見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第147話】金色の眼

 

 

 

 リリスの水の色堅(シキケン)で爪撃を往なされたグリフォンは距離を取った後、口を開けて口内に火のエネルギーを溜めていた。

 

 どうやら爪のような局所型の攻撃はリリスに通用しないと判断したのだろう。広範囲の火炎ブレスでリリスを倒すつもりのようだ。流石は神獣、普通の魔獣よりも頭が切れる。

 

 だが、俺達もそのまま火炎ブレスを撃たせるつもりはない。俺は棍、グラッジは氷の剣を持ち、同時にグリフォンへ斬りかかった。だが、寸でのところでグリフォンは体を真上へ浮上させて回避する。

 

 上へ避けられたなら今度は遠距離攻撃だ! 俺とグラッジは再び同時にスキルを発動する。

 

「ブレスを撃たせるもんか! 喰らえ、サンド・ホイール!」

 

「落ちてくれ! フロスト・ナイフ!」

 

 俺が放った砂の車輪とグラッジの投げた氷の短剣はグリフォンの両サイドから同じタイミングでダメージを与えるはずだったが、その場で両翼を開いたグリフォンが体をスピンさせ、今度は真下へ瞬時に移動して回避してみせた。

 

 空中で砂の車輪と氷の短剣が衝突し、衝撃音が虚しく響きわたる。空中でジャンプしているのかと思えるぐらい俊敏なグリフォンを相手ではダメージを与える方法も逃げる方法も思いつかず手が出せない。

 

 その間にグリフォンは溜めていた火炎ブレスのエネルギーを完成させ、激しく首を前後させてリリスに向かって吐き出した。

 

「グギャァァアアッッ!」

 

 けたたましい鳴き声から生み出される極太の火炎ブレスは逃げ場がないほどに広範囲で、瞬く間にリリスの体を覆い隠す……かに思えたが、リリスに近い位置にいたグラッジが咄嗟に火炎ブレスの前に立ちはだかり、後天スキル虹の芸術(レインボーアーツ)を解放する。

 

「アイス・スフィア!」

 

 グラッジが叫ぶとリリスとグラッジの体を氷の球体が包み込んだ。球体は強い冷気を放ちながら、火炎ブレスを受け流しつつ、高温に耐え続けている。

 

 薄っすらと見える氷の球体の中ではリリスも氷の魔力を送り込み2人の魔力で溶かされないように堪えている。

 

 2人が頑張ってくれている今、グリフォンの意識が俺から逸れているチャンスだ。俺は両手に魔力を込めて、グリフォンの側面へ解き放つ。

 

双纏(そうてん) サンド・テンペスト!」

 

 砂の暴風がグリフォンの体に突き刺さり、大きな体が壁へと叩きつけられた。

 

「グキャァッ!」

 

 グリフォンが頭を打ちつけてフラついている今なら逃げられるかもしれない、俺はグラッジとリリスへこっちに向かってくるよう手招きした。2人は一斉に走り出したが、リリスが未だに息切れをしていて思うように走れていない。

 

 その間にグリフォンは意識を回復させたのか、再び目つきが真っすぐ鋭くなった。そして、再び唸り声をあげながらリリスに向かって突進を始めた。

 

 何故、大ダメージを与えた俺ではなく執拗にリリスを狙うのかが分からない。俺とグラッジは一斉にリリスの前に立ち、サンド・ストームと岩の大盾で突進からリリスを守った。

 

 俺とグラッジの全開の防御を以てしてもグリフォンの突進は強く、俺達3人は後ろへ大きく吹き飛ばされた。

 

 20メード近く転がされた俺は痛む腕を抑えながら、急いで態勢を整えてグリフォンの追撃に備えたが、何故かグリフォンは一定のラインでピタリと追い打ちを止めた。

 

 さっきまで親の仇のように執拗に狙っていたリリスの方を見向きもしていない。グリフォンはゆっくりと首を回すと、今度はグリフォンから見て左横方向に飛ばされたグラッジを血走った目で睨み、突進を始めた。

 

 グリフォンの行動パターンが全く読めないが、今のところ俺達の少し前にあるであろう見えない境界線さえ越えなければ襲ってこない気がする。俺は「グラッジ、急いでこっち側に来い、そうすれば襲ってこないぞ!」と指示を出した。

 

 俺の言葉に頷いたグラッジは足裏に風を起こして高速でこちら側へ来ると俺の予想通りグリフォンはグラッジへの突進を中断した。

 

 もしかしたら樹白竜(じゅはくりゅう)の洞窟の時と同じように子供か何かを守っているだけかもしれない。俺は全員に指示を出す。

 

「みんな樹白竜(じゅはくりゅう)と戦った時のことを思い出してくれ。もしかしたらグリフォンは何かを守っているだけかもしれない。これからはアビスロードを下る際は、ここを通らず迂回するようにしよう」

 

 ガーランド団の皆がなるほど、と納得する中、グラッジだけが顎に手を当てて考え込んでいた。グラッジの様子が気になった俺は理由を尋ねる。

 

「グラッジ、何か気になることでもあるのか?」

 

「はい、ガラルドさんの言っている事は正解だと思うんですけど、あのグリフォン自身恐らく子供ですよね。なのにここまでして何かを守ろうとする意思があるものでしょうか?」

 

「うーん、どうだろうな。確かにどんな生き物でも子供はやんちゃに思うがまま動いているイメージがあるものだが、神獣だから幼体でも賢いのかもしれないぜ? 話でも出来ればいいんだがな」

 

「話……ですか、実は僕、グリフォンと戦っているうちに彼女が言っていることが何となく分かる気がしていたんですよね。何の根拠もないんですけど恐らく彼女は通路の奥に入られるのを嫌がっている気がするんです」

 

「グリフォンの言葉が分かる? それに『彼女』って、一体何を言って――――グラッジ! どうしたんだ、その目は!」

 

 言葉が分かるというグラッジのことを最初は疑りかかっていた俺だったが、グラッジの目を見た瞬間に考えが変わった。なんとグラッジの右目がいつもの黒色から金色へと変わっていたのである。

 

 人の事を言える立場ではないが、何とも不思議で異質めいた力を感じる、これが全知のモノクルに書かれていた『読めない古代文字』の部分に該当する能力なのだろうか? グリフォンのことを『彼女』と言い、性別を特定していた点からも信憑性は高い。

 

 グラッジは直ぐに氷の手鏡を作って自分の右目を確認すると、その異質さに驚いていた。自身の中にある新たな感覚に確信を持ったグラッジは俺達に「話しかけてみますね」と言い、グリフォンの方へゆっくりと近づいて声を掛けた。

 

「君はどうして、攻撃を仕掛けてきたの? 何か目的があったのかい?」

 

「ギャァルルゥゥ…………クェッ……クェッ」

 

 言葉を掛けた最初こそ威嚇していたグリフォンだったが、徐々に大人しくなっていき、グラッジの方を見ながら小さい声で長々と呟いている、どうやら何かを伝えているようだ。

 

 グラッジはグリフォンの言葉1つ1つに頷きを返し、再びグリフォンへ質問を投げる。

 

「なるほど、君の考えはよく分かったよ。君は優しい神獣なんだね、尊敬に値するよ。そんな君だからこそ僕達は今後絶対に危害を加えないと約束する。だから奥を見せてもらっても構わないかな?」

 

「クェッ! クェッ!」

 

 グリフォンはグラッジへ何か言葉を返すと、こちらへ背中を向けて奥の方へ歩いていった。それを見たグラッジは温かい笑顔をこちらに向けてグリフォンの言葉を説明してくれた。

 

「どうやら僕は神獣の言葉が理解できるようです。彼女の言葉を訳しますと、どうやら奥に置いてある物を守る為に1番近い位置にいたリリスさんを優先的に攻撃したらしいです。もう、お互いに攻撃はしないと約束できたので奥にある物を見せてくれるらしいですよ。皆で見に行きましょう」

 

 どうやらグラッジの能力は本物らしい。ガーランド団の面々は突然の停戦とグラッジの覚醒に驚きながらグリフォンの後をついていった。

 

 

 

 

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