しで二人を見つめる。
「では、ここに集まってもらったのはほかでもありません。今回我が風見鶏の数名がダークネス、ミスターTと名乗るものに襲われたことについての会議です。杉並君お願いします」
エリザベスはそう言い、一歩下がりそれと同時に杉並が一歩前に出る。
「まず、グリーンウッドと陽ノ本がダークネス及びミスターTと呼ばれる二人に拉致されたこと。二人を救出することが今回の任務の最重要事項だ」
「いいですか?」
杉並の言葉に美琴が手を挙げる。
「何だ?要件は手短に頼むぞ?」
「では失礼します。言っちゃ悪いですけど陽ノ本さんは拉致されるのはわかるとします。でも、リッカさんほどの魔法使いが拉致されたっていうのがイマイチ実感がないんですけど…」
美琴の言葉に数名が頷く。
「実感がなくとも事実だ。と、言いたいところだが、今回ばかりは相手の実力がこちらを上回っているとは言いにくい。そのへんも含めて詳しく説明する。まず、御坂よ。魔法使い、魔術師の違いは説明できるか?」
「え?えぇっと…」
「フム。なら、ランスター達は?」
声をかけられたティアナ、スバル、アスナ、シノンも首をかしげるだけだった。
「まずそこからだな。まず、魔法使いというのは魔術師の中のひとつだ。魔術師の定義を外れているものを魔法使いという。ここで質問は?」
「ひとついいか?」
ゼノヴィアが手を挙げ質問する。
「何だ?」
「先程から魔術や魔法などの言葉があるが、違うのか?」
「うむ。そのへんの説明は俺よりもクリサリスの方が適任だろう。この中にも魔術や魔法の違いがわからないものも多いだろう。クリサリス、頼めるか?」
「はい、大丈夫です」
杉並の言葉にサラはすぐに返事をし、杉並のいる場所まで歩き皆の方に振り返る。
「まず、魔術というものについて説明します。魔術というのは何かを対価にすることで発動する術。これが魔術の定義です。その対価を自らの想いや他人の想いを対価にするものを魔法と我々は定義しています。しかし、魔法よりも魔術の方が対価を払いやすいため、魔法よりも魔術の方が簡単に強い力を使うことができます。ここで、今回の敵に対抗するために私たちが魔術を使うことが簡単なのは分かりますね?」
サラの一言に古参以外の新しい仲間たちは頷く。
「ですが、リッカさんを止めるほどの魔術の対価なんて私たちが払えるとは思えません。もちろん、命をかけるなんて事は論外です。とまぁ、こんな感じでいいですか?」
「上出来だ。俺の言いたいことも少し言ってくれたようだな」
サラが言い終わると杉並が続く。
「ここにいる者はすべて魔法使いだ。何かを犠牲にして、何かを叶えるなど邪道なのだ。何一つかけることなく、二人を助け出す。そのための参謀だ」
「つまり、お前には作戦があるのか」
巴が静かに聞くと、杉並はゆっくりと頷いた。
「いくつか突破しなければならない難問もあるがな。まずは、これを見て欲しい」
杉並はゆっくりと紙を広げていった。
杉並の手から出されたのは一通の手紙……
その内容とはダークネスからの挑戦だった……
『忌まわしき、永遠に繰り返されるあの日々を……』
その言葉に杉並は4年前に何があったのか伝える……
過去に一度だけループ世界が誕生したことを……
次回「交差する疑惑」
ダークネスも、ミスターTもどこかで見たことがある気がする。それに、あの声もどこかで聞いたことがある気がするのだ……