見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第310話】ローブの追跡者

 

 

 

「ふわぁ~、歩いているだけで本当に楽しい街だなぁ。歌なんて歌えないのに一緒に歌いたくなってくるよ」

 

 シルフィは音楽の街カンタービレのメインストリートをキョロキョロ見回しながらひとり言を呟き歩いている。

 

 故郷ディアトイルから比較的近い場所にある大きな街だが俺は訪れた事がない。おかげで記憶の水晶を経由して見ているだけなのに観光しているようで楽しい。

 

 シルフィは食糧を買い込んだり、アジトの研究で使う素材などを買っている。時々足を止めて街の音楽を鑑賞したりしていてとても楽しそうだ。

 

 そんな楽しい空間を2時間ほど堪能して一通り買い物を終えたシルフィが突然周囲を警戒し始めた。視線を物陰や建物の屋上に動かしている様子からも尾行の気配を感じているように見える。

 

「う~ん、このままじゃ埒が明かないなぁ。人通りのない路地裏に行ってみようかな……」

 

 やはり、シルフィは尾行の気配を感じているようだ。だが、流石は五英雄と言うべきか、わざわざ危険な路地裏に行って相手をあぶり出そうとするなんて。全く敵の強さを恐れていないようだ。

 

 シルフィが路地裏を進み、高い建物に囲まれた行き止まりの場所に着くとローブを羽織ってフードで顔を隠した人物が物陰から姿を現わした。

 

 その人物はシルフィと同じぐらいの背丈でローブを羽織っていても細身だと分かる体格だ。お世辞にも強そうに見えない。

 

 早速シルフィはローブの人物に問いかける。

 

「貴方はさっきから私を尾行していたようですが、何か御用ですか?」

 

「…………」

 

 尾行者はシルフィの問いに何も応えない――――かと思ったら、いきなりシルフィに向かって走り出した。その走りはどこかぎこちなくて遅い。恐らく右足を怪我しているのだろう。

 

 尾行者を全く強くないと判断したのか、シルフィは魔術を放とうともせず杖だけで迎撃しようと構える。そして尾行者は武器を振るでも、魔術を唱えるでもなく、素早く両手を突き出してシルフィの手に触れた。

 

 すると尾行者が手を触れた次の瞬間、2人はその場から姿を消していた。

 

 一体何が起きたんだと困惑していると記憶の水晶は視点を2人が移動した屋内へと移す。この時、俺は尾行者の正体をようやく察する事ができた。尾行者はゆっくりとフードを捲り、見慣れた満面の笑みをシルフィに向ける。

 

「久しぶりシルフィちゃん! やっと再会できたね」

 

「え? うそ? 尾行していたのはリーファちゃんだったの? 一体どうして……」

 

 シルフィは目を丸くし、声を裏返しながら問いかける。リーファは部屋のカーテンを慌ただしく閉めると理由を語る。

 

「尾行をしたのもアイ・テレポートで空き家の2階に移動させたのも全部シルフィちゃんを隔離させて、ゆっくりと話する為だったの。びっくりさせちゃってごめんね」

 

「隔離……もしかしてリーファちゃんは私が他の人と一緒に来ている事を知っていたの?」

 

「そういうことになるね。とは言っても知ったのはついさっきだけど。私がどうしてシルフィちゃんを見つけられたのか。そして、今の私が何をしているのか……全て話すね。まず私がシルフィちゃんを見つけられたのは――――」

 

 リーファは自分とシルフィが座る椅子を用意して、ゆっくりとこれまでの事を話し始めた。その内容は俺にとっても中々衝撃的な事実が多かった。

 

 時系列順にリーファの話を整理すると、どうやらリーファはグラドと別れた後もグラドの事が心配で長い間行方を捜していたそうだ。しかし、大陸南の広大な大地から1人の人間を探し出すことは難しく途方に暮れていたところ、イグノーラに帰ってきたシリウスと再会したらしい。

 

 シリウスは探していたアーティファクト『レストーレ』を見つけ出したそうだ。シリウスは後任のイグノーラ王と海洋ギルドに話をつけてから船で帝国へ帰るつもりだったらしい。

 

 シリウスはコルピ王が殺され、五英雄がバラバラになり、行方不明者が多い事に驚いていたが、それ以上にボロボロで疲れ切っているリーファに驚いていたようだ。

 

 そんなリーファを心配したシリウスは「1度、帝国の家に帰って元気になった妹に会いに行け。リフレッシュした方がいい」と言われ、共に死の海を北上して帝国へ帰ったそうだ。

 

 妹のフィアとライラに再会し、リーファは少しずつ元気を取り戻していく一方、シリウスは『変化の霧』を扱う皇帝ヨハネスを止めるべく、厳しい戦いと暗躍の日々を繰り広げていたようだ。

 

 本当はリーファにも手伝ってほしかったらしいが心身共に疲れ切っていたリーファに助力を求めるのは酷だと考えて声は掛けなかったらしい。

 

 

 それから更に月日は流れ、シリウスが皇帝ヨハネスを倒す日の前日――――つまり父を自身の手で殺す1日前にシリウスはリーファの家を訪れていたらしい。かなり元気を取り戻していたリーファへシリウスは1つ大きなお願いを持ち掛ける。

 

 

 

――――僕は明日、父である皇帝ヨハネスを殺す。失敗しても成功しても僕は国賊として追われる事になるだろう。そうなったら僕は反帝国・大陸改革を目的とした組織『ダリア』を立ち上げるつもりだ。ダリアは帝国をはじめとした大陸に暗躍する邪悪な存在、そして腐敗した国・法を改革する幅広い活躍が出来る組織に仕上げるつもりだ。その組織にリーファもついてきて欲しい。そうすることで行方不明の親友たちを見つける手がかりも掴めるかもしれないぞ? もちろん僕も仲間も全力でリーファを支援するつもりだ――――

 

 

 

 シリウスは真剣な眼差しでリーファを誘い、リーファは了承したらしい。

 

 その後ダリアは各地で暗躍しながら大陸に貢献し、今に至るという。リーファはシルフィの知らない数年間を話終えると今度は机の上に地図を広げて最近の話を始める。

 

「次は私がここにいる理由、そしてシルフィちゃんを見つけられたキッカケについて話すね」

 

 

 

 

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