見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
イグノーラに到着したグラド、ディザール、シルフィ、リーファ、シリウスの5人は大きな城壁を見上げていた。少し前に訪れたばかりのシリウスとリーファですら未だに大きすぎる城壁を見慣れていないようだ。
そんな状況の中、1番最初に口を開いたのはグラドだった。
「だいぶ前にイグノーラに来た事はあるが、やっぱりいつ見ても圧倒されるなぁ。たしか俺の両親が生きている頃に初めてイグノーラへ連れてきてもらって、その時に冒険心を刺激されたんだよなぁ。外の世界には色々な町や不思議な場所がいっぱいあるに違いない! ってな。目が見えるようになってから立て続けに刺激的なものを見続けているディザールは楽し過ぎて心臓がはち切れるんじゃないか?」
「万年子供のグラドと一緒にしないでくれ……と言いたいところだが、確かに目が見えるようになってから色々な物を見るのが楽しくて仕方ないよ。いま眺めているイグノーラの情景も、どんな言葉で表現すればいいか全く分からない」
弾んだ声で答えるディザールを見ていると俺の方まで嬉しくなってくる。ディザールの未来を思う度に辛くなってくるけれど、記憶の水晶の映像を眺めている今だけはアスタロトではなくディザールとして見守りたい。時代は違うけれど共にイグノーラの風景に感動した同士なのだから。
それにしても気になるのがグラドの言葉だ。グラドは『俺の両親がまだ生きている頃に』と言っていたが、一体いつ頃亡くなったのだろうか? 俺は映像を眺めているシリウスに尋ねる。
「シリウスさんはグラドの両親がいつ亡くなったのか知っているか?」
「確かグラドが9歳の頃に亡くなったと聞いたかな。だからグラドにとっても村長は親代わりみたいなものだと言っていたよ。とはいえグラドは小さい頃から大人顔負けに逞しく強い男だったようだから、ほとんど自分の力だけで生活できていたようだけどね」
記憶の水晶が映し出したグラドの家を思い出してみると確かに1人暮らしにしては大きすぎる家だった気がする。きっと両親と一緒に暮らしていた家で1人暮らしていたのだろう。
そういう意味では親友のディザールとシルフィはグラドにとって家族のいない寂しさを埋めてくれる存在だったのかもしれない。
そんな事を考えている内に5人は城壁を超えて街の中へと入っていった。グラドは周りを見渡してイグノーラ城を発見し、今後の行動について話し始める。
「よし、じゃあ早速これからの行動を決めちまおうぜ。俺とディザールとシルフィはとりあえず城に行って仕事の相談をしてくる。守り人としての経歴と
「僕達はひとまず帝国の船員達と合流するつもりだ。恐らく大陸北へ帰る手段を確立する為に海洋・漁業ギルドで頑張っているはずだからな。一通り話がついたらグラド達に合流したいから2時間後に城の前の広場へ集合することにしよう」
「分かった、じゃあ一旦解散だな。良い報告が聞けることを祈ってるぜ、シリウス、リーファ」
そう言って5人は2つのグループに分かれた。そこから記憶の水晶が映し出す映像は一時的にシリウスを中心とした視点へと移る。2人は一直線に海洋・漁業ギルドへ向かうと、そこにはギルド長と話し合っている帝国船員の姿があった。
若い男の船員はシリウスを見つけると駆け寄ってきて一同の無事を喜んだ。
「ご無事でしたかシリウス様。最近どこもかしこも魔獣が活性化していますからね。南の方は大丈夫なのだろうかと心配しておりました。それで、リーファ殿の目的とシリウス様の目的は果たせそうですか?」
「うむ、とりあえずリーファの目的であるギテシンは無事入手する事が出来たぞ。僕の目的に関しては……まぁ、それなりだな。そもそも僕は目的自体が多いから短い期間で達成できるとは思っていない。地道にやっていくさ」
船員の問いに対してシリウスは言葉を濁しているが、当時のシリウスの目的は一体何だったのだろうか? 一緒に映像を見ている現代のシリウスに尋ねようかと思ったが、話している間に映像が進んでしまうから後で尋ねる事にしよう。
過去のシリウスは自身の報告を終えると、今度は船員に帰還計画の進捗を尋ねる。
「ところでお前達の方はどうなんだ? 死の海を越えて帰る目途は立ちそうか?」
「近辺の海域に詳しい海洋・漁業ギルドの長と話し合ったところ、安全に帰還すること自体は可能ですが、時間がかなりかかるらしいです」
「時間がかかる? 船の修理がそんなに大変なのか?」
「船の修理の事もありますが、1番厄介なのは海流ですね。死の海は北から南へ行くのと、南から北へ行くのとでは真逆の性質があるのです。北から南へ行く場合は海流の関係上後戻りはできませんが海流自体は荒いもののシンプルで航海にかかる時間は短いのです」
「ということは南から北に進む場合は後戻りこそ出来るものの海流が複雑で時間がかかる訳か」
「ええ、その通りです。最終的には補給無しで死の海を渡り切らなければいけませんから何度も死の海とイグノーラを行き来して海流を地図に細かくメモし、航路を作り上げなければなりません。もしかしたら年単位の時間がかかる可能性も……」
「なるほどな。まぁ長い時間がかかる可能性も考えていたから問題はない、地道にやっていこう。リーファの妹の心臓の病気はまだまだタイムリミットがあるはずだからな、そうだろリーファ?」
「うん、10年以上かけてじっくりと蝕んでいく心臓の病だから時間的には大丈夫だよ。フィアちゃんには悪いけど、もう少しだけ待ってもらうよ。大規模な帰還計画だから焦るのもよくないし」
冷静に語るリーファだったが、その表情は暗く沈んでいた。本当なら1日でも早く帰還して治療してやりたいはずだ。俺は『未来のフィアは元気に暮らしているぞ』と過去のリーファに声を掛けてやりたくなっていた。
「さあ、ひとまず帰還の進捗は把握できた。まだしばらく大陸南から出られそうにないからグラド達との別れはまだまだ先になりそうだな。とりあえずイグノーラ城前の広場へ行こうリーファ」
シリウスは声を掛け、落ち込むリーファの背中をポンッと押し、3人と合流するべく広場へと向かった。