見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「よーし、俺も一仕事頑張るとすっか!」
ガラルドさんは両こぶしをガンガンとぶつけて気合を入れた。その間にウッド・ローパーは切断された根っ子――――もとい足を本体にくっ付けて再生していた。
僕は斬撃系の攻撃はウッド・ローパーの体積そのものを減らすのに適さないことをガラルドさんに伝えることにした。
「ガラルドさん、ウッド・ローパーの体はいくら切ってもくっ付いてしまいます、だから――――」
「ああ、分かってるさ。だからサンド・ホイールに高熱を纏わせて攻撃したんだ……いや、もはやあれはサンド・ソーサーと言った方がいいか。よーくウッド・ローパーの切断面を見てみろ。再生にかなり時間がかかっているだろう?」
ガラルドさんに言われて切断面を見てみると、確かにウッド・ローパーは接着にかなりもたついている。あれはどういう事なのだろうか? と疑問に思っていると尋ねるよりも先にガラルドさんが説明してくれた。
「ウッド・ローパーという魔獣の体はとにかく消失させることが重要なんだ。となると
「そう……だったんですね、なら僕が一生懸命放った
「いや、あれだけ馬鹿デカい魔獣だとやっぱりグラッジには
「……確かにそうですね」
「だろ? 相性が良くないとはいえ、それでも
ガラルドさんが励ましてくれたおかげで凄く気持ちが軽くなった。思えばガラルドさんは誰かを褒める時や励ます時は具体的かつ沢山言葉を掛けてくれている気がする。
初めて会った時は少し強面でぶっきらぼうな感じかと思ったし、実際普段は口数もあまり多くないから自己表現が得意な人ではないのだろう。それでも仲間が困ったり落ち込んだりしている時は誰よりも熱量を持って真摯に事へ当たってくれる人だ。
そんな尊敬するガラルドさんにバトンを渡せたと言うのならとても嬉しいし、絶対に倒してくれると安心感が持てる。僕は戦闘態勢だった魔力を完全に解き、回復に努めることにした。
「それじゃあ、僕はガラルドさんに甘えて休ませてもらいますね。頑張ってくださいリーダー」
「おう、のんびり見学していてくれ、すぐに倒してくる」
ガラルドさんは自信満々に言い切り、ゆっくりウッド・ローパーに向かって歩いて行った。その間にウッド・ローパー2体は手足の接着を完了させ、ガラルドさんを睨み、2体が触手を同時に2本ずつ振り下ろした。
前後左右から迫る合計4本の触手をどう捌くのだろうか? 固唾を飲んで見守っているとガラルドさんは火の魔力を手の平に溜め、自身の左胸に当てて呟いた。
「レッド・モード!」
僕は自分の目を疑った。なんと呟くと同時にガラルドさんの体が少しだけ赤くなり、湯気と共に高熱を発し始めたのだ。そして、自身の前方から迫る触手に目線を向けると今までに見た事がないスピードで地面を蹴り出し、一瞬で触手の前に到達する。そこから目にも止まらない赤き拳撃を繰り出す。
「レッド・インパクト!」
ガラルドさんの赤い砂を纏った拳が触手に触れた瞬間、マグマに水を放り込んだかの如く、一瞬で触手の先端が蒸発する。そこから糸を伝うように高熱が触手を渡っていき1本の触手がまるまる消失していた。
樹と液体の両方の性質を持っているウッド・ローパーだから多少燃えやすいところはあるかもしれないが、それにしても異常な熱量だ。まさか、こんな技を隠し持っていたなんて。
しかし、ウッド・ローパーは負けじと残り3本の触手をガラルドさんに叩きつけるべく動いている。
前方の触手を攻撃していた関係上、左右と後ろからくる触手にやられてしまう……と僕は目を瞑りそうになったが、ガラルドさんは目で確認することもなく回転砂で3本の触手を削り切ってみせた。
まるで後ろに目でもついているかのような動きは武神を彷彿とさせる。更に回転砂で切られた3本の触手も高熱によって先端が溶けているようだ。いつの間に回転砂に火の魔力を込めていたのだろうか……あまりの強さに震えがおきる。
ガラルドさんの火を伴う攻撃を恐れたウッド・ローパー2体は堪らず、後ろへ下がり距離を取る。
ガラルドさんの新しい戦い方が気になった僕はウッド・ローパーが離れているうちに質問を投げかける。
「ガラルドさん! 今の技は一体……」
「元々、シンバードにいる頃から火属性魔術は練習していたんだ。だが、魔術は色々と複雑な技術が必要だろ? 例えばファイアーボールなら『素早い放出』『火球の移動・操作』『離れた火球の熱量維持』って感じで繊細なコントロールを求められるから不器用な俺はまともに使えなかったんだ。いや、今も使えないと言った方が正しいか」
「ですけど、さっきの打撃と回転砂は凄まじい熱量と威力でしたよ?」
「正面切って褒められると照れるな……ありがとよ。で、熱量の話だが、あれは繊細なコントロールを使わなくても済むように体から発した火の力をシンプルに直接ぶつけているだけなんだ。魔術もへったくれもないんだよ」
ガラルドさんの説明でようやく合点がいった。つまり放出、操作、維持などの要素を排除して手や体に火属性の熱を溜めるという1点の仕事のみに集中していた訳だ。
拳撃に関しては単純にこぶしへ熱を込めればいいし、回転砂に関しても体から砂を放出する前に火の魔力で砂を熱してからぶつけるようにしている訳だ。回転砂のコントロールに関しては元からみっちり練習していて自在に操れるのだからこちらも問題ない。
元々ガラルドさんは魔力……つまり出力に関しては緋色の魔力を持っていることもあり、ガーランド団で1番強い人間だ。やり方さえ工夫すれば誰よりも高威力の魔術を当てる事が出来るわけだ。
僕自身、魔術は習ってもいなければ練習もしていないから使えないけれど
だけど、ここで新たにもう1つ疑問が湧いてくる。それは目にも止まらないスピードで攻撃を繰り出していた『レッド・モード』という技だ。
拳や体そのものが熱くなったり回転砂を熱していた理屈は理解できるけど、身体能力そのものが跳ね上がる理屈が分からない。僕は再び質問を投げかける。
「もう1つ教えてくださいガラルドさん! さっきのレッド・モードっていう技は――――」
――――ビギェェェッッ!
僕が質問をしている途中でウッド・ローパー2体が突然奇声をあげ、体の表面を波打ち始める。
そもそも口が見当たらないウッド・ローパーがどのようにして奇怪な音を出しているのか分からないし、声ですらないのかもしれない。とにかく確かなのはこれから何か変化が起きるということだ。
ウッド・ローパーはその後も10秒以上奇怪な音を発し続けると2体が体をくっ付け合い、元の1体に戻ってしまった。
しかし、ウッド・ローパーの体は2体分よりも少し縮んでいて、かわりに触手の数が3倍程に増えている。どうやら攻撃特化のスタイルに変身したようだ。
再生、接着、分裂、変化、一体どこまで僕達を驚かせれば気が済むのだろうか。ウッド・ローパーのポテンシャルに溜息をついているとガラルドさんが再び体に熱を宿し、途中になっていた僕の問いに答える。
「レッド・モードについて聞きたいんだったな。だが、口で言うよりも見てもらった方が分かりやすいと思う。俺の戦いを答えに代えさせてくれ」