見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第205話】本当に求めていたもの

 

 

 

 ゼロとの話し合いを終えた翌日の朝、俺は仲間達とグラハム王を城の会議室に集めた。そしてジャッジメントを使ってザキールから情報を探るためにシンバードに向かわないかと提案した。

 

 

 元々、大陸南で得た情報を大陸北の各国に伝える目的があったから全員俺の意見に賛成してくれた。主目的はこれで決まった訳だが、俺達には大陸南でやらなければならない事がもう1つ残っている、俺は皆に話を持ち掛けた。

 

「みんな、大陸北へ帰る準備は一旦技術者たちに任せて、それ以外の人間にやってもらいたいことがあるんだ。エリーゼさんに会いに行かないか?」

 

 五英雄グラドと一緒に旅をしながら幼い頃のグラハム王を育てたエトルの妹エリーゼ――――手紙によると確かイグノーラの南東にある村で暮らしているはずだ。グラドは遺言に『私が死んだことを伝えてほしい』と書いていたから、今こそ願いを叶えてあげる時だろう。

 

 俺の提案を聞いたグラハム王は複雑な表情をした後、俺にお願いしてきた。

 

「私としては幼少期の育ての親であるエリーゼさんと会って話をしてみたい。だが私もグラッジも魔獣寄せを持つ身だ。迂闊に村へ近づかない方がいいだろうな。あと数日かけて施政の引継ぎを全て終えたら私はイグノーラを離れて千年樹の洞窟で暮らすつもりなのだが、よかったらガラルド殿がエリーゼさんを護衛して千年樹の洞窟まで連れてきて貰えないだろうか?」

 

「ああ、元々そのつもりだから任してくれ。ただ、エリーゼさんを会わせて航海の準備を整えたら、いよいよグラハム王とグラッジとはお別れになっちまうな。正直寂しいぜ」

 

「その時はもう私は王ではないがな。別れの時は気楽にグラハムと呼び捨てにしてくれて構わないぞ。まぁ人里から離れてはしまうが1人ではないから寂しくない。そうだろグラッジ?」

 

 頑張って笑顔を作ったグラハム王はグラッジに問いかける。だが、グラッジは何も言えず黙って俯いていた。

 

 グラッジとは短い期間ながらも幾つもの死闘をくぐり抜けてきた仲だ、きっと俺と同じぐらい寂しい気持ちになっているのだろう。だから俺は気休めになればいいと考え、グラッジへ言葉をかける。

 

「イグノーラとはこれからも政治的に交流があるはずだから時々グラッジ達に会いに行くつもりだ。だからそんな寂しそうな顔をしないでくれよ。それに俺達が旅先でスキルを消すアーティファクトとかを見つけるかもしれないぜ? そうなったら真っ先に魔獣寄せを消しに来てやるさ」

 

「……ありがとうございますガラルドさん。そうですよね、落ち込んでいてもしょうがないですよね。こんな呪われたスキルを持つ僕でも町の皆に銅像を作ってもらえるぐらいに役立つことが出来たんだ。きっと頑張り続ければこの先みんなと楽しく暮らせる方法も見つけられますよね。泥臭く頑張ってみます」

 

「おう! お互い頑張ろうぜ。それじゃあ航海に関する事はシルバーと他の技術者に任せるとして、グラッジとグラハム王は先に千年樹の洞窟で待機しててくれ。俺、リリス、サーシャは10日ぐらいかけてエリーゼさんを千年樹の洞窟に連れて行くよ。よかったらレックも一緒に来るか?」

 

「いよいよ帝国人の俺には関りのない話になってきているが、本当に同行してもいいのか?」

 

「所属が違うだけで、もうレックは俺達の仲間だからな。なるべく情報は共有したいと思ってる」

 

「仲間……か。そうだな、じゃあ俺もお邪魔する事にするよ」

 

 レックは視線を外し小さく微笑みながら呟いた。面と向かって仲間だと言い切るのが俺的に多少照れくささを感じていたが、レックも同じ様な気持ちなのかもしれない。

 

 

 俺達は地図で南東の村の位置を確認した後、明日の出発に備えて各自準備を始める事にした。どうやら村の名前は『リグ』というらしい。イグノーラから歩いて2日くらいの距離だから北にある千年樹の洞窟から離れていくことにはなるものの、そこまで距離が空かずに済みそうだ。

 

 

 

 

 

 

 翌日の朝、千年樹を見学したいと言うゼロを加えた俺たちはリグの村へ行くメンバーを5人に増やし、城を出て南城門へと歩きだす。

 

 道中にはカンカンと像を立てる音や城壁を修復する音が聞こえてきて、街の人々の楽しそうな声も聞こえてくる。

 

 戦争の後にしては随分と柔らかい雰囲気だ。きっと人と人の戦いではなく人と魔獣の戦いだった点が大きいのだろう。それに私欲による戦いではなかったことも影響していそうだ。

 

 道行く人々は俺達を見つけると口々に声を掛けてきた。

 

「いってらっしゃい、ガラルドさーん!」

 

「頭の怪我は大丈夫かい、リリスちゃん?」

 

「今度黒猫を撫でさせてね、サーシャお姉ちゃん」

 

「気を付けて帰ってくるんだよ、レックちゃん」

 

 子供からお年寄りまでまるで家族のように声を掛けてくるのが暖かくてありがたかった。一時は国を挙げて追われていただけに、この変化は嬉しい限りだ。

 

 復興と温かい言葉が飛び交うイグノーラの景色を見たレックは小さく呟く。

 

「俺が本当に求めていたのは皇族としての威厳や実績ではなく、家族の『いってらっしゃい』と『おかえりなさい』なのかもしれないな」

 

 しみじみと語るレックの目は少し涙ぐんでいるように見えた。きっとレックは大きすぎる期待と期待に応えられない現実との間で板挟みになり、自国の民すら味方とは思えなくなっていたのかもしれない。

 

 罪人を逃し、自らも逃げるようにして辿り着いたイグノーラの地で真に求めていたものに気付かせるなんて神様は中々捻くれた存在なのかもしれない。

 

 それでも気づけないよりはずっといい。レックの人生はまだまだこれからだ。俺はレックの肩をポンと叩き、南東を指差す。

 

「昔と違って今のお前なら旅の中でもっと色々なことに気がつけると思うぜ。他人に心を開いてなかった俺がリリスと出会って変われたのと同じようにな。一皮むけたら旅はもっと楽しくなる。まずはリグの村への旅路を楽しもうぜ、久々に一緒に旅が出来るんだしな」

 

「フッ、そうだな」

 

 

 

 俺達は南城門を出て、ひたすら南東へと進んだ。道中手強い魔獣が現れる事もあり、両手が未だに使えない俺は前線には出られなかったが死線をくぐり抜けてきたリリス、サーシャが以前より遥かに強くなった技の数々で難なく敵を蹴散らしてくれた。

 

 俺も含めて全員が見違えるほどに強くなった今なら、どんな凶悪な魔獣でも倒せそうな気がするし、神獣相手でも勝てそうな気がする。

 

 それでもきっと魔人を超える強さを得ることは出来ないのだろう。だからこそ数で勝る人類が協力し合って立ち向かわなければ……。

 

 大陸中の国々と協力し合う未来を夢想しながら歩を進めること2日……俺達は特に何の問題もなく平原を進み続け、レグの村へ到着した。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。

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