見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第330話】フィルとの再戦

 

 

「解散する前に1つ、私から合同訓練を提案させてくれないか? 折角、ガラルド君、グラッジ君、シン、フィルと精鋭が揃っているんだ。模擬試合を行って刺激し合おうではないか」

 

 シリウスが戦闘好きの俺達のテンションを上げる提案を持ち掛けてきた。俺以外の3人も首を縦に振り、喜びで口元が緩んでいる。

 

 シリウスも若干上擦った声になりながら合同訓練の話を続ける。

 

「とりあえずシンVSグラッジ君 ガラルド君VSフィルで戦ってみようか。場所はある程度広くて人目に付かない所がいいけれど……シン、どこか良い場所はないか?」

 

「う~ん、そうだね。今の時期ならコロシアムがいいんじゃないだろうか。大会を開催している訳でもないしね」

 

「分かった。それじゃあ早速行くとしようか。女性陣やゼロ君はさほど模擬試合に興味ないかもしれないけれど、よかったら見ていくといい」

 

 シリウスの言う通りサーシャもリリスもあまり試合や強さの上下に興味はなさそうだ。ゼロは「戦闘データが取れそうだなぁ」と少しだけテンションが上がっているけれど、俺やグラッジとは喜びの方向性が全然違うみたいだ。

 

 目的地のコロシアムまで全員で歩いている間、フィルはずっとニヤニヤした表情を浮かべている。そんなフィルは肩をぐるぐると回しながら俺に話しかけてきた。

 

「ガラルド君と戦うのは決勝戦以来だから凄く楽しみだよ。言い訳っぽくなるけど、あの時の僕はナフシ液から出たばかりだった。本気で戦っていたつもりだけど本調子ではなかったからね。今度は100%の力を出させてもらうよ」

 

「俺だってあの頃は2種の魔力についてよく分かってなかったし、色堅(シキケン)だって使えてなかったからな。今は格段に強くなってるぜ? 降参するなら早めにしておけよ?」

 

「ふふふ、その言葉、そっくりそのまま返させてもらうよ」

 

 俺とフィルが煽りあっている間、シンはニコニコと笑みを浮かべているのに対し、グラッジは真面目に戦術を練っているようだった。お互い、関わり合った期間は短いし、相手の戦闘を直に見た事は無いから手探りの戦いになる事だろう。

 

 シリウスの指示に従い、俺とフィルは第1武舞台、グラッジとシンは第2武舞台へそれぞれあがった。試合の審判は第1武舞台がシリウス、第2武舞台をストレングが務めてくれるらしい。

 

 シリウスは仰々しく咳払いをすると、模擬試合に関する説明を始める。

 

「えー、今から模擬試合を始める訳だが、これはあくまで戦闘能力を向上させる為のものだ。大怪我をしてしまっては意味がない。だから本家のコロシアムよりもライトなルールとさせてもらう。勝利条件はクリーンヒットを10回当てるか相手を場外に落とすかだ。ただし、クリーンヒットか否かは私が判断し、連続のクリーンヒットは合わせて1回とカウントさせてもらう。具体的にはクリーンヒット発生後に3秒以上経過しなければ次のクリーンヒットをカウントしないということだ」

 

 お互いに気を失うぐらいの死闘を繰り広げた以前のコロシアム決勝みたいにはならなさそうだ。決戦前の大事な身体だからシリウスのルールは最適だと思う。

 

 それに連続のクリーンヒットは1回分のカウントになるというルールも中々いいと思う。右拳と左拳を同時に当ててカウント2回になったら、どうしても多段攻撃が有利になってしまうからだ。

 

 他にもシリウスは『試合は両武舞台で同時に行う』『刃物系武器・金属武器の使用は禁止だが、スキルで武器を作り出すのは可』というルールを伝えてくれた。説明を終えると早速シリウスは定位置へ行き、試合開始の合図を告げる。

 

 

「それではガラルド君VSフィル グラッジ君VSシン 模擬試合始めッ!」

 

 

 試合開始の合図と同時にフィルが走り出す。両手には魔力を纏っており、拳かスキルでの攻撃を企んでいるのだろう。

 

 互いの命を賭けた殺し合いなら警戒して距離を取るが、これは戦闘能力を向上させる為の模擬試合だ。色々な経験を積む為にも果敢に攻めていこう。俺はフィルの魔力に応える様に右手へ回転砂を纏い、開幕から双纏(そうてん)の拳撃を繰り出す。

 

「オラァッ!」

 

 俺の拳が当たるスレスレのところでフィルは左手で防御の構えを取った。俺の拳がフィルの左手首に当たった瞬間、回転砂が人の体ではない何かをズバズバと斬り刻む音が鳴り響く。

 

 その音の正体は回転砂がフィルの手に装着してある植物を切り刻んだ音だった。薔薇のツタを丸めたようなものを拳に纏うタイプの武器らしい。フィルはコロシアム決勝で見せた『植物を瞬時に成長させるスキル・グロース』で拳に装着する形の武器を作っていたのだ。

 

「ふふふ、いいパンチだね、ガラルド君。僕自慢の植物グリーン・セスタスが1発でボロボロにされちゃったよ。でも、僕にはもう1個残っているけどね……くらえッ!」

 

 フィルは右手に残っているもう1つのグリーン・セスタスを俺の脇腹を狙って打ちこむ。慌てて左腕で防御したものの、左腕には魔砂(マジックサンド)を纏っておらず、鋭い植物の棘が刃物の様に俺の肌に傷をつける。

 

「ぐぅっ!」

 

 俺のうめき声と同時にシリウスが「フィル 1点追加!」とポイントを叫ぶ。悔しいが、植物をシンプルな拳武器として使用してくるとは思わず1撃を貰ってしまった。

 

 

 

 一方、第2武舞台では俺と同じかそれ以上にグラッジが苦戦しているようだ。序盤にして早くもシンが3ポイント グラッジ0ポイントになっているコールが耳に入ってきた。

 

 シンが強いのは分かっていたが、まさかグラッジがここまで手も足も出ないとは。自分の戦いに集中しなければいけないのにシンの強さが気になってしょうがない。

 

 初めて俺とシンが出会った時にシンに胸を借りる形で模擬試合をした事があったが、その時は確かに圧倒的な力の差があった。

 

 しかし、俺達も長い旅を続けて、数値的にも精神的にも戦術的にも相当強くなっているはずだ、それなのにグラッジが子ども扱いなんて、シンは一体何者なんだろうか?

 

 目の前のフィルも隣の武舞台にいるシンも俺をとことんワクワクさせてくれるようだ。そんな彼らの強さに応える為に俺もかっこいいところを見せなくては。俺は体力・魔量の配分なんて考えずに最初から全力で行く事に決めた。

 

「次は俺がポイントを取る番だ。行くぜ、フィル! レッド・ステップ!」

 

 

 

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