見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第236話】牢の風

 

 

 

 航海を終えて、俺達がイグノーラの中に足を踏み入れると、民家から出てきた1人のおじさんが俺達の存在に気がつき、声をあげた。

 

「おぉ! ガーランド団がイグノーラに来てくれたぞ! 皆に知らせろ~!」

 

 おじさんの呼びかけをきっかけに住民がわらわらと駆け付け、俺達を取り囲んだ。

 

 俺達は急いでいると説明したのだが、住民は

 

『こんなに早く遊びに来てくれて嬉しいです!』

 

『うちの店の料理はまだ食べてないだろ? ご馳走するから寄ってきな!』

 

 とこちらの事情はお構いなしで歓迎してくれている。もしかして騒がしくて俺の声が聞こえなかったのだろうか?

 

 何とか人の波を掻き分けて城の方へ進んでいくと、中央広場にソル兵士長の姿を発見した。ソルはこちらを見ると満面の笑みを浮かべて駆け寄ってきた。

 

「ガラルド、サーシャ、グラッジ様ではないか! こんなに早く再会できるとは思ってなかったぞ。ん? もしかしてガラルドが手に持っているそれが例のジャッジメントという代物か?」

 

「ああ、察しがいいなソルさんは。早速で悪いが牢屋にいるザキールのところへ行かせてもらうぞ」

 

 俺が用件を伝えると何故かソルは眉尻を下げて俯いてしまう。ザキールの身に何かあったのかもしれない、聞いてみよう。

 

「何だか渋い顔をしているな、もしかしてザキールは死んじまったのか?」

 

「……死んでいるならまだ良かったかもしれないが……ザキールは……いや、実際に現場を見せてから説明する事にしよう。牢屋まで案内するからついてきてくれ」

 

 そう言うとソルは地下牢に向かって歩き出した。一体ザキールはどうなったのだろうとドキドキしながら歩を進めていると、階段を降りている途中で奥から風が流れてくるのを感じた。

 

 地下牢なのになんで風が流れているんだ? と疑問に思いながらザキールのいたエリアまでくると、そこには信じられない光景が広がっていた。

 

 なんとザキールが居ないのである。そして驚くべき事実はもう1つあり、ザキールが閉じ込められていた牢屋の天井と床が円形にくり抜かれていたのだ。

 

 その穴は直径3メードほどで斜め上45度方向へ一直線に空いており、穴越しに青空が確認できる状態だ。まるで外部から俺のサンド・テンペストでぶち抜いて脱走させたかのような光景だが、よく見てみると抉られた天井の切断面があまりにもツルツルとしている。

 

 この凹凸の無さが意味するのは恐ろしい威力の技で貫通させたという事実だ。俺がレッド・モードでテンペストを放ったとしても城の頑丈な壁や天井をここまで綺麗には破壊できない。

 

 はっきり言って技の練度が違い過ぎる。こんな芸当が可能なのは1人しか思い当たらない……アスタロトの仕業だろう。

 

「教えてくれソルさん。ザキールを脱走させたのはアスタロトだな?」

 

「ああ、正解だ。牢屋の方から突如爆音が聞こえてきて慌てて駆け付けた私の前に男が立っていたんだ。事前に聞いていた通りアスタロトは目の開いていない仮面を被っていてな、すぐにアスタロトだと分かったよ」

 

 ソルは苦々しい顔で溜息を吐いた後、俺達に事の顛末を教えてくれた。

 

 アスタロトは魔術か何かで天井や壁に穴を開けると、すぐにザキールを縛り付けていた拘束具を破壊したそうだ。駆け付けたソルは即座に全力の鎌穿(れんせん)を放ったらしいが、アスタロトは片腕で軽々と防御してみせたという。

 

 木々を抉りながら進むほどに高威力なソルの鎌穿(れんせん)を生身で……しかも、片腕で受け止めるとは。相変わらず化け物じみた強さだ。

 

 それでもソルはめげずにアスタロトに斬りかかったらしいが、腹に重い一撃をもらい、その場に倒れたらしい。その後アスタロトは

 

「ザキールを拷問せず、解剖もしなかったお前達の甘さ……いや、優しさに免じて今回は誰も殺さないでおいてやろう。だが、次の戦争では容赦しない、他の仲間にそう伝えておけ」

 

 と言い放ち、ザキールを連れて去っていったそうだ。

 

「ザキールが連れていかれたことは残念だったが、ソルさん達が無事で本当によかったよ」

 

 俺がそう伝えるとソルは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる。ジャッジメントを使う事は出来なかったが、俺達には他にもやらなければいけない事がある。とりあえず、新国王であるイグニスと謁見して、大陸南の国々のことを聞いておこう。

 

 ソルを加えた俺達はそのまま謁見の間に行きイグニスと面会した。玉座に座っていたイグニスは立ち上がり、俺のところへ駆け寄り手を握ってきた。

 

「ようこそガーランド団、そしてガラルド殿、また会えて嬉しいですぞ。ソルからザキールの件は聞きましたかな?」

 

「ああ、残念だったな。とはいえアスタロトが単身突っ込んで来るなんて分からないし仕方がなかったと思うからあまり気に病まないでくれよ? それより俺達は大陸南の国々と接触したいと思っていてな、実は――――」

 

 俺は大陸北に帰ってから何をしていたか全て話した。イグニスは俺の話を聞き終えると、壁に貼ってある大陸地図を指差しながら話し始める。

 

「なるほど、よく分かりました。我々にも各国との交渉・連絡を手伝わせてくだされ。大陸南は国の数がさほど多くありませんし、東西に幅の広い運河も流れておりますので、東西の沿岸に近い国をリヴァイアサンで移動できるガーランド団に行ってもらいたい。逆に内陸側の国々は我々が交渉にあたりましょう」

 

「ああ、助かるよ。いくら移動の早いリヴァイアサンでも限度はあるし、陸地は進めないからな」

 

「それと1つ助言させてください。かつてゼロの父ワンが祖父サウザンドの組織を襲撃して滅びた街ペアレ……そこの近隣国へ行く際は各国の王に『ワンの愚行』と『帝国リングウォルドがエンドと繋がっていた』ことが記述された『歴史書』を大陸会議へ持ってくるように指示してくだされ。そうすれば大陸会議で帝国に詰め寄る際に大きな武器となるでしょう」

 

 ずっと昔にワンの仕業によってペアレが無くなった時点で帝国とエンドが繋がっていたと証明できる物は何も残っていないと俺は思っていた。だからイグニス王の提案には正直驚かされた。

 

 俺にはペアレの周辺国にまでは考えが及ばなかった、流石はグラハムの後任を務めるだけのことはある。イグニスのアドバイスをありがたく使わせてもらう事にしよう。

 

 各国への訪問の打ち合わせを終えると、次は死の海の渡航について話し合うこととなった。

 

 イグニス曰く『ウンディーネと上手く連携を取り合って航路を定める』作業は順調に進んでいるらしい。あと30日もあれば、俺達が建てた簡易灯台と同じようなものを南から北への海路にも設置できるとのことだ。

 

 これなら大陸会議には余裕で間に合うし、ゆとりを持って大陸南の国々がディアトイルへ来られそうだ。

 

 そして俺達はイグニス王との話し合いを終えて別れの挨拶を交わした後、ゆっくりする事もなくそのままリヴァイアサンの待つ海岸へと向かった。

 

 

 

 

 全員がリヴァイアサンの背にあるモンストル号に乗り込むとサーシャが皆に語り掛ける。

 

「ザキールの件は残念だったけど、イグノーラと有意義な打ち合わせが出来てよかったね。あとは各国との交渉を成功させよう。移動ばかりで大変だけど体調を崩さないように頑張ろうね!」

 

 サーシャの言葉で気合が入った俺達はその後、順調に各国への訪問を済ませていった。訪れた国の中ではイグノーラでの戦争の件を知っていて俺達を英雄のようにもてはやしてくれる国もあれば、外部から来た人間だと煙たがる国もあった。

 

 だけど、根気強く丁寧に説明を続け、訪れた国のほぼ全てから大陸会議への出席を取り付ける事ができた。上手く出席にこぎつける事が出来たのは俺達が頑張ったからというのもあるだろうが、それ以上に死の山を恐れている点が大きいのだろう。

 

 

 

 

 

 

 大陸南での仕事を終えた俺達はドラウの森にいるリリス達を迎えに行く途中でシンバードに寄って報告を済ませた。俺達はシンからは多めに休日を貰い、自由な時間が増えたけれど、結局そのほとんどをドラウの森での修行や研究に費やしていた。

 

 ドラウの森での修行や研究、シンバード領や他国領での仕事、そして大陸会議の準備も着々と進め、気がつけばあっという間にディアトイルへ出発する日が訪れた。

 

 

 

 

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