見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「なぁディザール。俺から1つ提案があるんだ。俺とディザールの人生がガラッと変わってしまうような提案なんだが聞いてくれるか?」
改まって尋ねるグラドに対し、困惑した様子のディザールは少し強がった笑いを浮かべて言葉を返す。
「グラドにしてはいつになく真剣じゃないか。まぁ聞くだけならタダだし聞いてやるよ」
「ギテシンの採取が終わったら俺と一緒に村を出ないか?」
突然の提案にディザールは目を見開いて驚いている。しかし、一番動揺しているのはシルフィだった。ディザールの返答次第では親友二人が一斉に自分の前からいなくなってしまうのだから当然と言えば当然か。
ディザールは少し考えこんだあと、理由を尋ねる。
「居心地の悪い僕が出て行くのなら分かるが、どうしてグラドも出ていくんだ? そもそも、村を出てどこに行くんだ?」
「どこに行くかはまだはっきりとは決めてないな。とりあえず俺達の一番の売りは強さだからイグノーラで兵士やハンターになろうかと考えてる。あそこは近辺じゃ一番大きい街だからな。それと俺が出て行く理由だが……」
グラドは言葉を詰まらせると何やら言い辛そうに頬をポリポリと掻きはじめる。
「目の見えるようになったディザールと色々なところを旅したいと思ってる、やっぱり何をするにしてもお前と一緒の方が楽しいしな。今までは目の見えないディザールと旅をするのは難しいと思って言いだせなかったが俺は外の世界に興味があるんだ。それに他国の人間であるシリウスとリーファから色々な国の話を聞いてたらうずうずしてきたし、こんな風に仲良くなれる友達が外の世界にいっぱいいるのかと考えると、早く会いに行きたくて堪らないんだ」
「フッ、好奇心の塊であるグラドらしい理由だな。そこまで言うならついて行ってやるよ。お前一人じゃ危なっかしいからな。だけど一つだけ条件がある。それは『旅をしながらリーファの左目を治す方法を探す』ことだ。元々僕の左目と交換する形でリーファの左目が見えなくなってしまった訳だからな。恩は必ず返したい」
「ああ、元々そのつもりだ。それじゃあ改めてこれからよろしくな兄弟!」
グラドは今日一番の弾ける笑顔を見せると、握手を求めて手を差し出した。ディザールは微笑を浮かべ、肩をすくめて小言を呟く。
「握手だなんて大袈裟な奴だな。まぁ一応大事な決定をした訳だし握ってやるか」
ディザールが手を握ると二人は悪戯っぽい笑みを向け合う。そんな二人を微笑ましく眺めていたシリウスとリーファだったが、シルフィはだけは違った。シルフィは頬を風船のように膨らませると、握手を交わす二人の手の上に自身の手を置き、不満を語る。
「私の事はほったらかしで二人だけで決めちゃうなんてズルいよ。私も二人の旅について行くからね?」
珍しく拗ねるシルフィを見て、ディザールが慌てて言葉を返す。
「ち、違うんだシルフィ。仲間外れにするつもりなんてなかったんだ。ただ、魔獣が蔓延るこの時代、外の世界はどんな危険が待っているか分からない。優秀な魔術師だが、華奢で非力なシルフィは村でいた方がいいと思うぞ」
「リーファちゃん達がきてから私も随分逞しくなったと思うよ? 魔獣の討伐だってグラドとディザールには劣るけど、結構な数を倒してきたし問題ないよ」
「うぅ~ん、でもなぁ……」
「仮に二人が私を置いて行ったら私一人でも村を出て二人を追いかけるからね? そしたらきっと私は危険だろうなぁ~。それならいっそのこと最初から私を連れて行った方がいいと思うよ?」
「ぐっ……気弱で大人しかったシルフィが随分と強気になったもんだな……多分リーファ……いや、悪い友達が出来たせいだろうな。仕方ない、ついてきたければついてこい。僕がシルフィを守ってやる」
「やったぁ! ディザールなら分かってくれると思ったよ!」
押されるディザールと押すシルフィを見ていると何だか、サーシャと俺を見ているようだ。パープルズにいた頃のサーシャはとても気弱で大人しいイメージだったが、俺達の仲間になって自分をさらけ出せるようになったら言いたいことをズバズバと言えるようになっていたからだ。
居場所を見つけるというのは変わること、もしくは自分をさらけ出せるようになることと同義なのかもしれない。シルフィが楽しそうで見ている俺も嬉しくなってきた。一方悪い友達に認定されたリーファはジットリとした目でディザールを見つめているが……。
これで話し合いは終わって後は寝るだけなのだが、何かを考えこんでいたシリウスがグラドに質問を投げかける。
「グラドに聞きたいんだが、さっきは何でディザールに『村が好きか? 村人が好きか?』なんて分かりきっている質問をしたんだ? それにキャンプへ誘った理由も知りたい、本当に遊びたかっただけなのか?」
真剣な眼差しで聞いてくるシリウスに気圧されたグラドは頭を掻きながら渋々理由を話し始める。
「ディザールを旅に誘う為の会話の掴みにしたかったのもあるが、ディザールがどれくらい村人の事を苦手に思っているかを知っておきたかったんだ。結果としては俺の予想通り自然は好きだが苦手な人が多いという答えになったが、それでもペッコ村は俺達にとって故郷だ、それは何があっても覆らない」
「ああ、その通りだな。ってことは一日遊ぼうと提案したのは……」
「故郷の楽しい思い出を一つぐらいは刻んでおきたいと思ったんだ。目が見えるようになってからのペッコ村の風景が全て嫌なものだったならディザールは故郷を嫌いになってしまうと思ってな。だから最高の一日を最高の五人がいるうちに味わっておきたかった。リーファとシリウスはもうすぐ大陸北へ帰ってしまうからな」
グラドは一見豪快そうに見えて、とても思慮深い人間だ。記憶の水晶で見るグラドと死の山の手紙で知ったグラドの人物像に最初は乖離があるように思えたが、今はもうしっかりと繋がっている。グラド程優しい男はきっといないだろう。
ディザールはこの時どんな顔をしていたのだろうか? グラドからも俺のいる位置からも背中を向けていて確認できないけれど、きっと友人の優しさを噛みしめて笑顔か照れた困り顔を浮かべているのだろう。
後に五英雄と呼ばれる五人が友情を深め合った夜はゆっくりと更けていった。