見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
僕が投げ掛けた『レッド・モードとは何か?』という問いに対しガラルドさんは『俺の戦いを答えに代えさせてくれ』と力強く言い切った。そして、熱を纏った逞しい背中を僕に向けると合体したウッド・ローパーに向かって歩き出す。
「いくら大型魔獣でも1匹に時間を掛ける訳にはいかないんだ。さっさと決めさせてもらうぞ」
気合を入れたガラルドさんに比例するようにウッド・ローパーも体に一層強い魔力を漲らせている。すると、数を増やした触手全てを不規則かつ力強く振り回し始めた。
触手は軌道が複雑なせいか時々触手同士でぶつかり合い、強烈な破裂音を辺り一帯に響かせている。
1本1本が大きな触手が数十本レベルで目まぐるしく激しく動くさまは圧巻だ。こんな攻撃を街中で繰り出されれば瞬く間に多くの家屋が粉砕されてしまうだろう。絶対に侵入させる訳にはいかない。
ウッド・ローパーの乱打は段々と勢いを増していき、しまいには一瞬でクレーターを大量に作り出すほどスピードを増している。
触手同士の衝突が更なるスピードを生んでいるのか、それともウッド・ローパーの怒りが増幅してきたからなのかは分からないが、とんでもない破壊力と手数である。
もはやウッド・ローパー自身もどこをどう叩いているのか認識できていないのではないか? と思える乱打の嵐の中をガラルドさんはノーガードで侵入する。
「レッド・モード!」
再び胸に手を当てて体を赤く発光させたガラルドさんは後ろから迫りくる加速した触手を後ろも見ずに裏拳だけで破壊してみせる。圧倒的な強さだ……。
その後も同時に迫りくる触手を火を纏った回し蹴りだけで同時に破壊し、20秒も経たないうちに半数の触手を溶かし、消失させていた。
その強さはザキールに繰り出していたサンド・ラッシュよりも明らかにパワー・スピード共に上だ。正直魔人を彷彿とさせる強さで恐怖すら覚える。
以前、修行期間中にガラルドさんと模擬試合をした時は僕が勝ち越したけど、ガラルドさんは優しい人だから手を抜かれていたのだろうか? それともザキールとの戦いがガラルドさんを覚醒させたのだろうか? ただ1つ分かる事は今のガラルドさんは僕よりも1段、2段格上だという事だ。
半分の触手を失い、もはや戦意を喪失しかけているウッド・ローパーは乱打を止めて、その場で静止している。その間にガラルドさんは再び胸に手を当てて赤く発光するとトドメを刺すべく、足裏に
「もう終わりにするぜ。レッド・ステップ!」
ウッド・ローパーが乱打で削りまくった平原を一筋の赤い光が駆け抜けた。ガラルドさんの通った跡には草が黒く焦げた直線が残っている。
一瞬にして距離を詰めたガラルドさんは背中から棍を取り出すと先端部分に赤い
「貫け! レッド・スパイラル!」
螺旋状の砂を纏ったガラルドさんの棍がウッド・ローパーに接触すると触れた部分がまるで石を落とした泥のように弾け飛び、そのまま奥へ奥へと衝撃波が浸透していく。ウッド・ローパーの根元は向こう側の景色が見える程に大きな穴を貫通させる。
その破壊力・貫通力だけでも十分驚きだけどガラルドさんの攻撃はまだ終わりではなかった。何とガラルドさんは貫通した穴へ自ら侵入してしまったのだ。そして中心部分で立ち止まったガラルドさんは薄っすらと微笑みながら呟く。
「こいつでお終いだ。根元から纏めて消し飛んでしまえ、レッド・テンペスト!」
ガラルドさんの両手から、いつものサンド・テンペストよりも鋭く、火を纏った禍々しい赤黒い嵐が放出される。
するとウッド・ローパーの身体は下から上へと裂けるように膨らんでいき、放出されたエネルギーはそのまま噴火の如くウッド・ローパーの頂上から溢れ出す。
レッド・テンペストを受けた後も、かろうじて樹としての形状は保っているものの中身をごっそりと消失されたウッド・ローパーにもはや戦う力は残っておらず、萎れるように身体全体が地面へ倒れ込む。
再生も接着も分裂も出来なくなったウッド・ローパーは徐々に大目玉の焦点が合わなくなり、やがて本体から剥がれ落ちる。核とも言える大目玉が分離した以上、ウッドローパーが動き出す事はないだろう。ガラルドさんの完全勝利だ!
「よっしゃぁぁっ!」
ガラルドさんが雄叫びをあげると戦いを見ていた兵と民衆は大歓声をあげ、手に持っている武器をカンカンと鳴らし、足踏みをして称えている。
昔、イグノーラがまだ魔獣に襲われていなかった頃は武術大会などが頻繁に開かれていたらしく、闘士の健闘を称えて、武器や足踏みで大きな音を立てていたとお爺ちゃんから聞いたことがある。
きっと今も昔も人間が本当に嬉しい時は同じような反応を返すものなのだろう。そんな行動を見る人全員に起こさせるガラルドさんは間違いなく英雄だ。
飛び交う金属の高音、そして足踏みの低音を背中に浴びながら僕のいる方へ歩いてくるガラルドさんは本当にかっこよかった。一方、ウッド・ローパーの近くにいた小型・中型魔獣たちはガラルドさんを恐れて、その場から動けなくなっている。
大仕事を終えたガラルドさんに労いの言葉を掛けよう。
「お疲れさまでしたガラルドさん、本当に強かったですね」
「ありがとよ。正直、自分でも驚いているよ。ザキールと戦ったあたりから自分の限界が解放されたような感覚なんだ。体を心臓から熱くさせて無理やり血流を早めて身体能力を上げるレッド・モードは前から練習してはいたものの実戦で使えるレベルではなかったんだ。それでも今は不思議と絶対に使えると自信が湧いてきてウッド・ローパーに使った訳なんだが……」
ガラルドさんの言葉と実演でようやくレッド・モードがどういう技なのかが分かった。言わば強制的に活性化のスイッチを入れる類の技なのだ。こんな危なっかしい技を使う人はガラルドさん以外いないのではないだろうか。
あまり人の事は言えないけれど正直ガラルドさんほど不思議な人間はいないと思う。
『2種類の魔力』と何処で会得したかも分からない『
ザキールの言っていることがどこまで本当かは分からないけれどガラルドさんが魔人であるザキールと兄弟であるならば『魔人の力』の様なものを覚醒させ始めているのかもしれない。
ガラルドさんは尊敬するリーダーではあるけど例えどんな血を持ち、稀有な存在であろうとも僕は対等に肩を並べて戦える戦士でありたい。
今回みたいに守ってもらう側ではなく、ガラルドさんを超える強さを持ち、ガラルドさんから頼られる戦士になりたい。気が付けば僕は「戦いが終わったら強くなったガラルドさんと手合わせしたいですね」と呟いていた。
そんな言葉を聞いてガラルドさんは一瞬驚いた後、すぐに笑顔になって言葉を返す。
「ああ、その為にも早くザキールを止めよう。俺も唯一対等に拳を交えられるグラッジと手合わせてできる日が待ち遠しくて仕方ないからな!」
もったいない言葉を噛みしめながら僕は魔獣を全滅するべく再び剣を持ち、魔獣の群れへと走りだす。