見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第340話】親の真似

 

 

「お、ガラルド君達も来てくれたようだし、全員揃ったね。それじゃあ最後の話し合いを始めようか」

 

 シンは各国の要人とアイコンタクトを取り、自身が話し合いの中心となって進めていった。

 

 どの場所にどの程度の戦力を割くか、物資の運搬はどうするか、アスタロトと接触した際は羽で逃げられないようにどうやって囲い込むかなどなど、既に何度もシミュレーションしている内容がほとんだ。けれども最終確認の意味を込めて本番さながらの緊張感を持って話し合うことに意味がある。

 

 決戦まではまだ30日近く余裕があるけれど、直に話し合える機会は戦場を除けば今回が最後だ。軍備管理……特に大陸南側の国とは距離の都合で連絡を取り合う機会も頻度も少なくなってしまっていた事もあり、念入りに話し合った。

 

 帝国以外の国の全てがシンバード陣営の味方と断言できる状況ではなく、仮に帝国が裏切り行動に出れば一部の国が敵に回る可能性もある。シンはより慎重に話を進めているようだった。

 

 そんな話し合いは3時間以上続き、気が付けば夜の闇も深くなっていた。大事な話し合いを全て終えて全員が肩の力を抜き、仕事をやり切って溜息を吐いていると突然シンバード兵が王の間の扉を激しく開いた。

 

「シ、シン国王! た、大変です! 大怪我をした帝国兵が1人、シンバードの西門を尋ねてきました!」

 

「なに? 帝国兵……しかも、大怪我だと? その帝国兵は今、どうしている?」

 

「我々は帝国兵を直ぐに治療しようとしましたが、彼は『生きている内にシン国王へ伝えねばならないことがある。私を王の間へ運んでくれ』とボロボロの身体で言っております。どうか話を……」

 

「分かった。命懸けで来てくれた帝国兵の意思を尊重し、私が帝国兵のいる場所へ出向こう。確か西門だったな。リリス君、直ぐに俺をアイ・テレポートで飛ばしてくれ!」

 

「分かりました。それではガラルドさんも一緒に飛ばしましょう。今の私なら自分を含めて3人まで飛ばせますので」

 

「ちょっと待ってくれ、リリス! 回復能力の無い俺が飛んでも役に立てることはないぞ? それなら他の人を飛ばした方が……」

 

「大丈夫です、私に少し考えがありますので従ってください。それでは直ぐに屋外へ向かいましょう!」

 

 俺とシンとリリスはすぐさまバルコニーへ出て、アイ・テレポートで西門にある診療室へと向かった。

 

 診療室の扉を開けるとベッドの上には左太腿と右肩へ矢で射抜かれたような大怪我を負った帝国兵の姿があった。リリスは息切れを整えながら治癒魔術を施す。一方、シンは今にも死んでしまいそうな帝国兵の手を握り、ここへ来た理由を尋ねる。

 

「おい! しっかりするんだ! 君はそんなにボロボロになってまでどうしてシンバードへ来たんだ? 命を賭けてでも伝えたいことがあるのだろう? 君の意思は必ず尊重する……だから教えてくれ!」

 

 普段のシンなら言葉を伝えてもらうよりも人命を最優先して全力で治療のみに専念するところだろう。だが、今回は死んでしまう前に何とか情報を聞き出そうとしているように見える。

 

 帝国兵の伝えたい情報を教えてもらう事がより多くの人間を助ける事に繋がると考え、天秤にかけたうえでの行動なのだろう。為政者としてのシンの割り切り、いや、心の強さが伺える。

 

「ぁぁああぁ、ががぁぁっ、かはっ!」

 

 しかし、ボロボロの帝国兵は声が枯れているのか、それとも喉が切れているのか、何を伝えようとしているのかさっぱり分からない。

 

 懸命に伝えようとする彼の想いをどうにか受け取りたいところだが、その方法が思い浮かばない。苦しむ彼の前で困惑しているとリリスが俺に提案する。

 

「ガラルドさん、今こそシルフィちゃんの技術を借りて兵士さんを救いましょう。魔砂(マジックサンド)を使って兵士さんの身体を調べてください」

 

「えっ? ちょっと待ってくれ。俺は今まで魔砂(マジックサンド)を戦闘でしか使ってこなかったんだぞ? シルフィみたいに上手く使えるとは思えないぞ」

 

「確かにガラルドさんはお世辞にもスキルや魔術のコントロールに長けた人ではありません。ですが、このまま何もしないよりかはずっといいです。私の治癒魔術では傷を治すより先に出血多量で死んでしまいます」

 

「わ、分かった。やれるだけの事はやってみる。魔砂(マジックサンド)よ、兵士の身体を巡ってくれ!」

 

 俺は普段よりもずっと小さくした魔砂(マジックサンド)を帝国兵の体内に侵入させた。クローズが言うところの細胞って存在よりはずっと大きい砂粒だとは思うが、それでも体内を巡っても問題ないぐらい小さくすることは出来た。これなら肉体内部を傷つける事はなさそうだ。

 

 だが、魔砂(マジックサンド)はあくまで触覚的な感覚を俺に知らせてくれているだけで、砂粒が視界の代わりをしてくれている訳ではない。だから帝国兵の身体がどういう状態になっているのかは分からない。そもそも俺は医学の知識もなければ治癒術師としての知識もないから当然なのだが。

 

「すまない、リリス。体内に魔砂(マジックサンド)を巡らせること自体は出来たが、どこに異変があるのか分からないんだ」

 

「大丈夫です、肩、腕、肘、膝、胸、首、色々なところに魔砂(マジックサンド)を巡らせていく中で魔砂(マジックサンド)の通りが悪い箇所や、他の箇所より熱量があるポイントなどが分かれば対処のしようがあるかもしれません。その点に意識を集中させてください」

 

 リリスの指示に従い、俺はもう1度帝国兵の体内に魔砂(マジックサンド)を巡らせた。すると、リリスのアドバイス通り、帝国兵の左膝の裏あたりに若干の熱量が感じられた。

 

 リリスは帝国兵の治癒魔術を他の治癒兵に任せて左足の膝裏に手を当てて調べた、すると何かを見つけたらしく笑顔で拳をグッと握りしめる。

 

「やりましたよガラルドさん! 膝裏から微かに毒性の魔力を感じます。恐らく前世の私が足に撃ち込まれた毒と似たようなタイプです。先端だけがめり込む矢を撃たれたのでしょう」

 

「だが、矢の傷口は膝裏ではなく太腿の前側にあるんだぞ? おかしくないか?」

 

「痛々しい話ですが、恐らく矢の先端だけが太腿を上方から貫通して、膝裏近くまで到達しているのでしょうね。これならいっそ貫通しきってくれた方が毒が溜まらずに済むのですが……。とはいえ原因さえ分かれば何とかなります。シルフィちゃんと同じようにガラルドさんが魔砂(マジックサンド)で毒を出し続けている物体を抜いてしまえばいいんです」

 

「本気か? 魔砂(マジックサンド)で調べるだけでも相当難易度が高かったんだが……でも、出血を抑えつつ毒の発生源を抜くにはそれしかないか。覚悟を決めるしかねぇ!」

 

 俺は震える手を深呼吸で抑え、傷口に魔砂(マジックサンド)を侵入させた。さっきまでとは違い、砂粒が物体を抜き取れる程度には大きくしなければいけない以上、どうしても砂粒を動かすたびに帝国兵に痛みを与えてしまって心苦しい。

 

 ゆっくりとゆっくりと砂粒を動かし、俺と帝国兵が互いに大汗を掻きながら抜き取り作業を進めること5分。何とか出血量を最低限に抑えながら矢の先端にあった毒物質を抜き取る事が出来た。

 

 毒物質は過去視でリーファが刺されていたものと酷似している。これを使ったのが誰かは分からないが、こんな危険な物が50年経った今でも使われている事実に恐怖を覚える。

 

 だが、拙いスキル操作とはいえ俺がシルフィの真似を出来た事は凄く嬉しい。何だか親との繋がりを感じると同時にプレゼントを貰えたような気分だ。

 

 普通の平和な家庭というのは親が出来ることを自分も出来るようになる体験を何度も繰り返していくものなのかもしれない。俺もたった1度とはいえ、経験出来て本当に良かった。

 

 治癒魔術と毒物質の抽出により容態を安定させた帝国兵は徐々に顔色を良くしていき、声も聞き取れる程度に治ってきた。帝国兵の回復を待っている間にサーシャ達も到着し、狭い診療室に多くの人間が集まった状態で帝国兵がここに来た理由を話し始める。

 

「シンバードの皆さま。私を治療して頂き、ありがとうございました。私はどうしてもやらなければならない事があり、帝国の追手を振り払ってここまで来ました。まずは、こちらの手紙をお受け取りください」

 

 

 

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