見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「お~~、皆さん見てください、凄い数の牛さん、豚さんがいますよ。牧歌的でいい村ですね」
新しい場所へ行った時はもはや定番となってきた、はしゃぐリリスを眺めながら俺達はレグの村を歩いていた。農業と畜産に力を入れている村のようで面積が広く、2階以上ある建物はほとんど見当たらない。
石畳なんて一切なく、道は全て踏み固まって出来ているようだ。人より動物の方が多い田舎っぷりに故郷ディアトイルを重ねていると前方からお爺さんが近づいてきて俺達に声を掛ける。
「お姉さん達、ここらじゃ見ない顔だね。こんな辺鄙な村に何かようかい?」
「私達はエリーゼさんという女性を探しにここまで来たのですが、ご存知ですか?」
「ほう、エリーゼさんのお客人かい。直ぐ近くに家があるから案内してあげよう。あの人は夫も子供もいなくていつも1人で寂しそうにしている。よかったらいっぱい話をしてあげておくれ」
そう言うとお爺さんは俺達に背を向けてエリーゼさんの家まで歩き出した。いよいよエリーゼさんとご対面だ。
グラドの手紙を見せて亡くなったことを知らせるのは気が重いけれど、これも死の山で手紙を読んだ者としての責務だ。
こじんまりとした木造一軒家の入口から鈴を鳴らすと中から70歳前後のお婆さんが現れた。俺はお婆さんに名前を尋ねる。
「はじめまして、俺達は大陸中を旅しているガーランド団という組織の者ですが、貴女がエリーゼさんですか?」
「はい、私がエリーゼです。行商人が運んでくださる新聞でガーランド団の活躍は存じ上げていますよ。そんな有名人が何故レグの村へ?」
やはりお婆さんはエリーゼさんだった。一応グラハム王……いやグラハムの生みの親であるエトルの妹だから少しだけグラハムとグラッジとは血縁関係がある訳だが、見た目的には全然似ていない。
グラハムもグラッジも目が丸々としてて優しい感じだが、エリーゼさんの目元はキリっとしている感じだ。どうやらグラハム王もグラッジも見た目的にはグラドの血を濃く受け継いでいる可能性が高そうだ。
「俺達はイグノーラでの戦争の前にカリギュラや死の山へ行きまして五英雄グラドの事について色々と情報を得ました。詳しくお話したいので中へ入れて頂いてもいいですか?」
「グラドさんの? 分かりました、どうぞこちらへ」
俺達は家の中へ入れてもらい、グラッジとの出会いからグラハムとの接見、カリギュラや死の山での出来事、そしてグラハムの魔獣寄せ発現から戦争に至るまで、手紙も交えながら全てを伝えた。
「うぅ……グラド……さん……」
突然伝えられた訃報にエリーゼさんは膝から崩れ落ち、こちらが心配になる程に泣き続けた。リリスが背中をさすり、時間をかけて落ち着かせるとエリーゼさんは自身の思いを語る。
「グラドさんはずっと人里を避けて旅を続けていたので直接会うのは難しかったとは思いますが、それでも亡くなる前に1度は挨拶しておきたかったです……」
絞り出すような無念の声色に危うく貰い泣きしそうになりながら俺はもう1つの目的について話す。
「今回、俺達がここに来た理由は手紙を渡す事だけではないんです。先程も話した通りグラハムとグラッジは魔獣寄せを発現しています。それ故に2人は人々へ迷惑をかけないように人里から離れた千年樹の洞窟という場所で暮らし始めたのですが、そこへエリーゼさんを案内したいのです。積もる話も色々あるでしょう。俺達は洞窟まで護衛させて頂きます」
「会いたい気持ちはありますが、私がグラハムを育てたのは幼少期だけです。それにローラン家に預けたのは私達なので今更会う資格はないと思いますが……」
「グラハムはもう王という地位を離れて公人ではなくなりました。それにエリーゼさんに会いたいと言ったのはグラハムとグラッジなんです。当の本人が望んでいる事なので遠慮せずに会ってやってください」
エリーゼさんはしばらく悩んだあと涙を拭いて背筋を伸ばす。そして、タンスの中から細長い箱を取り出すと迷いの消えた表情で言い切る。
「分かりました。2人に会いに行きます。何を喋ればいいのか、どんな顔をすればいいのか分かりませんが、ここで泣いているだけでは駄目ですよね。私も打ち明けたい想いがありますし渡したい物もあるんです。なので皆さん、案内と護衛をよろしくお願いします」
何とかエリーゼさんを連れ出せそうでよかった。あとは千年樹の洞窟に行くだけだ。足腰の弱っているエリーゼさんを荷車に乗せて引っ張りながら進んだ俺達はこまめに休憩を挟んで野宿を繰り返し、村から4日かけて千年樹の洞窟へ辿り着いた。
俺はエリーゼさんに肩を貸して荷車から降ろして千年樹の洞窟の中へ入っていったが何故か2人の姿が見当たらない。
もしかして森か海岸あたりに狩りへ出かけているのかもしれない。洞窟の外へ出て周囲を探ってみるとイノシシ型の魔獣ワイルドボアを追いかけまわすグラハムとグラッジの姿があった。
「お父さん、その調子です! そこから右に回り込んで剣を叩きこんで!」
「ハァハァ……もう足が動かな……」
「これから2人で狩りをして暮らしていくんですよ? ここはジッとしていても料理が出てくる城じゃないんですから!」
「それにしたってスパルタ過ぎやしないか? こっちは10年以上執務が中心だったのだぞ? 運動や剣術からは離れていてだな」
「だったら勘を取り戻す特別メニューを考えなきゃいけないですね」
「か、勘弁してくれ……」
仲良く……なのかは分からないが騒がしくしている親子を発見した。どうやらグラハムは野生的な生活にまだ順応できていないようで主導権をグラッジに握られているようだ。元王様としての威厳はどこにもなくて何だか微笑ましい。
エリーゼさんには1番最初に逞しく育ったグラハムとグラッジを見てもらおうと思ったのだが身体中に泥と葉っぱをくっ付けた2人を見せる事になってしまった。
道中ずっと緊張していたエリーゼさんは2人の姿を見てプッと吹きだし呟く。
「フフフッ、グラドさんにそっくりな人が2人もいますね」