見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第195話】英雄たちへの拍手

 

 

 

 薄れそうになる意識と激痛が走る両手に矛盾を感じながら倒れていると俺達の周りを大勢の人間が囲う足音が聞こえてきた。

 

 倒れた俺に集まってくる流れはコロシアム決勝を思い出して懐かしい気持ちになってくる。誰かが俺の上半身を起こして俺の右手を握っている。そして、激痛が走る手に回復魔術をかけながら労いの言葉をかけてくれた。

 

「ガラルドさんお疲れさまでした。3人がザキールに殺されてしまうのではと何度も肝を冷やしましたよ」

 

 視界がぼやけて分からなかったが声を聞いて誰か分かった、リリスだ。そして、空いていた俺の左手を今度はサーシャが握り、アクセラを発動する。

 

「サーシャも本当に心配したんだよ。助太刀したいと何度も思ったけど、3人とザキールがあまりにも強かったから。それにサーシャ自身足手まといになりかねないぐらい消耗してたから……」

 

 2人とも涙声になっている、どうやら相当心配をかけたようだ。俺は2人にお礼を伝える。

 

「2人とも心配してくれてありがとな。どうにかザキールを止める事ができたよ。魔量の枯渇で目がよく見えないからレックとグラッジとザキールがどうなっているか教えてくれ、リリス」

 

「グラッジさんもレックさんもダメージを負ってはいますが命に別状はありません。今は城の治癒術師たちが治療に当たってくれています。ザキールは兵士に抱えられて運ばれている最中です」

 

 本当に終わったんだな……と見え辛い視界で空を見つめながら感慨深くなっていると、俺の右手の甲にポタポタと何かが当たる感触を覚える。

 

 それはリリスの涙だった。鼻声でぐずぐずになったリリスが改めて感情を吐露する。

 

「本当に……今回は駄目かと思ったんです……グス……何度も魔獣に襲われて、ザキールはしぶとくて、レックさん、グラッジさんと次々に倒れていって……うぅ……だから、もうほんとによかったです……うぇぇ~~ん!」

 

 リリスはとうとう子供みたいに泣きじゃくってしまう。今回の戦いは間違いなく今までで1番の死闘だった。

 

 リリスの心労を汲まなければ。俺は血まみれになった手でリリスの頭を撫でるわけにはいかないと思い、右腕をリリスの背中に回して抱きしめた。

 

「大泣きするぐらい心配してくれてありがとな。もう戦いは終わったんだ、ゆっくりイグノーラへ帰ろう」

 

 腕の中でコクコクと頷いたリリスは手で涙を拭いて治療を続ける。少しずつ視界がクリアになってきたから立ち上がって帰ろうとした俺だったがフラついて再び倒れてしまった。

 

 情けないが1人で歩けそうにない。既にボロボロになっているリリスとサーシャに運んでもらう訳にもいかないから迎えの兵士がくるまで待っていると、俺の背後から沢山の足音とともに懐かしい声が聞こえてきた。

 

「久しぶりだねガラルド君、私と話すのはドライアド以来かな?」

 

 声の主はレナだった。レックから無事だとは聞いていたが実際にこの目で見て、ようやく実感が湧いてきた。俺は危険な仕事を終えたレナに労いの言葉をかける。

 

「帝国に行かせるような危険な仕事を頼んでしまってすまなかったなレナ、無事に帰ってきてくれて嬉しいよ。レナは確か診療所で治療を手伝っていたんだよな? こっちにきても大丈夫なのか?」

 

「重傷の君が気を使わなくてもいいよ。向こうは私がいなくても平気だし、南側へ加勢に来させてもらったんだ。だけど君達3人とザキールの戦いが異次元過ぎて加勢しても邪魔になると思ってね。大人しく離れた位置から見学させてもらったよ。積もる話も色々あるだろうけど、ひとまず兵士さんが用意してくれた馬車でイグノーラへ帰ろう」

 

 そう言うとレナは離れた位置にある馬車を指差した。兵士達に担がれて大きな馬車に入れてもらった俺は、リリス、サーシャ、グラッジ、レック、レナと一緒にイグノーラ城内の診療所へ向かう。

 

 

 

 

 南の城門を抜けて街に入ると街中いたるところから拍手と歓声が沸き起こった。馬車の窓からしか分からないが何処を見ても民衆が笑顔で手を叩いてくれている。

 

 どうやら馬車に俺達が乗っている事も俺達が戦いを終わらせたことも全員が知っているようだ。

 

 コロシアムの時よりも更に多くて大きい拍手に目頭が熱くなっているのを感じる。目を覚ましたグラッジとレック、そしてサーシャも薄っすら泣いているようだ。

 

 一方、リリスだけは薄っすらではなく大声で号泣していた。体から水分が無くなるんじゃないかと思うぐらいに大泣きしていたせいで逆に俺は少し冷静になっていた。まぁ感情的なところもリリスの魅力なのだけれど。

 

 どこを通っても鳴りやまない拍手に感慨深くなっていると馬を操っている兵士がこれからの予定について話し始める。

 

「これから皆さんには城内に入り治療を受けていただきます。ザキールが攫っていたグラハム王の身柄も確保できましたので2時間後には王がバルコニーから広場にいる民衆に向かって終戦を宣言し、今後の事を話すようです。そこで話した内容は後日お伝えいたしますね」

 

 魔獣寄せがある以上、ザキールがグラハム王を殺す事はないと思っていたものの、見つけ辛い所へ拘束されていたらどうしようかと心配だったが無事見つかって本当によかった。

 

 グラハム王は終戦宣言をした後、どんな話をするのだろうか? 魔獣寄せで迷惑をかけないように何処か遠くへ移動するとか、王の後任をどうするか等を話すのだろうか?

 

 グラハム王の言葉を直に聞きたいと思った俺は兵士にお願いすることにした。

 

「兵士さん、すまないが俺を王の演説が聞こえる位置まで運んでくれないか? もう、戦いは終わったから治療が多少遅れても構わないからさ」

 

「で、ですが、今も骨は折れていますし、出血も止まり切ってはいないですよね……大丈夫ですか?」

 

「ああ、問題ない、よろしく頼む」

 

 俺がお願いすると、同じく重傷だったレックとグラッジも体を起こして演説を聞かせてくれと兵士にお願いしていた。

 

 兵士は肩をすくめると「分かりました、ですが辛かったらすぐに言ってくださいね」と念押しして、俺達をグラハム王が演説するバルコニーへと運んでくれた。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

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