見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第115話】死の海 その1

 

 

 

 モンストル号がセイレーンを出発して約4時間が経った頃、前方が突然薄暗くなり強風が吹き始めた、いよいよ死の海の入口に到着したようだ。まるで境界線でもあるかのような豹変っぷりに驚いていると、操舵室にいたシルバーが甲板に飛び出し、後ろを振り返る。

 

「どうやら完全にエンドを撒けたようだな。あいつらシンバード付近でも運河でも、ずっとしつこく追いかけてきていたからな。せいせいするぜ。サーシャもそう思うだろ?」

 

「確かに執念深かったね。でも本当に逃げ切れたのかな? エンドが死の海の中にまで追いかけてくる事はないの?」

 

「あいつらの船はそれなりの速度は出るものの所詮は軽い小型船だからな。絶対に死の海には入ってこられねぇよ。そもそもエンドと繋がっている可能性があるモードレッド自身が死の海を越えられないと嘆いていたくらいだしな」

 

 エンドが完全に帝国側の組織だという確証は持てないがシルバーの言う事は一理ある。一旦エンドの追跡に関しては忘れてもよさそうだ。俺は全員に再度気合を入れる。

 

「よし、それじゃあいよいよ死の海とのご対面だ。事前の打ち合わせ通りに3隻の船を直列にして進行していく。ここからは何日間も気の抜けない海域が続いていく、覚悟を決めろよ」

 

 そして、俺達は事前に決めていた通り3隻の船をそれぞれ先頭から順に『先導&戦闘船』『物資運搬船』『技術者搭乗船』に分けて進んでいった。

 

 『先導&戦闘船』には俺、シルバー、リリス、サーシャを含めたハンター達が乗っていて、シルバーが全知のモノクルによる『岩礁・小島の確認』と『船の進路を決める役割』を担当している。

 

 それ以外のメンバーは操舵に加わりつつ、周囲の確認と海棲魔獣の撃退が仕事だ。とにかく俺達は全力で物資と技術者を守らなければならない。

 

 物資と技術者のどちらが欠けてしまっても小島に簡易灯台を建設する事が不可能となり、方角と経路の確認が出来なくなって船の修繕もままならないからだ。

 

 船が進むにつれて風が強くなり、叩きつけるような雨も降り始めた。事前に聞いていた通り本当に視界が悪く、風力の乱高下も激しくて、小柄で体の軽いサーシャは何度か転がりそうになっていた。

 

 俺達は互いに体を支え合い、手分けして全方位を警戒する。その間にシルバーはマストへ上がり、全知のモノクルで片っ端から海に光を飛ばして岩礁と小島を探し当てた。

 

「モノクルに反応有り! 土や木の反応があるから恐らく3時の方向に小島があるぞ! まずはあそこに簡易灯台を建てる、全船いそげ!」

 

 なんと俺達は渡航が始まって早々に小島を見つける事ができた。肉眼では薄暗い海と豪雨しか確認できないが全知のモノクルで検知したのなら間違いないだろう。俺達はシルバーの指示通りに進んでいると、突然リリスが大声をあげる。

 

「右舷側と左舷側に大量のウォーター・リーパーが現れました!」

 

 もう少しで小島に辿り着けるというところで厄介な魔獣が現れやがった……。俺の位置からはまだ敵の姿は見辛いが、確かウォーター・リーパーはカエルの様な体と魚の様なヒレと尾を持つ白色の魔獣だったはずだ。

 

 肉食で人に噛みついてくるうえに動きが速く、それだけでも充分厄介だが1番恐ろしいのは奴らが発する『甲高い鳴き声』だ。キーキーと耳に刺さる鳴き声が人間の耳に刺さると、たちまち平衡感覚が正常に働かなくなり気絶する事があるそうだ。

 

 その特性を踏まえると船に乗り込まれる前にとにかく甲板から魔術や弓をガンガン撃ち込んで、叫ばれる前に倒し切る事が重要になる。

 

「全員、放てぇぇっ!」

 

 俺の掛け声と共に全員がウォーター・リーパーの群れに遠距離攻撃を放つ。50匹以上いたウォーター・リーパーが次々と倒れていき、あっという間に半数近くを撃破することに成功した。

 

 俺は同行してくれたハンターや兵士達の強さに驚いていた。エナジーストーンでの修練効果が予想以上に大きかったからだ。

 

 モンストル号に乗った戦士たちは出自も様々だ。ドライアドを含むシンバードの属国や周辺国の戦士達、遠方のヘカトンケイルなどから来てくれたギルドの有志たち、そして門番兄弟をはじめとしたエナジーストーンの戦士達など種族や価値観もバラバラだ。

 

 そんな彼らが一丸となって特訓し、絆を深め、今は大陸最難関の海で逞しく戦い抜いている。ディアトイル生まれの嫌われ者だった俺が今は一団の長として素晴らしい光景を目にする事ができている。こんなに嬉しい事はあるだろうか。

 

 その後も俺達は少しずつ確実にウォーター・リーパーを撃破していった。このまま順調に全滅させられるかと思い始めた直後、一部のウォーター・リーパーが船から離れていき、自身の体を大きく膨らませる。

 

「キィィィィッッーーーー!」

 

 耳が破裂しそうなぐらい甲高い鳴き声が周囲に響き渡った。俺も周りの仲間達も平衡感覚が薄れていき、足元がふらつき始める。

 

 だが、不幸中の幸いか気絶している者はいなかった。どうやら弓と魔術を警戒してウォーター・リーパーが距離を取ったことに加え、強風と豪雨が鋭い鳴き声を少しだけ軽減してくれたようだ。

 

 とはいえ2度、3度叫ばれては俺達の体が持ちそうにない。どうにかしなければいけないが手で耳を塞ぐ以外の対策が思い浮かばない。だが、手を耳に当てていては攻撃が出来ない。どうすればいいかと頭を捻っていると、サーシャが大声で叫ぶ。

 

「みんな聞いて! 服でも何でもいいから、今すぐ布を細かく千切って、雨で濡らしてから耳の穴に突っ込んで! そうすれば手で塞がなくても超音波を軽減できるから!」

 

 俺達は各自急いで布を用意して耳の穴に突っ込んだ。するとサーシャの言う通り、全ての音が聞こえづらくなった。まるで水中にいるような感覚だ。

 

 言われて気が付いたが確かに水は減音度合いが強い。水を耳の穴に固定する為に千切った布を利用するのは非常に理にかなっている。

 

 サーシャの機転によりお手軽に強い耳栓を手に入れた俺達はトドメの反撃に移る。

 

「これでもう超音波でふらつく事はない。勝負を決めるぞ、お前ら!」

 

――――オオオォォォォ!――――

 

 皆が雄叫びをあげてからは一方的な戦いとなった。ウォーター・リーパーの鳴き声を何度か喰らう事にはなったものの、俺達の攻撃を止められる程の妨害にはならなかった。

 

 遠距離攻撃を途切れさせることなく放ち続け、無事全てのウォーター・リーパーを倒すことに成功する。

 

 激しい戦いの末にようやくシルバーが示めした小島に辿り着いた俺達は急いで簡易的な作業場を立てた。とは言っても俺を含むハンター達は資材を運んでいるだけで、組み立ては全てシルバー達技術者がやってくれたわけだが。

 

 彼らは豪雨にさらされているにも関わらず15分ほどで縦横10メード高さ2・5メード程度の簡易作業小屋、そして船を固定する船着き場を組み立てた。地属性魔術師が少し補助に入ったとはいえ恐ろしい建築スピードだ。

 

 安堵のため息をついたシルバーがこれからの行動について説明を始める。

 

「よ~し、ここまでは比較的順調だ。あとは作業場で簡易灯台を作り出して、地面にがっちりと固定するぞ。質の良い高級な光属性の魔石を加工し、光を一束に集中させて灯台から死の海の入口に向けて真っすぐ放てば小島から死の海の入口までの道筋を作る事ができる。それが終わるまで技術者以外の人間は船の中でゆっくりしといてくれ。もちろん魔獣の警戒も忘れずにな」

 

 個人的には初動から大混乱だと思ったのだが、シルバーから見れば順調だったようだ。彼がこれまでどれ程厳しい冒険をしてきたかが伺える。

 

 まだ航海を始めて半日も経っていないのにどっと疲れた。こんな危険な航海がまだ何十日も続く事を考えると眩暈がしてきそうだ。とりあえず俺達はシルバーの言葉に甘え、交代で見張りをしながら船で休むことにした。

 

 

 

 

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