見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第112話】見たかった景色

 

 

 

「ウィッチズガーデンにはパープルズの4人に行ってもらうのはどうかな?」

 

 なんとサーシャはかつて自分に辛い思いをさせてきた4人に大事な仕事を任せようと提案してきた。確かにあの四人なら俺の言った条件を満たしているし、僧院を経由しての依頼になるから依頼料も安く済ませる事が出来るだろう。

 

 しかし、フレイム、ブレイズはジークフリート奪還作戦に命懸けで参加してくれたものの、アクアとレインは信用できるのだろうか。その点を問いかけようとしたけれど、それよりも先にサーシャが彼らの信頼性について話し始める。

 

「フレイムさんとブレイズさんはガラルド君も知っての通り、危険を顧みずにジークフリートに来てくれたから信用できるし、アクアさんとレインさんもドライアド復興組に合流した時にわざわざ個人的にサーシャの所を訪れて、泣きながら謝ってくれたの。だから1度は悪に手を染めた4人だけどサーシャは信じてみようと思う、どうかな?」

 

 どうやらサーシャの優しさは海よりも深いようだ。俺だったら自分を虐めてきた相手に大仕事を任せる事なんか出来ないかもしれない。そんな優しいサーシャの言葉だからこそ俺も信じてみようと思う。

 

 パープルズとほとんど接したことがないアイアンとシルバーも会話を聞きたいらしく2人を加えた俺達は早速パープルズに会いに行く事にした。

 

 他のハンター仲間に聞いた感じだと、どうやらパープルズの4人はギルド『ストレング』にいるようだ。罪を償う為の慈善活動をしつつ、時々ストレングに稽古をつけてもらっているらしい。

 

 ギルドの扉を開くと真正面にパープルズの4人が立っていた。軽く挨拶を交わした俺達は早速パープルズに話しかける。

 

「あのね、パープルズの4人にお願いがあるんだけど実は――――」

 

 サーシャは4人にしか出来ないという点を強調しながら旅の詳細を伝えた。サーシャが一通り伝え終わって「どうかな?」と尋ねると、即座にアクアとレインが口を揃えて答える。

 

「「是非やらせて!」」

 

 旅の大変さはしっかりと伝えたが、それでも2人は迷いなく言い切った。横にいたフレイムとブレイズも頷いて同意している。サーシャの言う通り本当にアクアとレインも反省しているように見える。

 

 もしかしたら恐怖でジークフリート奪還作戦に参加できなかったことを強く後悔していたのかもしれない。逆に言えば強く後悔している今の彼女達ならきっとやり遂げられるだろう。パープルズを代表してフレイムが俺達へ思いを伝える。

 

「僕達はこの依頼を必ず達成してみせるよ。被害者なのに減刑を訴えてくれたガラルド君、本気で僕達を怒鳴りつけてくれたリリス君、そして罪人になっても僕達を信じてくれたサーシャ。君達の依頼は何が何でも達成してみせる」

 

 フレイムは俺の手を握り、ブレイズはサーシャの手を握って決意表明をしてくれた。するとブレイズとサーシャの手の上に横から出てきたごつごつした別の手が重なった。誰の手だ? と視線を上にあげるとその手の正体はシルバーだった。

 

 シルバーはパープルズを一睨みした後、ドスの効いた声で呟く。

 

「また俺の可愛い妹を泣かせたら承知しねぇからな? 絶対失敗しねぇで無事に帰って来いよ」

 

「わ、分かりましたシルバーさん……」

 

 フレイムは震え声で了解の言葉を返す。こころなしか少し離れた位置にいるアイアンの目も威圧感を纏っているように見える。大事な家族を過去に傷つけていた存在なのだから当然かもしれないが。

 

 そんな雰囲気を感じ取ったサーシャはすぐに「みんな仲良くしなさーい!」と再びアイアンとシルバーに軽く説教すると2人はタジタジになり、ギルドは笑いに包まれた。

 

 

 

 

 これからの事を一通り相談し合えた俺達は各々の活動の場へ戻っていった。俺は休憩がてらシンバードの中心にある時計塔の最上部で街の様子をぼんやりと眺め、1人で昼のお弁当を食べていると真下から階段を小走りで駆け上がる音が聞こえてきた。

 

 その音はサーシャの足音だった。サーシャは俺の横に座ると同じように弁当を広げて食べ始めた。俺はサーシャが時計塔の最上部まで来た理由を尋ねる。

 

「サーシャもここから見える景色が好きなのか?」

 

「うん、街を360度見渡す事ができるし、街の人達の楽しそうな様子を眺められるから好きなの。ガラルド君もここが好きなんだね」

 

「ああ、俺も似たような理由だ。特に最近はイグノーラへ行くという共通目標があるから一層街が纏まっている気がしてな。活気あふれる街の人の笑顔に元気を貰ってるよ」

 

「そうだよね、サーシャはシンバードに来たばかりの頃は辛い事が多くて、癒されたいって理由でここに来ていたけど今は違う。ほら、あっちを見て、サーシャがずっとずっと見たかった景色があるよ」

 

 俺はサーシャが指差す先を見つめてみた。そこには軽口を叩き合いながら笑うアイアン・シルバー親子の姿と、活き活きとした顔でボビと話し合うパープルズの姿があった。

 

「サーシャね、ずっと人並みの幸せを求めていたんだと思う。親子が当たり前のように談笑したり、憎しみや罪悪感にとらわれない人間関係を構築したり……今、サーシャ達が見ている景色がきっとそうなんだね」

 

 サーシャは晴れやかな表情で感嘆の吐息を漏らしながら呟いた。薄っすら涙目になっているようにも見える。きっと辛かったことと嬉しかったことをいっぺんに思い出しているのだろう。その後も俺はずっとサーシャの話を黙って聞き続けた。

 

 そして、お互いに弁当を食べ終わったあと、サーシャがこれからの俺の予定について尋ねてきた。

 

「ガラルド君はこれからどうするの? 船の完成までシンバードとドライアドを往復する感じ?」

 

「いや、船作りも復興作業も良い意味で俺が手助け出来る事はあまりないと思う。だから俺は船が完成するまでリリスと一緒に他の兵士・ハンター達を鍛え上げる事にするよ。ちょうどエナジーストーンっていう素晴らしい修練場があるからな」

 

「死の海は3隻の船で総勢50人の旅路になるし、上陸してからもどんな危険があるかは分からないもんね。どれだけ鍛えて準備しても足りないぐらいだと思うから、ガラルド君の案には賛成だよ。あ~、サーシャもエナジーストーンに行ってみたいなぁ~」

 

「どっちみち死の海渡航前に1度全員で寄るつもりだからその時に観光すればいいさ。それまでは申し訳ないけどドライアドとシンバードでお仕事頑張ってくれよ、代表さま」

 

「きっと船の完成には100日以上かかるから旅行はそれまでお預けかぁ~。でもみんなも頑張ってるんだし、サーシャも代表の仕事を頑張るよ! ガラルド君も頑張ってきてね」

 

「ああ、次はエナジーストーンで会おう!」

 

 そして、俺は次の日にサーシャ達と別れ、リリスと共にエナジーストーンへ向かった。

 

 

 

 

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