見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

260 / 458
【第260話】浄魔のネックレス

 

 

 

 後の五英雄となる5人が童心に帰って遊びつくした翌日、丘にあるキャンプ場を片付けたグラド達は早速村へ帰り、そのまま村長の家へと向かった。

 

 グラド達が玄関の前に来たのを確認した村長は血相を変えて階段を降り、扉を開ける。

 

「お前達! 昨日は一日中どこへ行ってたんだ! 村にも狩場にも姿が見えなくて心配したのだぞ!」

 

 皆がバツの悪そうな中、グラドが前に出て真っ先に頭を下げて謝り始める。

 

「すまない村長。俺が半ば強引に4人を連れ出したんだ。理由を説明したり、今後の事も話したいから一旦家の中に入れてくれないか?」

 

「今後の事? まぁいい、とりあえず中に入れ」

 

 村長はまるで門限を守らなかった子供を叱るように険しい顔をしているが、それだけグラド達のことを大切に思っているのだろう。だから口論が達者なディザールでも言い返さないのだと思う。

 

 村長の後をついていき、全員が客間に座ると早速グラドが昨日の事を話し始める。

 

「まずは謝らないとな、ごめんな村長。俺が皆を連れ出したのは訳があって実は――――」

 

 村人のディザールへの接し方、村を出て行きたいこと、最後に思い出を作ってあげたかったこと、グラドは全てを丁寧に気持ちを込めて伝えた。

 

 最初の方は険しい顔をしていた村長も話が進むにつれて眉尻を下げて理解ある頷きを返してくれるようになっていた。グラドから全ての話を聞いた村長は胡坐をかいた両膝に手を置き、グラドの意見に応える。

 

「お前達の気持ちはよく分かった。グラド達が村から居なくなるのは大きな痛手だが仕方がない。若者はいつだって夢を持ち、羽ばたいていくものだからな。お前達が村を出て行くことを許可しよう。ディザールとシルフィのことをしっかり守ってやるのだぞ、グラドよ」

 

「ああ、もちろんだ。ありがとな村長。外の世界でも頑張ってくるよ」

 

「ワシに礼を言われる筋合いなんてないさ。お前達に不満を抱かせてしまう村を作り上げてしまったのはワシなのじゃからな。特にディザールには居心地の悪い村にしてしまって本当に申し訳ないと思っている。改めて謝らせてくれ。すまなかった、ディザール」

 

 ディザールが嫌いになるような差別的な人間がペッコ村には沢山いた訳だが、少なくとも村長は本当に人間ができているようだ。頭を下げる村長を見て、ディザールは申し訳なさそうな顔をしながらフォローを入れる。

 

「別に苦手な奴らがいて、外の世界に興味があるから出て行くだけだ。それ以上でも、それ以下でもないさ。村長は全く悪くないし、むしろ僕は村長の事を尊敬していて親代わりのように思っているよ。だから謝らないで笑顔で送り出しておくれ」

 

「親代わり……そうか、こんなワシには勿体ない言葉だな。だが、ディザールがそう言ってくれるなら笑顔で元気に送り出そう、ありがとなディザール。そうじゃ! 旅立つディザールにワシからちょっとしたプレゼントをやろう。ちょっと待っといてくれ」

 

 そう告げると村長は奥の部屋に行ってガサゴソと何かを取り出し始めた。奥の部屋から戻ってくると机の上にネックレスを置いて説明する。

 

「大陸北から来たシリウス殿とリーファ殿はこのネックレスを知らないだろうから説明させてもらう。このネックレスは浄魔(じょうま)のネックレスという代物でな。体内のあらゆる毒をゆっくりとゆっくりと浄化してくれる効果があるのじゃよ。これをディザールに貰ってほしい」

 

 何だか説明を聞く限り希少な物のように思える。実際、グラドもシルフィも浄魔(じょうま)のネックレスを差し出している事にかなり驚いている。ディザールも同様でネックレスを村長の方へ押し出すと首を横に振って貰うのを拒んでいた。

 

「いくら何でも浄魔(じょうま)のネックレスは貰えないぞ。これは村長にとって家宝みたいなものだ。村長が病気になった時も四六時中浄魔(じょうま)のネックレスを付けることで治せたじゃないか。村長が大事に持っておいてくれよ」

 

「いいや、何が何でもディザールに貰ってもらうぞ。そもそもディザールが目を悪くしたのも魔獣の毒に侵された後、迅速な処置が出来なかったことが原因だ。ワシはその時の反省を活かして村に医者と治癒術師を増やし、守り人の育成にも力を入れ始める事が出来た。逆に言えば対応がもっと早ければディザールの目も悪くならなかったし、ディザールの両親も……」

 

 そこまで言って村長は言葉を詰まらせる。どうやら村長は過去にディザールの人生を左右する失敗をしてしまい今も引きずっているようだ。

 

 村や町の運営なんて何かに力を入れれば別の何かが疎かになってしまうものだ。ましてや村長の職務なんて手本が少なく手法が確立されていないものなのだから気にし過ぎないでほしいものだが、中々そうはいかないのだろう。俺だってシンやサーシャ程ではないけれど施政に関わる者として多少は気持ちが分かる。

 

 浄魔(じょうま)のネックレスを前にして困り顔なディザールに対し、村長は更に言葉を続ける。

 

「まぁ色々と言葉を並べはしたが、結局ワシが言いたいのはディザールに元気でいて欲しいということじゃ。ディザールがワシを親代わりと思ってくれている様にワシもディザールを息子や孫のように思っておるからな」

 

 村長の言葉をきっかけにディザールの顔から迷いが消えた。ディザールは勢いよく浄魔(じょうま)のネックレスを手に掴むと、早速自分の首にかけて宣言する。

 

「村長の気持ちはよく分かったよ。僕は浄魔(じょうま)のネックレスと共に外で活躍してみせる。そして村に帰ってきた時には何か大きな手土産を持ってこられるように頑張るよ。ありがとう村長」

 

「ああ、楽しみにしておるぞ」

 

 ディザールにとって村の中での大切な存在が、グラドとシルフィだけじゃなくて本当によかった。これから先ディザールがアスタロトとなり、どう歪んでいくのか分からないが根底に人の心と善の心があるのなら奴の野望を止められる時がくるかもしれない。

 

 5人はその後も村長と楽しく雑談を続けて、一緒に食事を交わし、今晩に訪れる満月の刻……ギテシンが咲く夜の時間を待ち続けた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。