見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
シリウスとリーファは船員からの報告を聞き終え、イグノーラ城前の広場へ向かった。すると、約束の時刻まではまだまだ時間があるにも関わらず広場には既にグラド、ディザール、シルフィの3人が待っていた。
リーファはグラドに駆け寄って早速声を掛ける。
「3人とも随分早いね。兵士かハンターとして働けることになった?」
「ああ、順調すぎるぐらい順調だったぞ。本来なら兵士かハンターどちらかの仕事しかさせてもらえないはずなんだが、
全く略せていないし、その名前だと兵士を狩る存在になってしまうのでは? と心の中でツッコミを入れているとディザールも同じことを考えていた。
「全然略せていないし、それだと兵士をハントすることになってしまうじゃないか……まぁグラドの馬鹿な発言は聞き流してくれ。グラドは
「え? じゃあ何が決め手になったの?」
リーファが尋ねると、ディザールは肩をすくめて答える。
「恐らく面接を兼ねた兵士長との模擬試合が上手くいったからだな。グラドが一撃で兵士長を倒してみせたんだ。兵士長は器が大きい人だからよかったものの、相手によっては面目丸つぶれにされたと怒って働き辛くなっていたところだぞ……。この馬鹿には、もう少し世渡りを勉強してほしいところだ」
「誰が馬鹿だよ! そもそも不愛想なディザールにだけは言われたくないぞ。俺のチャーミングな笑顔と強さがあったからこそ兵士長は認めてくれたんだよ。一撃で倒したことだって問題ないさ」
グラドとディザールはまたいつものように小言を言い合っている、相変わらず仲が良いようだ。それにしてもグラドの強さは相当なものだ。この時代の兵士長がどれほどの強さを持っているのか分からないが肩書がある以上かなりの腕を持つはずだ。
もし兵士長が現代のソル兵士長と同等の力を持っているなら、この頃からグラドは化け物じみた力を持っていたことになりそうだ。
それからシリウスが帰還に関する話を始め、丁度伝え終わったタイミングで城の方から1人の兵士がグラドの元へと駆け寄ってきた。兵士は乱れた息を整えるとキレのいい敬礼と共に言葉を伝える。
「グラド殿とお仲間の方々。イグノーラの王グノシス・ローラン様がお呼びです。お時間がありましたら謁見の間へお越し頂けますでしょうか?」
王様直々の呼び出しとは一体何だろうか? 俺と同じように疑問を持った5人は兵士の伝言に従って直ぐに謁見の間へと向かう。
謁見の間では玉座に王様が座っており、グラド達の顔を見るとすぐさま席から立ち上がり駆け寄ってきた。王はグラド達の手を両手で握ると自己紹介を始める。
「おぉ~、早速来てくれたようじゃな。ワシの名はグノシス・ローラン――――イグノーラの王じゃ。おぬしらに頼みたいことがあって、兵に伝言を頼んだのじゃ」
グノシス王は整った髭と凛々しい顔から滲み出る高貴なオーラとは裏腹にかなり気さくな王様のようだ。見た目的には現代のイグノーラ王イグニスを20歳ぐらい老けさせたような感じだ。家名的にも恐らく祖先なのだろう。
玉座から駆け寄ってきて手を握られた5人はかなり面を喰らっており、近くにいた大臣も「王よ、もう少し王族としての威厳を持ってください。玉座にしっかりと腰を据えて堂々と迎えてもらわないと……」とボヤいている。グノシスは渋々玉座へと戻って謝った。
「ああ、大臣の言う通りじゃ。つい興奮してしまってな、すまぬ。で、おぬしらに頼みたい事が色々あってな。ドラゴンの討伐遠征とイグノーラ軍の剣術・魔術の教育係、その両方を務めてほしいと思っておる」
どうやら兵士長を一撃で倒したグラドの噂に加えて、ディザールやシルフィの優秀さも広がっているようだ。もはや兵士とハンターの兼業どころの話ではなくなっている。
その後もグノシス王はグラド達への資金援助は惜しまないと宣言するただけでなく、リーファとシリウスの帰還についても極力面倒をみると約束してくれた。
とは言ってもタダで帰還の手伝いをする訳ではなく、リーファとシリウスにもグラド達に似た働きを要求する、いわゆる交換条件のような感じだ。
グノシス王と5人はお互いに喜んでいて側近の者達も笑顔を浮かべていた。しかし、一部の人間、特に大臣は渋い顔をしていて「よそ者に大事な国の資金を……」と、またもやぼやいている。
王と大臣はあまり仲がよくないのだろうか? 歓迎の空間で唯一、大臣たちの態度だけが気に掛かった。
少し気になる空気感はあったけれど話は順調に進み、5人は互いに目を見合わせて頷き合った。破格の条件を前にグラドが代表して承諾とお礼の言葉を返す。
「ありがとうございます、グノシス王。その仕事、謹んでお受けいたします。早速、今から兵士達のところへ行った方がよいでしょうか?」
「そうか受けてくれるか、礼を言うぞ、5人の新星よ。仕事を始めるタイミングだが、今日は急な誘いとなってしまった、ゆえに明日からで構わぬぞ。それより後で個人的に大事な話がしたい。護衛の兵士に話は通しておくから、1時間後に5人でワシの部屋へ来てくれぬか?」
グノシス王は何故か途中からグラドに達にだけ聞こえるように小声で話し、部屋へ勧誘していた。コソコソとした態度に疑問を抱いた5人だったが、特に断る理由もないので王の誘いを承諾し、この場は解散となった。
5人が謁見の間を出ると、グラドはニタニタとだらしない笑顔で感想を語る。
「いや~、まさかこんなにもトントン拍子でいくとはなぁ。今まで修行を頑張ってきた甲斐があったぜ。きっと給料もいっぱい貰えるんだろうな。ディザールは纏まった金が入ったら何か買いたいものはあるか?」
「僕はグラドみたいに肩書と金に浮つく男じゃない。だから貯金するつもりだ。長い人生いつ病気になったり、大金が必要になるか分からないからな。って、そんな事はどうでもいいんだよ! グラドは謁見の間の空気が気にならなかったのか? フレンドリーな王とは対照的に大臣たちが嫌な目線を向けていただろ?」
「そうだな、あからさまに俺達やグノシス王をよく思ってなさそうだったな。でも、気にしてもしょうがないんじゃないか? 人間なんて誰かしらに嫌われるし、誰かしらを嫌いになるもんだよ」
「そんな単純な話ならいいが……、まぁ、そのあたりの詳細は王の私室で尋ねてみよう。人の良さそうなグノシス王なら何かしら答えてくれるだろう」
少し気になる点を抱えながらグラド達は約束の時間まで待ち続け、グノシス王の私室へと向かった。