見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「次はエンドについて分かったことをお話します」
俺はヒノミさんの言葉を受けて、今は全ての話を聞いてから仮説を立てる事に決めた。ヒノミさんは話を続ける。
「そもそも、魔力砲などの兵器はどういった経緯で製造が始まったのか……それは、ある日突然帝国に現れたエンドという組織の学者が皇帝に近づいてきたことがきっかけでした。エンドは魔力砲などの兵器の存在を教え、色々と入れ知恵したそうです。恐らくさっきガラルドさんが話していた『ワン』という男が、その学者だと思います」
「なるほど、ワンは狂気的な人間だから、そういった接触の仕方はしそうではあるな。奴はどうやって大陸の北側に来たんだろうな? それと入れ知恵の内容が気になるな」
「死の海をどうやって越えて来たのかは分かりませんが、入れ知恵の内容に関しては少しだけ教えてもらいました。1つは帝国の地下にマナストーン・コアと呼ばれる物質があると皇帝に伝えて効率的なコアエネルギーの運用方法を教えてもらったことです。そして2つ目は奴隷確保の方法と他国への体裁の保ち方ですね」
「奴隷の確保というのは旧ドライアドの民を吸収した件のように『魔獣から民を守る』という恩を着せてから大陸則を盾にして自国へ連れてくる方法だってことは分かる。だが、他国への体裁の保ち方っていうのはどういうことだ?」
「他国からすれば帝国が吸収した民が帝国領内のどこにも見当たらなかった場合、リングウォルド帝国は吸収した人間を死なせるような酷い国だと悪評が広まってしまいますよね? なので、帝国は『地下の巨大空間で寝泊まりする人間』と『地上の家で暮らす人間』を定期的に切り替えていたそうです。つまり吸収した人間が外部から見たら普通に働いているように見せていたんです。どうやら上手くローテーション出来るように奴隷1人1人に番号を付けて管理しているそうです……」
「……なるほどな。それでも顔色の悪い民を外部の人間に見られちまって『帝国は厳しい労働を課している』と噂されているのが現状だ。上手く誤魔化し切れてはいないようだな」
「皇帝はそれも分かったうえで心配する事はないと断言していました。外部から調べたくても帝国には秘匿性の高い中央街があるので外部の人間はそうそう多くは入れませんからね。仮に入られても地下に巨大空間が広がっているなんて誰にも想像できるはずがないから恐れる事はないと言っていました」
「現に息子たちにはバレていない訳だしな。まぁ女性好きが裏目に出てスパイにバレてしまっている訳だが」
「皇帝には爪の甘いところがあると思いますが、それでも深い部分の情報は教えてくれなかったので慎重な方だと思います。自身の真の狙いや、もっと下の地下空間のことはお願いしても教えてくれませんでしたし、モードレッドさんの事も信用していないようでした」
「モードレッドは正統後継者である第一子だし、施政面でも優秀で合理的だから普通なら信用しそうな気がするけどな。どうして信用していないんだ?」
「皇帝曰く、モードレッドさんは自身より遥かに頭が切れ、氷のように冷たく底が知れない男だから……だそうです。なので、次期皇帝をどうにかして第二皇子か第三皇子にしたいと考えている様ですよ。レックさんについては最近逞しくなってきたと話していましたが、まだ若過ぎるし仲間や身内に甘いところがあるから現時点では候補にあがっていないと言っていました」
この話を聞いたレックがどんな顔をしているか確かめてみたが至って冷静だった。むしろ衝撃的な事実の数々よりも、皇帝から『最近逞しくなってきた』と評価されている事の方が驚いている様だった。
モードレッドと初めて会った時、奴はレックのことを出来損ない扱いしていた。きっとコンプレックスが膨れ上がって家族の傍で居辛かったのだろう。過去のレックが気の毒になってくる。
そして、最後にヒノミさんはもう1つ重要な情報を教えてくれた。
「皇帝はモードレッドさん以上に弟であるシリウス・リングウォルドが厄介な存在だと嘆いていました。細かい所まで聞けなかったのですが、シリウスさんは皇族としての地位を捨てる前も捨てた後も皇帝アーサーの企みを色々と邪魔してきたらしいですよ。兵器製造や他国侵略などを何度も阻害されたとのことです」
ヒノミさんは全てを語り終えると自分の席へと戻っていった。どうやら俺の想像していた何倍も働いてくれていたようで感謝してもしきれない。
これで報告は終わり解散する流れになるかと思ったが、レナはまだ報告が残っているらしく再度話を始める。
「ヒノミさんが時間をかけて皇帝の信頼を得ている中、私も個人的に色々と調べまわってたんだよね。そして、リリスさんの木彫り細工と人相書きを持って片っ端から尋ねていったんだ。すると、ある小さなアトリエで年老いたお爺さんが興味深いことを口にしたんだ『これはワシの作った木彫り細工じゃ、小さく目印を刻んでおるからな』とね」
この木彫り細工は動物をモチーフにしたアクセサリーで製造自体は大陸のいたるところで何百年も前から行われていた人気のアイテムだと聞いている。大量生産されているが故に誰が作成し、誰に修理を頼めばいいのかが分かるように目印を付けているようだ。
レナが出会ったお爺さんが残したという目印は動物の足裏に刻まれているらしく、その目印はお爺さんのアトリエにあるシンボルと同じだったらしい。それによりお爺さんが作ったものだと証明されたということだ。
レナは机の上に広がったままの地図を指差しながら話を続けた。
「私はアトリエのお爺さんに『木彫り細工の持ち主に心当たりはあるか』と聞いたんだ。するとリングウォルド南街区の民家を尋ねてみるといいって言われて行ってみたんだ。そこには70歳ぐらいの綺麗なお婆さんが住んでいてね。初めて会った私にお茶やお菓子を出してくれて優しくしてくれたよ。いや、優しくしてくれていると勘違いしていた……っていうのが正解かな」
「ん? どういうことだ、お婆さんに何かされたのか?」
「お茶に眠り薬を盛られていたんだ。私が起きた時には民家の地下で拘束されていて、お婆さんから『やっと目覚めてくれましたね。起きて早々申し訳ありませんが、貴女に質問があります』と言われたんだ」
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