見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第101話】全知のモノクル その2

 

 

 

 シルバーは『全知のモノクル』を利用した死の海の攻略法について説明しはじめた。

 

「さっきも言った通り『全知のモノクル』は3000メード先まで検知の光を伸ばすことが出来る。逆に言えば視界の悪い死の海でも前方に何があるのか分かる訳だ。これを利用して、船のマストから光を飛ばし、前方の岩礁や岩場を事前に見つけ出すわけだ」

 

「なるほど、そうすることで衝突の危険を避けられる訳だな。あとは方角が分からない点と魔獣が危険な点をどうするかだな」

 

「方角に関してはある程度どうにかなる。内海の死の海は危険度こそ高いが距離自体はそこまで長くない。だから極端に方向がずれることはないだろう。とはいえ流石に船で進んでいれば段々と方角が分からなくなってしまうが、ここでも『全知のモノクル』が役に立つんだ。その鍵は岩場にある」

 

「岩場? 危険なだけの岩場にどんな意味があるんだ? もったいぶらずに教えてくれよ」

 

「もったいぶるからこそ、冒険を語るのが面白いんじゃないか。まぁソワソワしているガラルドの為に簡潔に教えてやろう。ようは全知のモノクルから出た光で岩場を見つけたら見つける度に灯台を建てればいいんだ」

 

「灯台? いくらなんでも大工事すぎないか?」

 

「灯台と言っても大きさは普通の灯台の1、2割程度のサイズでいい。あくまで岩場から次の岩場までの目印にさえなればいいからな。大事なのは視界が悪い死の海でも肉眼で確認できるぐらい強い光を放つ光属性の魔石を灯台に設置することだ。これはシンバードみたいな大きい国に援助頼みたいところだな」

 

 シルバーは本当に凄い奴だ。自分でアーティファクトを見つけ出したこともそうだが死の海の至る所に岩場があるという障害要素を逆に利用している。

 

 灯台を建てたり光の魔石を大量に用意するという点は人任せではあるものの本当に頭の切れる人間は指示を出してこそ活きるものだろう。俺には到底辿り着けなさそうな次元だ。

 

 そして、俺は最後の課題『魔獣』についての対策を尋ねた。

 

「それじゃあ最後の課題だ。強くて数も多い死の海の海棲魔獣はどう対処するつもりなんだ?」

 

「まぁそこは気合いだな。複数の船と多くの人間で固まって進めば、フォローし合えるんじゃないかな、多分」

 

 まさかの適当過ぎる回答だ。俺は心の中でシルバーを褒めてしまったことを後悔した。とはいえシルバーの言う事も一理ある。手強い敵と開けた場所で戦うなら数と包囲で抵抗するのは常套手段だ。

 

 これで一応大まかな攻略法は分かった、あとはシンバード領に戻って皆の協力を得つつ強い船を作るだけだ。その為にもまずは目下の八十魔日(はちじゅうまじつ)を乗り越える必要がある。俺は早速準備を始める為に号令をかけた。

 

「それじゃあ死の海攻略に関しての話し合いは一旦終了だ、シンバードに帰らなきゃ綿密な計画を立てられないからな。とりあえず今日からは八十魔日(はちじゅうまじつ)の準備に取り掛かろう。とは言っても魔獣の大群が別の町に行く可能性もあるけどな。まず、町長に町の防衛について聞きたいんだが――――」

 

「ちょっと待ってくれガラルド、もう1つ全知のモノクルの能力を説明しておきたい」

 

 そう言うとシルバーは突然、全知のモノクルの光を俺の体へ発射した。その瞬間レンズに新たな文字列が浮かび上がる。それを見たシルバーは頷きながら呟く。

 

「ふむふむ、なるほど先天スキルは『回転砂』で魔量と魔力は多いものの、魔術はあまり得意ではなく、適合属性は火属性か。この辺りは俺でも読める古代文字だな」

 

「いきなりなんだよシルバー。まさか全知のモノクルはスキル鑑定も出来るっていうのか?」

 

「ああ、そのまさかだよ。それに分かるのはスキルだけじゃなくて体力や魔量がどのくらいあるとか体重とか色々分かるぞ。ガラルドは身長があるうえに筋肉質でガタイもいいからやっぱり重たいな」

 

「シルバーだって似たような体格だろ、っていうかそんな事も分かるのか。それじゃあ次はリリスに向かって光を飛ばしてみてくれよ」

 

「ば、馬鹿言わないでください! 乙女の体重なんてトップシークレットなんですから!」

 

 声を荒げたリリスは俺の肩に向かって金袋を投げつけた。当たり前だが硬貨が入っていて硬いから結構痛い……冗談を言った俺の自業自得なのだが。

 

 リリスは金袋を投げてすっきりしたのか、話を全知のモノクルに戻す。

 

「ガラルドさん、シルバーさん、全知のモノクルのスキル鑑定は正直かなり有用ではありませんか? 町でスキル鑑定をするなら神官を何人も集めて1日がかりでやることもざらにあります。これさえあれば表示された古代文字を読むだけなので1分で1人鑑定することだってできますよ」

 

 確かにリリスの言う通りにすれば毎日スキル鑑定の為に拘束され続ける神官をフリーにすることができる。そうすれば、そのぶん他の労働力に割けることは明確だ。

 

 リリスも世の為・人の為になることを考えているんだなと感心していると、リリスは女神とは思えないようなニタニタとした邪悪な笑みを浮かべながら呟く。

 

「グヘヘ、全知のモノクルを利用してスキル鑑定ビジネスをやれば、たちまち大儲けですよ。私の未完成なスキル鑑定ではどうしても商売性に欠けていましたからね。これで美味しい物が食べ放題ですよ、グヘヘヘヘ」

 

「おい、リリス、気持ち悪い笑いを止めろ。全知のモノクルはあくまで発見者であるシルバーの物だ。俺達が全知のモノクルを手に入れるにはシルバーを説得するか対価を払わなきゃいけないぞ。それと、仮にシルバーがタダで全知のモノクルをくれたとしても俺は公益性を鑑みてシンバードみたいな大きな街に献上するぞ。それが1番役に立ててもらえるからな」

 

「ガラルドさんは真面目過ぎますよぉ~、もっと欲望にまみれて生きましょうよ」

 

 世直しの為に旅をしている女神が何を言っているんだ、と注意してやろうと思ったが俺達のやり取りを見ていたシルバーが腹を抱えて笑い始めた。

 

「フッハッハ、お前ら面白過ぎだろ。俺は2人の考え方どっちも好きだぜ。どっちにしても必要な時は貸してやるから気楽に言いな」

 

 シルバーは楽しそうに笑っている、何だかんだリリスの事もそれなり気に入ってくれているようでよかった。サーシャの事も実際に会ったら気に入ってくれるといいのだが。

 

 そして俺達は話し合いを終え、各々八十魔日(はちじゅうまじつ)と死の海の渡航準備に取り掛かることにした。

 

 ボビ達技術者は造船場所の選定や造船計画、造船素材の調達に励んでいる。そして俺、リリス、ハンターの面々はエナジーストーンの戦闘員達と共に防衛準備や修行に明け暮れていた。

 

 エナジーストーン内には城がないから、当然王や貴族と言った身分もなく、兵士という役職自体も厳密には存在しない。だが有志で町を守っている戦闘員達は本当に強く、1人1人がスターランク30前後のハンターに匹敵する程の力量を持っていた。

 

 能力が活性化する土地柄も影響しているのかもしれないが平均戦力で言えばシンバードや帝国をも超えているだろう。もっとも人口はジークフリートよりも少し多い程度だが。

 

 エナジーストーンでの修行の日々は本当に楽しかった。鬼教官のストレングがいないというのもあるかもしれないが、戦闘員から学んだ槍術は棍術にも応用する事ができて技術が上がっていくのを感じられたし、激しく回転砂や魔術を使って魔量が枯渇してもマナストーン・コアの恩恵で数倍の早さで回復するからそのぶん成長も早かった。

 

 欲を言えばシルバーと模擬試合の1つでもしてみたかったが彼は戦闘員と技術組の間を忙しく行ったり来たりしていたせいであまり接触することがなかった。

 

 そんな忙しい日々はあっという間に過ぎていき、気がつけば八十魔日(はちじゅうまじつ)の刻がやってきた。

 

 

 

 

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