見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

136 / 458
【第136話】魔獣寄せの分析

 

 

 

「僕の楽しかった思い出話はここまでにして、そろそろ1年前の話をしなきゃいけないですね」

 

 グラッジが遠い目をしながら呟いた。

 

 グラドがローラン家からグラッジを連れだし、旅をしながら育てていたのが確かグラッジが7歳から14歳までの間だ。つまり現在15歳のグラッジには1人で暮らしていた1年間が存在することになり、1年前に祖父と別れたということになる。

 

 グラッジは大陸地図を指差しながら1年前の事を教えてくれた。

 

「ずっと2人で旅をしてきた僕達は日を追うごとに違和感を覚えました。それは魔獣の襲撃が強く、多くなっている点です。2人の魔獣寄せが強くなっている可能性も考えられますが、それにしても魔獣を呼び過ぎていると思ったお爺ちゃんはイグノーラの少し北にある魔獣の巣窟『死の山』に単身で異変調査へ向かったんです」

 

 この事実に俺は血の気が引いた。死の山は死の海よりもずっと危険だと言われている場所だ。今まで死の山に入って帰ってきた者は1人も確認されていない事実からもグラドが生きている可能性は限りなく0に近いだろう。

 

 それはグラッジも分かっているようで淀んだ表情で話を続ける。

 

「死の山は死の海よりずっと危険な場所です……だから、恐らくお爺ちゃんはもう生きていないと思います。当時の僕も死の山の危険性は分かっていましたから。だから全力で止めたんですけど翌朝お爺ちゃんは僕が寝ている間に手紙だけを残して去ってしまったんです」

 

「なるほどな、ん? ちょっと待ってくれ、いくつか気になることがある」

 

 俺はグラッジの話に感じた違和感を言葉にする。

 

「もし本当にグラドが亡くなったのならスキル『魔獣寄せ』を持つ人間が1人になる。つまりイグノーラが襲われる頻度は下がるはずじゃないか? イグノーラの王グラハムは年々魔獣の襲撃がきつくなっていると言っていたぞ?」

 

「言われてみれば確かに……。僕が7歳の頃に魔獣寄せスキルを発現したタイミングで魔獣に襲われる頻度が上がったと当時のお爺ちゃんは言っていました。魔獣寄せの強さが単純な足し算的なものなのかどうかは断言出来ませんが、もしかしてお爺ちゃんは生きているのでしょうか?」

 

「とにかく魔獣寄せの細かい仕組みが分からないと判断できないところだな。ただ、さっきとは逆のことを言ってしまうがグラドが生きているなら1度グラッジところへ異変調査の報告をしに帰ってきそうな気もするがな」

 

 この時、俺は余計な事を言ってしまったと後悔した。生きている可能性の話だけで留めて置けばグラッジも希望を持てるだろうに、もう1つの可能性にも言及してしまった。

 

 配慮に欠けた言葉を言ってしまい、すぐに「デリカシーの無い事を言ってしまった、すまない」と謝ったがグラッジは首を横に振って否定してくれた。

 

「いえいえ、真剣に考えてくれているからこそ出た言葉だって分かっていますから。どうか気にしないでください。それにお爺ちゃんが亡くなっている可能性が高いと思える要素が他にもあるので」

 

「他にも?」

 

「はい、僕は死の山に向かったお爺ちゃんが心配になり、死の山の入口でお爺ちゃんが帰ってくるのを待っていたんです。だけど、たった1つの入口をお爺ちゃんが通る事はありませんでした。せめてお爺ちゃんの亡骸だけでも持って帰って墓に埋めてあげたいと思いましたが僕の力では死の山には入れません。これ程自分の力不足を呪ったことはありませんでした……」

 

 14、15の子供が背負うにはあまりにも重い過去に胸が苦しくなる。グラドが生きているにせよ亡くなっているにせよ真実を知らなければグラッジは前に進めないのだろう。何とかしてやりたいところだ。

 

 しかし、どうすればいいのか全く手が思いつかずに悩んでいると俺の横で話を聞いていたシルバーが全知のモノクルを取り出して提案する。

 

「グラドの事はどう調べればいいか分からねぇが、とりあえず全知のモノクルでグラッジを調べてみることにしねぇか? ずっと街から離れていたグラッジは長い間スキル鑑定をしていないだろ?」

 

「全知のモノクルって何ですか?」

 

 初めて聞く名前にグラッジが首を傾げる。俺達はグラッジに全知のモノクルがどんなアーティファクトなのか説明した。すると、グラッジはこれまで見せた事がないキラキラした目をシルバーに向ける。

 

「うわ~、これがアーティファクトってやつなんですね。実物を見るのは初めてですよ! 是非僕の体に光を当てて調べてみてください、シルバーさん!」

 

「それじゃあ遠慮なく当てるぞ、レンズに出てきた文字は古代文字に詳しいサーシャに読んでもらうからな……えい!」

 

 全知のモノクルから細い光が飛び出し、グラドの体を貫通した。レンズに次々と文字が浮かび上がり、解析が完了したようだ。全知のモノクルをシルバーから預かったサーシャは早速読み上げる。

 

「えーと、体重とかの情報はカットして読んでいくね。後天スキル『虹の芸術(レインボーアーツ)』 七つの属性(火・水・風・地・光・闇・無)を宿した武具を生成できる能力であり、硬度・質量・火力の上昇によって魔量の消費が変動する」

 

 後天スキルは大体グラッジから聞いた情報と同じようだ。属性が7つあって、火・水・風・地・光・闇は魔術でも存在するから理解できるのだが『無属性の武具』というのがいまいちピンとこない。また機会があったら実戦で教えてもらう事にしよう。

 

 そして、サーシャは続いて先天スキルについて読み上げた。

 

「先天スキル『魔獣寄せ』 超広範囲型のヘイト(敵視)上昇スキル。スキル保持者の意思とは関係なく超広範囲の魔獣を軽度の興奮状態に変える。あらゆる魔獣に対し有効で帰巣本能に近い感覚でスキル保持者の近辺に呼び寄せる能力である。範囲と効果は加齢や体の状態によって変動する。なお特定の――――えっ! 何だろうこの文字……古代文字と思うけど、読み方が分からないよ……」

 

 サーシャが読み上げた先天スキルは前半の説明は周知のものだった。しかし、サーシャでも読み上げられない古代文字が後半にびっしり書かれているとは思わなかった。俺は後半の解読不能文字についてグラッジへ尋ねた。

 

「グラッジが小さい頃にしたスキル鑑定にも、こんな記述があったのか?」

 

「……いえ、サーシャさんが読み上げてくれたところまではありましたが解読できない部分に関しては文章すら存在していませんでした」

 

「ということは変化・成長が起きているのかもしれないな。だが、範囲と効果の上昇に関しては既に記述がある。別の要素が加わったと考えるのが妥当かもな」

 

「悪い要素じゃなければいいんですけど……カリギュラにいけば、もしかしたら解読不能な部分も読める人がいるかもしれませんね。カリギュラに行くのは恐いですけど、ほんの少しだけ楽しみになってきました」

 

 俺達には博識なサーシャがいるから古代文字に関してはかなり読める方だとは思う。そんなサーシャでもまだまだ読めない古代文字は多いし、全知のモノクルが映し出す古代文字は特に難しいものが多い。

 

 だから、サーシャの知識量をアップさせる意味でもカリギュラに行く事は大きな利点になるかもしれない。治安さえよければウキウキ気分で行けるのだが、その点だけは残念だ。

 

 ひとまず全知のモノクルによる鑑定は終了した……かと思ったが、サーシャが文末に何かの数字が書かれているのを発見した。

 

「あれ? この末尾に書かれている文字と数字は読めそうだよ。えーと、多分魔力と魔量を表す数値だね。魔力5200 魔量25000って書いてあるね。基準がどのくらいか分からないから何とも言えないね」

 

 どうやらシルバーでは気づけなかった表記をサーシャは読めたようだ。この事実を知ってテンションが上がったシルバーとグラッジはすぐに全員の魔力と魔量を調べようと提案してきた。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

面白いと思ってくれた方はコメント・評価・いいね・ブクマなどをしていただけると嬉しいです。

先が気になって早く読みたいと思ってくれた方は概要欄に貼ってあるweb小説サイト『ネオページ』に飛んでいただくと70話以上先行して公開しているのでよかったらお越しください。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。