見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第246話】リリスらしい選択

 

 

 

 リリスの頭痛が少しマシになってきたところでフィアは話の続きを始める。

 

「では、帝国で生まれた私達姉妹の昔話から始めますね。私はリー姉さんと歳が離れていることもあって本当によく可愛がってもらいました。ですが、私は生まれた時から心臓が弱くて、あまり活動的には暮らせませんでした。そんな私を治してあげられる存在になりたいと思ったリー姉さんは神官としての修行を始めたんです」

 

 人の為に動ける優しいリリスが女神となったのだから前世で神官になろうとしたのも納得できる。特に溺愛していた妹の為なら職業の選択すら容易く決定してしまうことだろう。

 

 そしてフィアは神官時代のリリスについて話しを続ける。

 

「神官としてメキメキ力をつけていったリー姉さんは16歳になった頃には帝国でもそれなりに有名な神官となっていました。特に回復魔術に秀でていたのですが、今のリリスさんも似た感じでしょうかガラルドさん?」

 

 フィアは頭痛で喋り辛いであろうリリスを気遣って俺に問いかけてきた。確かにリリスの得意魔術は回復系だし、そこらの神官よりは優秀だと思うが、まさかそんなに若い頃から有名な神官だったとは。

 

 神官にも色々あるが、確か神官という職は平均でも30歳ぐらいでようやく名乗れるようになるケースが多く、狭き門のイメージがある。そう考えるとリリスの前世は相当エリートだ。もしかしたら前世の方が回復魔術に優れていたのかもしれない。

 

 もし、リリスの記憶が完全に戻ったら神官としての勘も取り戻して、使える魔術が増えたりするのだろうか? ついつい期待をしてしまう。

 

 正直リリスには回復魔術よりスキルで助けられたイメージの方が大きいのだけど、とりあえずフィアからの問いに対しては身内へのサービスということで割増しに褒めておこう。

 

「ああ、フィアさんの言う通り今のリリスも回復魔術がとても優秀だよ。そして、後天スキルや攻撃魔術も工夫を凝らして使い、俺達は何度も危機を助けられた。リリスがいなかったら今の俺達はないし、欠かせない存在だ」

 

 俺が褒めるとフィアはこぼれるような笑顔を向けた。しかし、リリスは握っている俺の手に爪を立てて攻撃してきた。リリスの顔を覗き込むと赤面しており、強く握ったのは頭痛ではなく単に恥ずかしがっているからだった。

 

 いつもストレートで素直なリリスにしては珍しい反応だからちょっと面白い。今後も褒めて揶揄ってみようかと悪戯心が芽生えてくる。

 

「やっぱりそうでしたか、妹としては鼻が高いです。それでは次は神官として有名になってきたあたりから話をしましょうか、リー姉さんが有名になったことで帝国の――――」

 

 

 

――――な、何だお前は! どうやってここまで……うわぁぁぁぁ!――――

 

 

 

 フィアが喋っている途中で洞窟の入口側から悲鳴が聞こえてきた。叫んだのは恐らく学者の男で、誰かが侵入してきたようだ。俺はリリスをフィアに預けて、グラッジ、サーシャと共に音のした方へと走る。すると入口には肩にコウモリを乗せ、以前と同じ仮面をつけているアスタロトが立っていた。

 

 逃げ場のない空間で最悪の敵に出会ってしまった……。どうにかして追い返さねば。俺はアスタロトにここへきた理由を尋ねる。

 

「久しぶりだなアスタロト。どうしてお前がここに侵入してきたんだ? 随分とお行儀が悪いじゃないか」

 

「その声と魔力の波動……ガラルドか。ここに来た理由は単純なものさ。大陸会議に来ればお前に会えると思っていたからだ。そして真実を追い求め続けるガラルドを追跡すれば、いずれシリウスに会えると思っていたからな」

 

 アスタロトの1番の目的はシリウスに会う事だったのだろうか? 五英雄であり皇帝アーサーの弟でもあり、身を隠していたシリウスは何かしらの情報や価値を持っているのかもしれない。今の俺にはシリウスの情報と価値に全く見当がつかないが。

 

 それにアスタロトの言った『その声と魔力の波動……ガラルドか』という言葉が気に掛かる。アスタロトは死の山で会った時と同じように仮面を被っており、その仮面には目の穴が空いていない。

 

 もしかしたらアスタロトは聴覚や魔力の波動を視覚代わりにしているのだろうか? 憶測ばかりが俺の脳内を飛び交ってしまう。

 

 だが、今の俺がやるべきことは憶測ではなくアスタロトを止める事だ。俺は再度アスタロトに問いかける。

 

「シリウスと会ってどうするつもりだ? 理由によってはお前を殴ってでも止めなくちゃいけなくなる」

 

「答える義理はない。シリウスは奥にいるのだろう? 止めたければさっさとかかってこい」

 

 冷たく言い捨てたアスタロトは俺達など眼中にないと言わんばかりに奥に向かって歩き始めた。なめるのもいい加減にしろ、と俺の中で闘志が湧き上がってくる。

 

 グラッジも俺と同じように拳を強く握り、アスタロトを睨んでいる。俺達は開幕から全力で魔力を練った。俺はこぶしと足裏に火の回転砂、グラッジは手に氷の槍を持ち、足元に風の短剣を出現させて地面を蹴り出し、一斉にアスタロトへ攻撃を放つ。

 

「レッド・ステップ!」

 

「ウインド・ダッシュ!」

 

 互いが最高速の移動のもと攻撃を繰り出し、火と風と氷の直線がアスタロトの体でクロスした。俺はダメージを与えられたと思ったし、グラッジも手ごたえを感じていたと思うが、当のアスタロトは胸元に強固な魔力を練り上げて難なく俺達の攻撃を防いでしまう。

 

 アスタロトは自身の胸元で炸裂した火と氷のエネルギー噛みしめると、まるで埃でも払うかのように胸をパタパタと払い、何食わぬ顔で再度歩き始めた。

 

 分かってはいたが、やはりアスタロトの強さは異次元だ……。こうなったら奥にいるシリウス達に大声で逃げるように呼び掛けて、しがみついてでも時間を稼ぐしかない。俺は肺に大きく息を吸い込んで叫ぶ。

 

「アスタロトが来たぞ! お前ら全員今すぐ逃げ出せぇぇ!」

 

 俺が叫ぶとアスタロトは焦ったのか「うるさい!」と呟き、俺とグラッジに人間サイズの岩を放出する魔術を唱えた。その質量は見た目とは釣り合わない程に重く、船一隻が高速で飛んできたかのような衝撃だった。

 

 俺とグラッジはなすすべなく岩ごと壁に叩きつけられる。

 

「グハッ!」

 

「うわぁっ!」

 

 壁にめり込んだ俺とグラッジを尻目にアスタロトは駆け足で奥に行ってしまった。頭をぶつけて揺らされた衝撃で視界が揺らぐ。目には血が流れてきているが、それでも早くリリス達の元へ向かわなければ……俺は全身に魔力を漲らせて、強引に岩を弾き飛ばす。

 

 そして、グラッジに被さった岩も横から衝撃を加えて弾き飛ばし、グラッジを引っ張り出した。グラッジも俺と同じく頭から血を流しているが、それでも心は折れていない……早速俺達2人は奥の部屋へと走り出す。

 

 

 

 奥に着くと、そこには頭痛で苦しんでいるリリスを守ろうとしているシリウスとフィア、そして3人を黙って見つめるアスタロトの姿があった。アスタロトは後ろを向いて俺とグラッジを確認すると、嬉しそうな声で話し始める。

 

「もう復活したか、死の山で対峙した時よりも随分と強くなったようだな。それにシリウスも元気そうで何よりだ。ガラルドが叫んだ瞬間逃げられると思って焦ってしまったぞ。だが幸運なことにここが行き止まりのようだな。これでゆっくり話ができる」

 

 

 

 

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