がんばります!
「静流!!」
「クッ!」
静流は今も尚、ルチアの攻撃を防ぎきっていた。
どのくらい時間が経っただろうか…
そんなこと静流に分かることもなかった。
「静流!頼む!これ以上、私に…友達を傷つけさないでくれ!」
ルチアは必死で静流に問いかける。
しかし、静流はルチアの気持ちに答えようとはせずに、ひたすらルチアの攻撃を受け続けた。
「ハァハァ……」
人間の肉体である静流には限界があった。
ルチアの表情にも少し疲れが感じられる。
しかし、それは疲れではなく精神的な疲労にほかならなかった。
「頼む…。静流!お前にならできるはz「出来ない!!」…静流?」
「ハァ、ハァ。ち、誓ったんだ!!」
静流はゆっくりと立ち上がり、ルチアに対しほほ笑みかける。
その瞳には曇など全然なかった。
「ルチアと出会って、人との関わりの大切さを知った……
ルチアと友になって友達の大切さを知った……
ルチアが居なくなって、私にとってのルチアの存在の大切さを知った……
私は後悔したんだ……
でも、私は知ったんだ……
守らなければならないものを……
してはいけないことを……
リッカと戦って……
清隆と戦って……
友達を傷つける怖さを知った……
愚かさを知ったんだ……
だから……
私は二度と友達を傷つけるわけにはいかないんだ!!
もう、嫌なんだ!!」
静流はゆっくりナイフを構える。
もう、福音の効果は薄れ、足元もおぼつかなかった。
しかし、それでも静流は立ち上がった。
「だ、ダメだ……!!」
ルチアの渾身の一撃が静流を襲う。
静流はそのまま十字に受け、壁に吹き飛ぶ。
「グハッ!!」
それでも、静流は立ち上がる。
「静流……お前は…何のために戦うんだ…ぁぁぁ!!!」
「ルチア!!」
ルチアが渾身のひと振りで自らのつま先と地面に刺す。
そのあまりの行動は静流は驚く。
「る、ルチア「来るな!!」ッ!?」
静流がすぐに近寄ろうとするが寸前でルチアに止められる。
「クッ!?これで、何とか…。静流!!」
ルチアは必死で静流の名前を呼ぶ。
「お前は……何のために戦っているんだ!!」
「ッ!?」
「お前は……誰を守るために!!誰を助けるために戦っているんだ!!」
「な、なぜ、そのことをルチアが…」
静流はルチアのその言葉に驚きを隠せなかった。
なぜ、ルチアがそのことを知っているのかわからなかったからだ。
「なぜ、そのことを知っている?とでも言いたい表情だな。わかるさ。お前のことなんでもな。お前は決して自分のためや他人を傷つけるために福音を利用しない。お前が福音を使うときは……誰かを守りたい時や助けたいときと決まっているからな。大方、清隆か風見鶏の仲間辺りが何者かにとらわれたかどうかしたのだろう?」
ルチアの言葉に静流は頷くしかなかった。
「もう一度聞くぞ、お前は福音を使ってまでも守りたい者はなんだ?」
「……清隆とリッカと葵だ…」
「お前はなぜ、私程度の前にひれ伏している?お前を信じて待っている仲間がいるだろう?」
「そんなことをすればルチアを「ふざけるのも大概にしろよ!」っ!?」
「お前は今を生きているんだ!今を!なのに、いつまで過去にとらわれすぎているんだ!!」
静流の言葉にルチアは叫ぶ。
「私がどうこう関係ない!私を傷つけることに何故そこまで恐る!そうだろ!カテゴリー5の魔法使い『中津静流』!!」
「それでも、私は……」
「私はお前の友ではない!!お前の親友『此花ルチア』は死んだんだ!!」
「ッ……」
「お前の前にいるのはただの幻影だ!もし、それでも、お前が私のことを親友の『此花ルチア』として見ているとするならば……」
ルチアはゆっくりと刀を構える。
「私の意識があるうちは私が此花ルチアと認めよう。なら、静流……これが此花ルチアの最後の遺言だ。本当の本当に最後の、な」
ルチアはゆっくりと息を吸い込む。
「今を強く生きろ!!過去を乗り越えてみろ!仲間を助け出せ!そのために……親友(とも)の屍を超えてみせろ!!カテゴリー5の魔法使い……いや我が最高のただ一人の親友…『中津静流』!!」
その言葉と共にルチアは駆け出す。
静流の頭の中には再びあの時と同じようにルチアの思い出が蘇る。
そう、昔の思い出が少しずつ先程の言葉に埋めつくされていく。
「今を……生きる」
静流の瞳にはルチアの動きがスローモーションに見えた。
「そうだ、私がいつまでもルチアの事を引きずっていたから…ルチアを苦しめていたのは私の弱さだ…。友として最低なのは私じゃないか…」
(私が弱いからあの時も清隆が傷ついたんだ……)
静流は自らの最後のリミッターを外す。
「もう振り返らない…絶対に、振り返るもんか…」
再び静流の髪が黒く染まる。
「守るもの…それは私が今を生きる証…。私が生きていたと記憶してくれる者達…」
「グォォォォォォォ!!」
ルチアの目が赤く染まり、先程までの理性は飛んでしまっていた。
ルチアが振り下ろす刀を静流は片方のナイフで受け止め、流す。
「すまない。そして、さよならだ……我が永遠の親友『此花ルチア』。安らかに…眠れ!」
「黒花火!!」
無数の斬撃がルチアを襲う。
その斬撃を食らったルチアはそのまま膝から崩れ落ちる。
静流はゆっくりと振り返る。
「あ、りが……とう…」
そう呟き、ルチアは笑顔のまま霧となり消えていった。
静流はゆっくりと持っていたナイフを握り締め直す。
「ルチア……ありがとう」
静流は夢幻城の方を向く。
「ダークネス、お前だけは許さない。私の大切な記憶を…大切な親友の生きた証を傷つけた罪は重いぞ…。覚悟しろよ…!!」
静流は福音の状態で駆け出した。
「とりあえず、すべての魔物を討伐できましたね」
「ですが、こちらの被害はかなりひどいです」
「だが、やけに外が静かだ」
魔物をすべて討伐し、風見鶏の生徒のほとんどは休憩をし、公式新聞部は生徒会室に集まっていた。
「うーん」
「どうしたんですか、サラ?難しそうな顔をして…」
「い、いえ。ダークネスの正体について考えていたんです。なんでこんなまどろっこしいことをするのかと…」
「確かに。風見鶏の生徒を止めることには成功しているが、方法はもっと他にあったはずだ。ここを巨大な魔法で吹き飛ばすなど」
「もー、杉並君!物騒なことを言わないでよ!!」
サラの言葉に反応した杉並の言葉にシャルルは少し起こり気味に言う。
「それに、何か引っかかるんです。あと一つ…。あと一つのピースでダークネスの正体が分かりそうなんです…」
「何、それは本当かクリサリス!」
「確証は全くありません。でs「失礼します!!メアリーホームズです!!」メ、メアリー!?」
サラの言葉を遮るようにメアリーが部屋の中に入ってきた。
「何だ、突然!」
「あんたに聞きたいことがあるのよ、杉並!」
「…何?」
そこで、メアリーは話した。
自分の見たことと杉並に貰った情報が違うことを…。
「だが、俺たちの言ったことに間違いはない」
「だから!「ちょ、ちょっと待ってください!」サラ?」
「メアリー、それは本当ですか?」
メアリーの言葉にサラが聞き直す。
「当たり前よ!こんな重要なことに嘘なんてついてられないわよ!」
メアリーの言葉にサラが考え込む。
「どうした?」
杉並も気になり、サラに問いかける。
「そんな……、でもそれなら辻褄が合う。全てがつながりました。ダークネスの正体も、これからの対策も全て…。これなら、魔物が入り込むことができないようにもできます!エリザベスさん!風見鶏の防衛システムへアクセスさせてください!!」
「え?え?どういうことかしら?」
サラの突然の言葉にエリザベスも困惑を隠せなかった。
「私の魔方陣で魔物たちの進行を防げます!」
「馬鹿なことを言うな!!」
サラの言葉に杉並がいち早く反応する。
「そうよ、サラちゃん。風見鶏の防衛システムは完璧よ?私達がするより「し、失礼します!!」どうしたの!?」
シャルルの言葉を遮るように入ってきたのはボロボロの風見鶏の本科生だった。
「風見鶏の東の入口から魔物が入ってきました。直ちに本科生で対応。しかし、敵の戦力が先程より、高いです!!」
その言葉にその場にいた皆が戦闘態勢に入る。
「とにかく、姫乃とアスナ、シノンの3人で迎撃に向かってください。エリザベスさん!お願いします、今の風見鶏の防衛システムはダークネスに筒抜けなんです!今は、一石の猶予もないんです!!お願いします!」
サラは頭を下げる。
「分かったわ。姫乃さん、アスナさん、シノンさん。あちらはお願いします。杉並君、サラさん、耕助君、四季さんは私と共にお願いします。ほかの皆さんもすぐに動けるようにしていてください!」
『はい!!』
ついに、一人の少女は真実へとたどり着く……
それはだれもが望まぬ真実……
そんな風見鶏とは裏腹に外の世界ではついにダークネスと風見鶏が対峙する……
そして、一人の少女は決意する……
世界を救うことを……
それはだれもが望まぬ世界のために……
次回「最後の希望 消えていく灯たち」
これは運命。あなたが選び、私の選んだ道。例え、彼等でもこの運命を覆すことはできない……
一つ、また一つと命の灯は消えていく……