何も取り柄のないリーマンだけど、転生者として崇められてます。   作:ディドロ

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異世界の門

佐藤 雅人は、ふと夜空を見上げた。

 

「俺は、ずっとこのままなんだろうか……」

 

現実社会に馴染めていない感覚が、彼の胸の奥でいつも渦巻いていた。職場では周囲との会話がぎこちなく、高校時代の友人とも疎遠になり、彼女もいなかった。ただ、働く毎日が続くだけ。将来への不安は消えることなく、雅人はただ淡々と日々を過ごしていた。

 

ゲームの中の逃避

 

家に帰ると、足の悪い母親がテレビの前でうとうとしているのが見えた。彼は静かに母親を布団に連れていき、自分はリビングに戻った。

 

「俺がしっかりしないと……」

 

雅人は一人、テレビの前に座り、ゲーム機の電源を入れた。彼の唯一の逃避先、それがRPGゲームだった。現実では自分が特別な存在であるとは感じられないが、ゲームの中では違った。勇者としモンスターを倒し、ダンジョンを攻略し、世界を救う。それが、彼にとっての唯一の「冒険」だった。

 

「現実なんて、くだらない……」

 

そうつぶやきながら、雅人はゲームの世界に没頭していった。現実の自分とは全く違う、力を持つ者として活躍する自分。ゲームの中でしか感じられない満足感が、彼を癒してくれる唯一の時間だった。

 

異世界への転生

 

その夜、雅人はいつものように大好きなRPGゲームをプレイしていた。何度目とも周回した裏ボスモンスターとの戦闘が激化する中、突然画面が暗転した。

 

「何だ……?」

 

一瞬、画面が真っ暗になり、次の瞬間には全く見知らぬ風景が目の前に広がっていた。草原が一面に広がり、遠くには山々が連なっている。そして、彼の目の前にはその世界には不釣り合いな黄金の扉、そして雲を貫く塔であった。

 

人手不足の村

 

レオの村は、数年前に襲った流行病によって大きな打撃を受けていた。特に農作業に従事していた多くの村民が命を落とし、その結果、村全体の労働力が激減していた。レオの家もまた、かつては農作物を豊かに育て、村民たちと共に繁栄していたが、流行病の影響で家族や村民たちの多くが倒れ、作業が追いつかなくなっていた。

 

「親父を失ってから、村もどんどん悪くなっている……」

 

レオは村の田畑を見渡し、減少した作物と少ない人手にため息をついた。元々は複数人雇えるほど農民にしては多くの田畑を持ち、村で唯一馬と馬車を持つ家庭だったが、今では両親を失い農民を雇い止め田畑は荒れ、村全体も危機に瀕していた。冬が近づいてくる中、収穫量が足りず、このままでは飢えに苦しむことになるのは明白だった。

 

商人との取引

 

その日、レオは商人と共に隣村へ交易に向かっていた。両親が生前に信頼していた商人との取引は、村の食料を少しでも補うための重要な機会だった。馬車に揺られながら、レオは冬に備えるための物資を確保しようと、必死に計画を練っていた。

 

「村のみんなが協力してくれているけど、このままじゃ冬を乗り切るのは厳しいかもしれない……」

レオの言葉に、商人は静かに頷いた。彼もまた、村の状況を深刻に捉えていた。人手不足が続く中、収穫量が減り、村民たちは不安を募らせていた。

 

「今は取引を続けるしかないが、何か大きな変化がなければ厳しいだろうな……」

 

商人の言葉は現実的だったが、レオは諦めるわけにはいかなかった。彼は村を救うために何か大きな力が必要だと感じていた。

 

ダンジョンの発現と雅人との出会い

 

取引を終えて村へ帰る途中、突然大地が揺れ始めた。地面が激しく震動し、馬車が大きく揺れる。レオは驚いて辺りを見回すが、どこか不気味な静けさが周囲に広がっていた。次の瞬間、動物たちが森の中へと一斉に逃げ込み、鳥たちが空高く飛び去っていく。

 

「なんだ……これは……?」

 

レオの前方、大地がひび割れ、地面が押し上げられるように隆起した。その裂け目から、異次元のような光景がゆっくりと浮かび上がってくる。周囲の空気が急に冷たくなり、重苦しい圧力がレオの体を包んだ。目の前に広がるのは、まるで世界そのものがねじ曲がったかのような奇妙な空間。

裂け目の奥に、金色に輝く巨大な扉がゆっくりと姿を現し、空へとそびえる雲を貫く塔が不気味にそそり立っていた。光が漏れるその扉は、不吉でありながらも、強烈に何かを引き寄せるような魅力を放っている。塔の先は視界から消え、まるでその存在が異次元に消え去るかのように見えた。

 

「これは……」

 

レオは目を見張った。伝説でしか聞いたことのないダンジョンだった。目の前に現れたその構造物は、彼にとって希望の象徴でもあり、同時に大きな試練を予感させるものでもあった。

 

「これは……ダンジョンか……?」

 

レオの体は自然と震えていたが、それは恐怖だけではなかった。目の前にあるこの異常な光景は、かつて聞いた伝説そのものであり、同時に村を救うための希望でもあった。空間を支配する異質な感覚が、彼にとって何か大きな転機が訪れたことを告げていた。

 

「ここで何かが……変わる……」

 

そして、さらに驚くことが起こった。異空間から一人の男が突然現れ、地面に倒れ込んだ。それが雅人だった。

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