見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第160話】求めていた情報

 

 

 

 手紙を鞄にしまったグラッジは大きくため息をついた後、これからの事について話し始めた。

 

「僕達がこれからどう動くかが決まりましたね。まずは僕の魔獣寄せとは関係なしにイグノーラを襲っている魔獣群を何とかしましょう。もしかしたら僕がイグノーラに近づけば現在イグノーラ襲っている魔獣の注意を僕の方に向ける事が出来るかもしれません。だから行ってみようと思います。危険ですがガラルドさん達は死の山の真実をお父さん……いや、グラハム王に直接伝えてきてもらえますか? そして、可能であれば防衛を手伝ってほしいです」

 

「ああ、勿論そのつもりだ。グラハム王へ近づく前にソルに襲われるかもしれないが何とかしてみせるぜ。イグノーラが最初に死の山の真実を知り、イグノーラが大陸の中心国となって死の山と戦えるようになるといいな」

 

「はい、そうなるように頑張りましょう! そして全てがうまく片付いたら、その時はエリーゼさんにお爺ちゃんが亡くなったことを伝えに行きたいと思います。とは言っても僕は魔獣寄せがあって村には近づけないので何か手を考えないといけませんが……」

 

「その時は俺達がエリーゼさんを村から連れ出して、護衛しながら離れた場所にいるグラッジのところへ連れて行くさ。それこそ俺達が最初に寝泊まりした千年樹の洞窟でもいいしな。千年樹の上でいくらでもグラドに関する思い出話をしたらいい」

 

「何から何まで……本当にありがとうございます! この恩は戦いで返してみせます」

 

 グラッジは嬉しそうにお礼を言ってくれた。グラッジとの約束を守る為にもまずは近々の問題を何とかしなければ。俺達は六心献華(ろくしんけんか)によって灰色の砂粒と化したグラドの欠片を袋に詰めた。落ち着いたら墓に埋めてあげる為だ。

 

 そして俺達はイグノーラへ行くべく小屋を後にする。小屋にいた時間は1時間にも満たないが手紙の内容があまりにも濃かったせいで長時間いたような錯覚を起こしそうだ。

 

 俺達は小屋を出て、洞窟の細い通路を歩いていると洞窟の外が何やら騒がしくなっていた。もしかしたら魔獣が入口に溜まっているのかもしれない。警戒しながら洞窟を出ると、そこには俺の予想通り30匹以上の魔獣が入口を囲んでいた。

 

 一刻も早くイグノーラへ向かいたいのに……と焦る気持ちを抑えながら武器を構えると群がる魔獣の奥から絶対に出会いたくなかった存在が現れた。

 

 

 

 それは青色の体をした魔人だった。青の魔人は血走った目で俺達の事を睨んでいる。

 

 イグノーラで読んだ本にはディアボロスの容姿について『人と同じような身体に赤と黒の紋章を刻み、蝙蝠の羽に似た強靭な翼を持ち、狼の様な鋭い牙と目を持っている』と書いてあったが、青の魔人はディアボロスの赤い部分をそのまま青くしたような見た目をしている。

 

 獅子のような鋭い目つきと眉間に深く刻まれた皺は猛獣のようなオーラを醸し出しているものの、分け目をつけずに髪を全部後ろになで上げる整った髪形からは野性味と共にどことなく気品を感じさせる。

 

 青の魔人が生きているということは六心献華(ろくしんけんか)を避けてしまったのか、それとも目の前の魔人はよく似た別の個体なのか? とも考えたが、目の前の魔人の体は左の羽がほとんど無くなっていて、まるで溶けているかのように根元からボロボロになっている。加えて左腕と左足も羽ほどではないもののズタボロになっていた。

 

 このことからもグラドは六心献華(ろくしんけんか)を青の魔人に当てることは出来たものの、とどめには至らなかったと推測できる。俺は目の前にいる青の魔人から聞き出してやろうかと思ったが、それより先に青の魔人が語り始めた。

 

「てめぇがグラドの孫かァ? 俺様はグラドの自爆技を喰らってこんな体になっちまったんだ。長い間ろくに動けなかったうえに飛び回るのにも不自由で、あいつが憎くてたまらねぇよ。だから消えちまったグラドの替わりにお前を殴り殺させてくれよ」

 

 今にも飛び掛かってきそうな青の魔人の気迫としゃがれた声に正直俺はビビっていた。しかし、グラッジは全く怯んではおらず、強く言い返す。

 

「憎くてたまらないのは僕の方だ。お爺ちゃんを散々いたぶったお前の方こそ許せない存在だ。僕の名はグラッジ、まずはお前の名を名乗れ!」

 

「ん? お前は俺様がグラドをなぶり殺しにしようとしていたのを知っているのか? フンッ、グラドめ、遺言を残していやがったか。まぁいいだろう、冥土の土産に教えてやる。俺様の名はザキール。死の山の魔獣を統括する魔人の1人だ」

 

 『死の山の魔獣を統括する魔人の1人』……この言い方から察するに他にも魔人、もしくはそれに準ずる存在がいると考えられそうだ。それが、グラドが過去に戦った2番目の魔人という奴だったら相当厄介なことになりそうだ。

 

 魔人という存在がどの程度の寿命を持つのかは分からないが、かなりの強敵だという2番目の魔人には既に死んでおいてほしいものだ。俺はザキールにグラドを襲った目的を尋ねた。

 

「おい、ザキール。お前はどうしてグラドを襲ったんだ? 絶対に答えてもらうぞ」

 

「ほほう、孫のグラッジに負けず劣らず殺しがいがありそうな男がいるじゃないか。いいだろう答えてやる。一言で言えば我々魔獣・魔人にとって邪魔な存在だったからだよ。長い年月、人類が足を踏み入れてなかった死の山に入ってきたグラドは人間にしては腕が立つようでな、魔獣集落の規模や位置を調べ上げて情報を人里へ持って帰られそうだったからな。だから、殺してやるつもりだったんだ。まぁ時間をかけていたぶったのは俺様の趣味だがな、ギャハハ」

 

 ザキールは邪悪な笑みを浮かべ、反吐が出る台詞を吐いた。その瞬間、堪忍袋の緒が切れたグラッジがザキールへ突進し、氷の槍を突きだした。しかし、ザキールは片手で難なく突きを受け止め、余裕の笑みを浮かべている。

 

 予想はしていたが、やはりザキールは俺達よりずっと強い。このままではザキールに近づいたグラッジが危険だ。俺はすぐに離れるよう呼びかけた。

 

「落ち着けグラッジ! 怒りにまかせて戦っちまえばザキールの思うつぼだ。あいつは言葉で揺さぶる様な下衆野郎だ、聞く耳を持つな。俺達全員で対処するぞ!」

 

「くっ! でも、こいつは……。いえ、分かりました、一旦頭を冷やします。すいませんでしたガラルドさん……」

 

 そう言うと、グラッジは氷の槍を回転させてザキールの手を払いのけ、後ろへ大きく飛んで俺達のいる位置へ戻ってきた。これで一旦状況を落ち着かせることができた。俺達は全員武器を構えてザキールの周りを囲む。

 

 しかし、ザキールはうろたえる様子はない。むしろ顎に手を当てて何かを考えているようにも見える。この状況でそんな呑気な態度を取っていられるなんてよっぽど自分に自信があるようだ。俺はザキールが何をしているのかを尋ねた。

 

「取り囲まれているのに随分余裕じゃないかザキール。死んじまったら考え事なんか出来ないぜ?」

 

「フンッ、蟻が何匹囲もうが同じ事だろう。それよりも貴様……名をガラルドというのか?」

 

 こんな状況にも関わらず何故かザキールは俺の名を尋ねてきた。この時、俺は魔人がわざわざ俺の名を尋ねてくる状況に嫌な予感を覚えた。だが、今更違うとも言えるわけもなく「ああ、その通りだ」と返事を返した。

 

「そうかそうか、貴様がガラルドだったか。不快なパラディアの匂いが洞窟の方へ移動していると魔獣達が騒いでいたからグラドの家族を殺せるチャンスかもしれないと思って来てみたが、まさかグラッジだけではなく北の英雄ガラルドにまで会えるとはな。今日の俺様はつくづく運が良い」

 

「……俺に何か用か?」

 

「その様子だとコロシアムでフィルから何も聞いていないようだな」

 

「フィル? 誰だそいつは?」

 

「そうか、あいつは名前すら名乗っていないのか。フィルは貴様がコロシアムの決勝で戦った緋色の眼をしたローブを着た男の名前だ。まぁ考えてみればあの時点でガラルドに全てを伝えちまうと頭が追い付かないと判断するかもな」

 

「さっきからお前は何が言いたいんだ? さっぱり分からないぞ、さっさと本題に入れ」

 

「フッ、いいだろう、じゃあガラルドにいい事を教えてやろう。それは貴様の親についてだ」

 

 ザキールは何を言っているんだ? 何故魔人であるザキールが俺すら知らない実親の事を知っているんだ? それだけじゃなくローブマンもといフィルとすら関りがありそうだ。

 

 数秒の間に色々と嫌な予想が頭をよぎっておかしくなりそうな俺に対し、ザキールはお構いなしに話を続けた。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

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