見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第125話】グラッジの立場

 

 

 

「そんな……こんなのってないよ!」

 

 サーシャは声を震わせながら怒っている。ガーランド団の中で1番グラッジと仲良くなっていたから特に辛いのだろう。

 

 そんなサーシャを尻目にイグノーラ王はグラッジの抹殺を宣言した後、今後の防衛・討伐計画を話しつつ民衆を労う演説を続けていた。

 

 歓声をあげる民衆の様子を見る限り国全体からすれば慕われている良い王様なのだろう。俺達からすればグラッジを殺そうとする厄介な敵なのだが。

 

 王が政治的な話を続けている間、俺は隣にいるハンターらしき男へグラッジについて尋ねた。

 

「そこの君、すまないが他国から来た俺達にグラッジという少年がイグノーラにどれ程の被害をもたらしたか教えてくれないか?」

 

「ん? あんた達他所から来たのか珍しいな。いいぜ、グラッジがどれだけ厄介な奴かを教えてやるよ。王が言っていた通りグラッジの『魔獣寄せ』は範囲がとてつもなく広い。故にイグノーラだけでも毎日800匹以上の小型魔獣と30匹以上の中型魔獣に襲われているんだ」

 

 男が発した数字は想像を遥かに超えたものだった。いくらイグノーラが防備の整った町とは言え、これだけの数に襲われていたら10日に1回のペースで魔日(まじつ)が来ているようなものだ。

 

 男はイグノーラ全体を取り囲む城壁を指差すと続けてイグノーラの防衛力について語ってくれた。

 

「他所から来たアンタ達はイグノーラの巨大な城壁と迷路のような街に驚いただろう? あの城壁は厳しい襲撃を分厚い壁と高所からの砲撃で防ぐために設置されているんだ。そして城壁内部と街に広がる迷路のような道は、万が一魔獣に侵入されても迷わせて足止めさせる為にあるんだ。」

 

「人と魔獣の知能差を利用したわけか」

 

「そういうことさ。人間なら街の地理を頭に叩き込めばいいし最悪地図を見れば移動出来るが魔獣にそんな知能は無いからな。かつて城下町内部に侵入を許してしまった時も、あの迷路がかなり役に立ったのさ」

 

 この発想には正直かなり驚かされた。俺なら魔獣の足を止めるとなると、どうしても柵や罠での足止めしか思い浮かばないだろう。

 

 おまけに街の迷路は壁自体はそれほど高くないから城壁や高所に兵を配置すれば上から俯瞰で迷路を見つめて魔獣を発見し、遠距離攻撃を仕掛ける事も可能だろう。

 

 この迷路を考案した人は魔獣の知能に着目したということだ。この柔軟な視点は今後も何か参考にできるかもしれない。

 

 そして一通り説明してくれたハンターの男は最後に俺達へ仕事を勧めてきた。

 

「あんた達も腕に覚えがあって超高額の討伐報酬が欲しいなら自分達のセールスポイントを王に直接売り込むといいぞ。イグノーラの王は身分を問わず誰にでも会って話を聞いてくれるし力のある者を求めているからな。特に他国から来た人間なんて重宝がられるだろうよ」

 

「……そうか、考えておくよ」

 

 グラッジ討伐に手を貸す気なんてさらさらないが王に近づいて話を聞くのは良い手かもしれない。俺はとりあえず話を合わしておいた。

 

 ひとまず王の演説が終わるのを待っているとリリスが目を点にして王を見つめていた。何か意外なものでも見つけたのだろうかと横顔を眺めているとリリスは俺にだけ聞こえるように呟く。

 

「私の思い違いなら申し訳ないんですけど……あの王様、少しだけグラッジさんに似ていませんか?」

 

「へっ?」

 

 リリスの突然の問いかけに俺は間抜けな返事を返す。改めてイグノーラ王の顔を見てみると髭の有り無しの違いはあるものの、ぱっちりとした目元や中性的な顔立ちはグラッジと通じるものがある。

 

 俺はすぐさま横にいるハンターの男に尋ねる。

 

「もう1つ質問させてくれ。もしかして、イグノーラ王はグラッジと血縁関係があるのか?」

 

「おお、よく気が付いたなアンタ。まぁ勘の良い奴なら手配書の人相書きで気付くかもな。そう、あんたの言う通り、グラッジはイグノーラ王の実の息子だ。グラッジも『魔獣寄せ』って呪いさえなければ普通にローラン王家の人間として暮らせていただろうな」

 

「そうだったのか、色々教えてくれてありがとう」

 

 俺はハンターの男にお礼を言って会話を終了させたあと、リリス、サーシャ、シルバーの主要メンバーにこれから取るべき行動を提案する。

 

「あのハンターがオススメしてくれた通り、ひとまず王に接見しようと思う。だが、大所帯で会いに行くのもよくない。とりあえずガーランド団代表の俺とドライアド代表のサーシャだけで話してくる。その間にリリスは他の仲間を連れて街の現状や歴史について詳しく調べてきてくれ」

 

「それがよさそうですね。グラッジさんの件で忘れそうになっていましたが私達は『魔獣の大群に対抗する術』そして『五英雄』について調べる為に死の海を越えてきたんですものね。ちょうど城やギルドから近い位置に図書館がありますし、そこで他の人達と一緒に調べてきますね。シルバーさんも一緒に行きますか?」

 

「いや、俺はギルドで金になりそうな依頼を探しつつ、イグノーラのハンター達の動向を探ってくることにするぜ。もしかしたらグラッジについての情報を得られるかもしれないからな」

 

 これで全員が次に取るべき行動が決まった。王の演説が終わるのを見計らって俺とサーシャは駆け足で王に近づくことにした。演説の終了と同時に広場の民衆が散らばった事もあり、大勢の人間が逆流する形となったから進むのも一苦労だ。

 

 もみくちゃにされながらようやく城門前に辿り着くと今まさに城へ入ろうとする王の姿があった。俺は慌てて、王に声を掛ける。

 

「お待ちくださいイグノーラ王! 聞いていただきたいお話があります!」

 

「ん? 君は見ない顔だが、旅人か何かか?」

 

「我々はモンストル大陸の中北部に位置するシンバード領から死の海を越えてやってきたガーランド団といいます。俺はその中で代表をしているガラルドと言います」

 

「ほほう、ということは相当な猛者であることは間違いなさそうだな」

 

 王は近くの兵士に対応させることもなく直に返事をしてくれた。他の国だと王に近づこうものなら側近の兵士が近づくなと言わんばかりに槍を向けてきたりするものだが、そんな様子もない。

 

 シン程ではないが、それなりに民に近い王様の様に思える。このまま色々と話が出来るかと思えたが王は懐中時計を眺めると申し訳なさそうに言葉を返す。

 

「すまないが普段なら旅人の話にもじっくりと耳を傾けるのだが、ここ最近は目が回るほど忙しくてね。ガラルド殿の話を聞く時間はなさそうだ、失礼するよ」

 

 そう言って王は背中を向けた。まずい、このままではグラッジの情報を聞き出せないばかりか、グラッジ討伐すら止められそうにない。どうすればいいかと頭を捻った俺は咄嗟に王の関心を引けるワードを発していた。

 

「俺達はグラッジに関する情報を持っています!」

 

「……何だと?」

 

 王は再びこちらへ向き直って俺の目を見つめた、どうにか引き留めには成功したようだ。あとは上手く会話してグラッジを守る方向に舵を切らねば。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

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