見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第184話】救い

 

 

 

 見上げた視界が全て岩に埋め尽くされて、俺達は身動きが取れなくなってしまう……はずだった。岩がぶつかった感触が腕に少しだけ残っているものの、体に岩が乗っかっている感覚がない。

 

 それどころか倒れた体を起こしても頭や手足に当たる感触はなく、視界は真っ暗で全く何も見えない。どうやら形がバラバラの岩々が降ってきた結果、地面と岩々の間に隙間が出来たようだ。

 

 俺は手に小さな炎を作り出し辺りを照らすと周りには兵士たちとグラッジ、サーシャ、リリスが横たわっている。グラッジとサーシャは俺が見つけたタイミングで目を覚まし、光源を持つ俺の元へ駆け寄ってきた。

 

 他の兵士達も徐々に起き出して事なきを得たかと思ったが、何故かリリスだけは中々起き上がらなかった。心配になった俺が駆け寄るとリリスの頭からどくどくと血が流れていて目も半開きで意識が朦朧としている。

 

「おい、リリス! 大丈夫か、しっかりしろ!」

 

「あぁ……ガラルドさん……ご、ごめんなさい、うまく防げませんでした……」

 

 比較的体が頑丈な俺、グラッジ、兵士なら勢いを弱めた岩のブレスに耐える事が出来るし、サーシャなら黒猫サクでの防御が可能だ。だが魔術師タイプのリリスには厳しい落石だったようだ。

 

 俺はサーシャのアクセラ、そして回復魔術が使える兵士にリリスの治療を任せることにした。

 

「守ってやれなくてごめんなリリス。リリスはサーシャ達のスキルを受けて、ここで回復に専念してくれ。俺とグラッジは山積みになった岩から出て行ってヒュドラを止めてくる」

 

「わ、分かり……ました。お役に立てなくて……すい……ません」

 

 リリスは途切れ途切れになりながら言葉を言い切り、スッと目を閉じて意識を失う。かなりのダメージを負わせてしまったようだ。もう戦線復帰は厳しそうだ、それどころか早く事態を収束させて医者に見せなければ。

 

 俺は頭上に積み上がった岩々を一気に吹き飛ばす為にサンド・テンペストの準備を始める。するとグラッジが慌てて俺を制止した。

 

「お、落ち着いてくださいガラルドさん! 今、頭上の岩々を吹き飛ばすと積み上がった岩のバランスが崩れて総崩れする可能性がありますよ!」

 

 グラッジの言う通りだ、雪山の雪崩と同じようなものだ。岩々によって空洞ができている今の状況は絶妙なバランスで成り立っている可能性もあるからほんの少しのズレで決壊する恐れもある。

 

 そんな事にも頭が回らないぐらい今の俺は動転していたようだ。自分で自分に冷静になれ! と戒めた俺はこの後どう動くべきかを話し合うことにした。

 

「すまない、助かったよグラッジ。だが、穴に埋もれたに等しいこの状況……グラッジはどうするべきだと思う?」

 

「とにかく積み上がった岩を刺激しない事が最優先です。恐らくヒュドラの吐いた岩は魔術エネルギーなのでヒュドラが気を失うまでは消えません。いや、もしかしたら死んでも消えないタイプの可能性もあります。だから今いる場所から横方向に穴を掘って真上に岩がない位置まで進みましょう」

 

「だが、そんなことをしていちゃ時間が……」

 

「ええ、恐らく10分以上かかるでしょう。ですが、今は遠回りこそが1番の近道であり、安全策です。外の様子は気になりますが地道に進んでいきましょう。少なくとも横穴さえ掘れれば意識を失っているリリスさんと兵士を岩が降ってこない位置まで運べますし」

 

「分かった、グラッジの指示に従うぜ。慎重かつ迅速に横穴を掘ろう」

 

 俺達の取るべき行動が決まったところでサーシャが「ちょっと待って!」と言って俺達を呼び止めた。どうしたのかと振り向くと、サーシャが手のひらに乗るぐらいに小さな黒猫サクを召喚してから岩と岩の隙間を指差す。

 

「サクを限界まで小さくして隙間から外に出してみるよ。そうすれば、サクの視覚を経由して外の状況が分かるから」

 

 これは良案だ。早速サーシャが外にサクを移動させると目を瞑って視覚情報を共有したサーシャが外の情報を教えてくれた。

 

「どうやら思ったよりも状況は悪くないみたいだよ。元々南側で戦っていた仲間達に加えて西や北からも応援が来ているみたい。おかげで数の力を前にヒュドラも立ち往生してるみたい。だけどヒュドラがサーシャ達に吐いてきた岩の雨は相当広い範囲に落ちてきているから横穴は長めに掘らないといけないけど……」

 

 すぐにでも南城壁が壊されかねないと思っていたから、まだ救いはある。俺達はサーシャに逐一外の状況を教えてもらいながら穴を掘り続ける。

 

 気を失ったリリスと兵士を安全な横穴に運んだ後も穴を掘り続ける作業は続き、思った以上に時間がかかってしまった。その間にも頭上の地表から響いてくる足音の数はどんどんと増えてきて掛け声も多くなっている。

 

 深い場所にいる以上どうしても外の声が何を言っているのかは聞き取れないが声が増えているということは城壁から降りて近接で戦っている人数が多くなったということだろう。とうとう遠距離攻撃では抑えきれないぐらい圧力が強くなってきた可能性が高い。

 

 その間に黒猫サクには城壁を超えて街の中の様子を見に行ってもらったが中にいる兵士も民衆はもはや限界レベルに消耗してしまっているようだった。

 

 兵士達は戦っては中に戻って休み、休んでは外に出て再び戦うというスタイルでここまでやってきていたけれど現在、中にいる兵士と民衆はもう外に出て戦うのは厳しそうだ。となると残された戦力は俺達と外にいる兵士達だけだ。

 

 血が出る程に唇を噛みしめて焦る気持ちを抑えた俺は横穴を安全な位置まで掘り終える。あとは真上に向かって思いっ切り上がるだけだ。

 

 俺はサンド・テンペストで一気に真上への道を貫通させてやろうと両手に魔力を込めた。すると突然地上から謎の大歓声があがっていた。

 

 もしかしてソル兵士長あたりがヒュドラに大ダメージでも与えたのだろうか? 真上の地表に人間がいる可能性も考慮して加減したサンド・テンペストで大地を貫通させてから地上へ上がる。すると西方向にイグノーラ兵士でも民衆でもない大勢の人間が立っていた。

 

 いや、正確に言うと夕方故に西日が眩しくて顔も服も陰になって見えないからシルエットだけで判断したわけだが。

 

 もしかしたら近隣の村や町の人間が助けに来てくれたのかとも思ったが急な魔獣群の襲撃にこんなにも早く対応できるぐらい近い位置にある村や町は地図に載ってなかったはずだ。

 

 困惑していると俺達の東側にいたヒュドラが突然、怒りの咆哮をあげる。

 

「ギィヤァァァウゥゥ!」

 

 2度目の咆哮とはいえ対策をしていたこともあり耳がやられることはなかった。だが、耳に栓をしていても相変わらず、とんでもない爆音だ。

 

 巨体に相応しい大音響に怯んでいるとヒュドラは間髪入れずに毒々しいブレスを俺達に向かって吐き出してきた。

 

 毒である以上、回転砂で防いだところで毒が皮膚に触れたり吸引してしまう可能性が高い。だが他にとれる防御手段なんかないからやるしかない! 俺は皆を守るためにサンド・スト―ムの構えをとった。

 

 しかし、誰かが突然俺の左肩をガシッと掴んで引っ張り、発動の邪魔をしてきた。誰だ! と俺が問いかける間もなく邪魔をした男は俺の前に行き背を向ける。そして、飛んでくる毒のブレスに対しレイピアの突きを放つ。

 

「バニッシュ・トラスト!」

 

 男の持つレイピアの先端からエネルギーが放出されると禍々しい毒のブレスは一瞬で色を失い消失する。あんな技を放てる男を俺は1人しか知らない。男は体をこちらに向けると、したり顔で告げる。

 

「久しぶりだなガラルド……お前に受けた恩を返しにきたぞ」

 

 そこには以前とは見違えるほどに強い魔力を纏ったレックが立っていた。

 

 

 

 

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