見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
長かった戦いを終えて、グラハム王、グラッジ、レックが民衆に思いを伝え、盛大な宴がはじまったところで俺は疲れ果てて、城内の診療所のベッドに倒れ込んだ。
身体中が痛いから普通なら眠れはずだが、それ以上に疲労が大きかったからスッと眠りにつき、起きた頃には翌日の夕方になっていた。
横で寝ていたレックとグラッジも同じぐらいのタイミングで起きたようで俺達の起床を確認したリリスが医者と仲間達を呼びに行った。
診療所には他にサーシャ、シルバー、グラハム王、ソルさん、レナ、ヒノミさんが来てくれたけど他のガーランド団やゼロの姿が見当たらない。リリスに聞いてみよう。
「なあ、リリス。他のガーランド団員やゼロは何をしているんだ?」
「他のガーランド団員はパープルズを筆頭に復旧作業を手伝っていますよ。彼らも疲れているのに頑張りますよね。ゼロさんは地下に拘束してあるザキールから色々と話を聞いたり、血液を採取したりして調べものをしているらしいです」
「血液を? 確かに魔人の事を調べるのは今後の役に立つかもしれないな。過去に魔人ディアボロスを倒した時にイグノーラの学者たちも同じように調べたりしたのだろうか……何か知ってるか、グラハム王?」
「ガラルド殿の言う通り過去の学者たちは魔人ディアボロスについて色々と調べたと聞いている。だが、その頃の学者は今よりも知識が劣るうえにディアボロスを調べた時には既に遺体となっていたから実験的な調査も行えず、大した情報は得られなかったらしい」
魔獣・医学・魔術の研究は10年も経てばそれなりの進化を遂げると聞いたことがある。だから過去の学者たちが目ぼしい情報を得られなかったのも仕方がないのかもしれない。
魔人という謎深き存在を調べ上げる事が出来れば魔獣活性化問題やスキル・魔術の研究など色々な分野で成長を計れるかもしれない。ゼロには頑張ってもらいたいところだ。
次はレナとヒノミさんに質問してみよう。
「ようやく落ち着いたことだし、レナ、ヒノミさんに聞きたいことがある。2人に調査を依頼した『リリスの記憶に繋がる情報』と『ビエードの遺言に繋がる情報』は何か得られたのか?」
俺が質問するとレナがグラハム王とレックの方を見てから再度俺に向き直って話し始める。
「リリスさんの木彫り細工を手掛かりに情報をいくつか得られたよ。それにビエードが残した『モードレッドについて調べろ』って言葉と『少しでも多くの国と手を組み魔獣と帝国に備えろ』って言葉の意味についても情報を得られたよ」
「流石俺が見込んだ2人だぜ、お手柄だな」
「褒めてもらえて光栄だよ。と言っても全ての情報が分かった訳ではないし、リリスさんの過去とビエードの遺言は少し共通項があったから運がよかったけどね。だけど、ここで全てを話していいのかな、ガラルド君? ここにはモードレッドの弟と他国の王グラハム様もいるんだよ?」
「レナの言っている事はもっともだが、元々帝国に捕まったレナとヒノミさんを逃がしたのもレックだ、信用してやってくれ。グラハム王も一時は俺達を捕まえようとしたけれど今は仲良くなれた。魔獣活性化で大陸全体が協力し合わなければならない今、情報は共有しておいた方がいいだろう」
グラハム王とレックはこの場を離れようとしていたが俺の言葉を受けて動くのをやめた。だが、話を聞く前に俺はレックに質問しておきたいことがあることを思い出し尋ねることにした。
「だが、レナから話を聞く前にレックに質問したい。お前は仮にモードレッドが人類にとって危険な存在だとしたら戦うのか? それとも皇族であり兄でも存在だから従うのか?」
「……俺は帝国をより一層強大な国にして世界の模範となる存在にしたいと思っている。だが、人間と他国があってこその帝国だ、兄が道を踏み外そうものなら刃を向けるさ。とは言っても冷静で聡明なモードレッド兄さんが邪悪な人間であるとは思えないがな。俺が本当に危険だと考えているのは父である皇帝アーサーだ。兵器の運用を開始したのも皇帝だし、あの人は何をするにも手段を選ばない。だから俺は内乱になれば、あの人を必ず止めてみせる」
「……レックの考えは分かった。なら一緒にレナの話を聞こう。だが、その前にゼロから聞いた『魔力砲』『サクリファイスソード』発祥の話、そして、ゼロの父と祖父が過去に戦った話をレナ達に伝えておこう」
俺はゼロの家名が『パラディア』であり、父ワンが危険な存在であることを伝えた。魔力砲とサクリファイスソードがワンによって作られた事を伝えたら絶対に驚くだろうと予想していたのだが、レナもヒノミさんも終始冷静に聞いていた。
俺が一通り話し終えた後、レナは帝国領で何があったかを教えてくれた。
「次は私が説明する番だね。ドライアドを出て帝国に着いた私達は帝国中央街を除く各地の酒場に足を運んで情報を集めていてね。各場所で色々と黒い噂を聞いたけれど、全ての酒場で共通して聞いた情報があったんだ。それは『東西南北全ての街区から異様に沢山の食糧を中央街に送っている』というものだったんだよね」
「食糧を? 中央街ってそんなに人口が多かったのか?」
「いいや、東西南北の街区と中央街はどこも同じぐらいの人口だよ。だから私達は中央街に調査を絞ることにしたんだけど、そもそも中央街はかなり身分の高い者や特別な許可を得た者しか入れない決まりでね。今度は中央街に入る方法がないか探り始めたんだ」
「おいおい、そこまでやって怪しまれないのか……いや、現に怪しまれたから1度捕まって牢屋に入れられた訳か」
「ハハッ……ガラルド君の言う通りだね。レックさんがいなかったら今頃どうなっていたか……でもね、この作戦ならきっと大丈夫だ、って思える作戦を閃いた私はそれを実行することしか考えられなくなっちゃってね」
いつも飄々としているレナが珍しくしょんぼりとしている、失敗が結構堪えているようだ。
レナはコロシアムで戦って以降『リリスさんとはいつ結婚するんだい?』とか『サーシャさんに浮気しちゃだめだよ?』などと俺の事をよく揶揄ってくるお茶目な奴だ。だから、弱ってる姿が見られて正直ちょっと嬉しい。
だが、そんな呑気な事を考えられるのもレックが牢から脱出させてくれたからだ。俺はレナの言う作戦が何かを尋ねると彼女はとんでもないことを言い始めた。
「私が提案したのは『皇帝の第7夫人候補』として潜入するって作戦だよ。どうだい驚いたかい?」