見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第185話】レックの知識と後悔

 

 

 

 何故イグノーラに帝国第四皇子のレックがいて俺達のピンチを救ってくれたのかが分からない。驚愕した俺は裏返った声でレックへ尋ねる。

 

「レック! お前……どうしてここに?」

 

「どうしてって、帝国第四部隊も死の海を渡らせるつもりだってモードレッド兄さんが言っていただろう?」

 

「流石帝国だな、あんな厳しい海域をアーティファクトも無しに乗り越えてくるとはな。俺達は全知のモノクルっていう優秀なアーティファクトを使ったんだが、それでも死に掛けたぞ」

 

「……どこぞの船団がご丁寧に死の海に簡易灯台を大量に設置しておいてくれたからな。俺達帝国第四部隊はそれに従って進んできたまでだ。もっとも灯台を設置していく計画があるという情報はシンバードのシンに頭を下げて教えてもらった訳だがな」

 

 俺達ガーランド団が死の海を越えてから約60日が経過していることを考えるに、きっとレックはレックなりに各地へ足を延ばして頑張っていたのだろう。

 

 基本的に帝国が苦手でモードレッドのことが嫌いなシンが、それでも帝国の人間であるレックに情報を伝えたのはレックの事を認めていてガーランド団の助けになってくれると信じていたからなのだろう。

 

 レックと最後に顔を合わせたのはドライアドだから随分と長い間会っていない気がする。その間にどんな事があったのかを聞きたいし、どうやって助っ人に駆け付けてくれたのかも聞きたいところだ。

 

 しかし、ヒュドラが睨んでいる今、悠長に話している時間はなさそうだ。俺はレックへどう戦うか問いかけた。

 

「レック、お前なら、あそこにいるヒュドラとどう戦う?」

 

「そうか、こいつはヒュドラと言うのか……そうだな、雑魚魔獣は俺の部下である帝国兵300名が討伐してくれるだろう。だから俺達はヒュドラに一点集中していこう。このヒュドラというドラゴンは体格に目がいきそうになるが厄介なのは物理面ではなく各種ブレスと咆哮だけだ。だから素早く不規則に動き回って狙いを定めさせないのが重要になってくるな」

 

「手足や尻尾の攻撃はひとまず気にしなくていいって事か。なら近づいて攻撃してやりたいところだが、近づくと当然ブレスに当たりやすくなるからな……。巨大なヒュドラのブレス包囲網を本当に避け続けられるのか?」

 

「避けられそうにない時は俺のスキル『バニッシュ・レイピア』でエネルギーをかき消してやるから心配するな。だから物理的に強くて、なおかつ素早く動ける俺とガラルドとイグノーラ王子の3人で固まって戦おう。よろしいですかな、グラッジ殿?」

 

「え? あ、はい、よろしくお願いしますレックさん!」

 

 レックがいきなりグラッジに敬語を使い始めてビックリしたけれど、考えてみれば一応他国の王の息子にあたる人物なのだから政治的にも礼儀正しくなるのは当然なのかもしれない。その心遣いをもうちょっと俺に対しても分けて欲しいものだが。

 

 俺達3人はサーシャと別れ、ヒュドラに向かって走り出す。ヒュドラはそれぞれの頭から火、氷、水、毒、風、雷など、嫌になるほど豊富な種類のブレスを吐き続け、俺達を追い詰めようと必死になっている。

 

 人間がうっとおしく飛び回る虫を手で払いのけるのと同じように沢山の頭を激しく動かすヒュドラだったが俺達の動きが速いのか、それとも頭の数が多くて制御が大変なのか中々俺達にブレスを当てられずにいた。

 

 その間にも俺達はヒュドラの側面・背面へと目まぐるしく移動して、その度に3人で攻撃を加え、着実にヒュドラの皮膚に傷をつけてダメージを蓄積していった。

 

 しかし、体格が大きいこともあってか中々ヒュドラの動きを鈍らせる事が出来ない。そもそも頭が九つもあるうえに首も長いから頭を1つ1つ倒していくのが難しく、どうしても胴体にしか攻撃が出来ない。

 

 最初にリリスと一緒に倒した頭以外は全て健在で、今も八つの頭が俺達を鋭い目で睨んでいることからも迂闊に飛び上がって頭を攻撃できそうにない。

 

 中々決定打を与えられない状況にグラッジも愚痴をこぼす。

 

「でたらめな魔獣ですよね……あれ程までに大きな魔獣と戦ったことがないので、どうやってトドメを刺せばいいのか分からないです……2人は何か策はありますか?」

 

 グラッジの問いかけに対して俺は何も返せなかった。しかし、レックはしばらく考え込んだ後、頭を掻きながら提案する。

 

「しょうがない……あまり取りたくない戦法だがやるしかないか。ありったけの力を一撃に込めてヒュドラの心臓を狙うぞ」

 

 頭を狙う事ばかりを考えていて肉体のもう1つの核とも言える心臓を狙う作戦は思いつかなかった。だが、ヒュドラの心臓の位置は何処なのだろうか? レックに聞いてみよう。

 

「狙えるなら心臓がいいかもな。持久戦になったら不利になるのは俺達だからな。だが、レックはヒュドラの心臓の位置が分かるのか?」

 

「ヒュドラなんて生き物は存在自体今日初めて知った俺だが、心臓は胸の中心……だと思う。確証は持てないがな」

 

「確証がないのかよ! ならそんな作戦――――」

 

「だが、今は確実性のある作戦なんて1つもないだろ? だったら、これに賭けるしかない。それに少しだが根拠はある。樹白竜(じゅはくりゅう)の洞窟で俺達帝国の人間は樹白竜(じゅはくりゅう)の幼体を沢山葬ってしまったことを覚えているな? 後日、俺たちは今後の人類の為に遺体を何匹か解剖したんだ。その時に分かったんだよ、竜族は胸の中心に心臓があるってな。馬鹿な俺が生み出した必要の無かった犠牲だ、せめてここで役立ててやる」

 

 そう言い切るレックの顔は後悔と決意に満ち溢れている。竜種という伝承でしかほとんど話を聞かない存在はサンプルが極めて少なく分からない事が多い。

 

 それ故に価値が高く、討伐で功を得ようとしたレックは確かに浅はかだったとは思うが気持ちは分からないでもない。

 

 俺にだって人命救助の為とはいえ勝手に住処に入って樹白竜(じゅはくりゅう)を怪我させて申し訳ないという気持ちがある。だから、この情報は絶対に活かしてやりたい。俺はレックの作戦に賛成することにした。

 

「分かった、その作戦で行こう。2人とも準備はいいか?」

 

 俺の催促に2人は頷きを返す。次の接触で必ず勝負を決める! 俺達3人はヒュドラを見つめ、一斉に風を切って走る。

 

 

 

 




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