見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
グノシス・ローランに忠誠を誓い、懸命に働き続けたグラド、ディザール、シルフィ、リーファ、シリウスの5人は着々と知名度と功績を伸ばしつつ大陸北への帰還準備も進めていた。
グラドは剣聖、ディザールは大魔導士と呼ばれる程にイグノーラ内外から人気を集めており、かつて英雄・勇者と呼ばれていた歴代の戦士達を遠い過去のものとしてしまうレベルで多くの魔獣を討伐していた。
回復魔術に長けたシルフィとリーファは兵団だけでなく教会からも声を掛けられ、多くの者を救い、沢山の治癒術師たちを育てて導いた。その結果、過去500年で20名しか名を刻まれていないイグノーラ教会の石碑に名を刻まれていた。
シリウスは他の4人と比べて、帰還計画に携わっている時間が多かったから知名度では劣るものの、帝国の造船技術・建築技術など多くの知恵をイグノーラに提供したことで技術者からの人望が厚かった。
とはいえ魔獣退治に関わっていた時間が短いせいで子供からの人気は他の4人と比べると低めになってしまい、本人は少し愚痴をこぼしているみたいだ。
そんな5人の活躍は僅か半年ほどで積み上げたものだというのだから驚きだ。俺達が仮に50年前のイグノーラを訪れたとしても彼らほどの活躍は出来なかっただろう。
改めて5人の凄さを感じながら記憶の水晶が映し出す映像を眺めていると、5人が英雄と称えられる1番のきっかけとなった事件が起きることとなる。
それは1番最初の魔人ディアボロスの襲来だ。ディアボロスはグラド達の活躍によって平和な時を過ごしていたイグノーラに突如大量の魔獣を送り込んだのだ。
かつてザキールが率いた魔獣群と同等か、それ以上の数がイグノーラを襲い、国中が震えることとなった。だが、この半年間ですっかり逞しくなった5人と英雄に鍛えあげられた兵士達は魔獣群を前にしても落ち着いている。
彼らを率いていた代表のグラドは英雄に相応しい猛々しい掛け声をあげる。
「我が最強のイグノーラ軍ならば、視界を埋め尽くすほどの魔獣が襲いかかろうとも恐れる必要はない! 街への侵入を防ぎ、魔獣を減らすことに集中しろ! 魔獣群の中心で空を飛んでいる赤黒い人型のコウモリは俺達5人が討伐する! 全員生きて帰るぞ!」
――――ワアアアアァァァァァ――――
グラドの掛け声と共に戦争が始まった。ザキールの時とは違い、国が乱れていないおかげで民衆を含む戦士たちはあまり動揺していないようだ。常日頃から有事に備えておいたことに加えて、5人へ絶対的な信頼を寄せているのだろう。
映像とは思えないほどに目の回りそうな激しい戦争を眺めていると、遠くに見えていたディアボロスがゆっくりとイグノーラ南の平原へ降り立った。
本ではなく立体的に見るディアボロスはザキールとは対照的に赤と黒を基調とした肌をしており、ザキール以上に立派なコウモリ型の羽を有している。
真っ黒な羊の角に似た角を2本生やした頭部と鋭い犬歯はザキールよりも禍々しく見える。言い方を変えればザキールが人間寄りの魔人、ディアボロスが魔獣寄りの魔人に見えるといったところか。
ディアボロスは地面に降り立つと早速目の前にいるグラド達に話しかける。
「お前らが噂の5人組グラド、ディザール、シリウス、リーファ、シルフィか……特にそこのグラドという奴の強さはよく耳にする。先に私の名を名乗っておこう。私の名はディアボロス、魔獣群を纏める最強の種族『魔人』の1人だ。悪いがイグノーラとお前らは我々にとって邪魔な存在だ、消えてもらうぞ」
魔人が人語を話す事を知らなかった5人はディアボロスの言葉に驚いている。だが、魔人が言葉を話す事を知っている俺からすると1番印象深かいのは魔力の強さだ。
目の前にいるディアボロスの魔力はグラド達5人とまとめて戦っても勝てるかどうか分からない程に強そうだ。歴史書を読んでグラド達が勝つことは分かっている分、どのように勝利をおさめるのか気になるところだ。
凄まじい魔力を放つディアボロスに気圧されていた面々だが、こんな時でもグラドだけは表情を崩さなかった。
それは自分の強さに自身があるからか、それとも代表として士気を下げない為に強がっているのか……どちらか分からないが恐らく後者だろう。何故ならリーダーとして強がってきた俺と同じ匂いを感じるからだ。
グラドは皆より数歩前に出ると、剣をディアボロスに向けて宣言する。
「最強……か。随分と自信があるようだが俺達だって負けるつもりはないぜ? 本当は戦いなんてしたくないが人間を襲い、魔獣を操っている以上放っておく訳にはいかない。倒させてもらうぞ、ディアボロス!」
そこからは息をするのも忘れるような激闘が繰り広げられることとなった。前衛をグラド、シリウスが務めてディアボロスを剣で攻撃し、中衛からディザールが攻撃魔術と強化魔術で援護にまわる。
ディアボロスは素手と火属性魔術のシンプルな攻撃しかしてこない奴だったが、どれも必殺級の威力を誇っていた。頑丈なグラドとシリウスが何度も血を吐く程にダメージを負っている。
前衛の2人の内、1人がダメージを負うと後衛にいるリーファとシルフィが回復して、前衛にはディザールが代理で入るような形を取り、頻繁にロールの変わる戦略的な戦いが続く。
周りにいた兵士や魔獣はとてもじゃないが加勢できる状況ではない。ディアボロスと5人が戦っている平原は魔術と爆音に支配され、おぞましい数のクレーターができあがる。
戦いは1時間以上続いており、グラド達が戦っている場所を除く北・東・西エリアの戦闘はイグノーラ側の勝利で終わったようだ。あとはグラド達が勝てるかどうかでイグノーラの運命が決まる。
「ハァハァ……しつこい人間どもめ、さっさとお前ら5人の首を落とさせろ」
肩で息をしながら降参を促すディアボロスに対し、グラドが別エリアを指差しながら言葉を返す。
「ハァハァ……そっちこそ早く諦めたらどうだ? ほら、みて見ろよ。もう魔獣群は南エリアしか機能していないぞ?」
「黙れ、戦争で我々が負けたことは自覚している。だが、せめてお前ら5人だけは殺さなければいけないのだ。お前らが表に出てきて以降、イグノーラは見違える程に強くなってしまった。このまま放っておけば我々の脅威となる。私の命に代えてもお前らの首を持って帰る!」
「ん? 『私の命に代えてもお前らの首を持って帰る』だと? って事はディアボロス以上に偉い魔人がいるってことか?」
「……答える義理はない。それにお前らはここで死ぬんだ、知ったところで意味はない。さぁ剣を構えろ、さっさと決着をつけるぞ!」
そう告げるとディアボロスは血の滴る腕を顔の前まで上げて構える。同じように消耗している5人も武器を構えると6人は叫びながら前進し、最後の力を振り絞って衝突する。