見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第344話】最終決戦前のミッション

 

 

 レックの部下から貴重な情報を得られてから更に時間は流れ――――死の山での戦争まで後6日というところまで迫っていた。

 

 シンバードから死の山までの距離が遠いこともあり、死の山の戦争に参加する面々のうち陸地を移動する兵士やハンター達は5日前にシンバードを出発していた。

 

 一方、フィルを中心とした防衛隊はレックの手紙に書かれていた指示に従ってシンバード西側の防備を固める為に明日シンバードを出発するらしく最終準備を進めている。

 

 リリスはシンを守るためにシンバードに残り続ける事になるし、俺とグラッジとサーシャと一部ガーランド団の面々はリヴァイアサンさんの力を借りて丸1日もかからずに死の山へ行く事が出来るから、まだシンバードに残っていた。

 

 余談だがシンがグラッジと模擬試合をしていた時に『ガラルド君とコンビを組ませるのはグラッジ君ではなくフィル君でいいかな』と煽っていたが、やっぱりグラッジを死の山へ派遣するようだ。

 

 あの日、千色千針(せんしきせんしん)を発動させたグラッジの強さは凄まじかったし、それ以降の訓練でもメキメキと力を付けている。正直、俺も勝てるかどうか怪しいぐらいだし当然の決定だろう。

 

 

 

 シンバードに残っている俺達は昼前に訓練を切り上げて、体を休めつつ最終決戦の準備を進めていた。すると、宮殿の兵士が俺達に声をかけ「シン国王のいる謁見の間へ来てください」と指示を伝えてくれた。

 

 俺達は兵士の言葉に従い、すぐに謁見の間へ行くとシンは早速、最終決戦の話を始める。

 

「お疲れ皆。今回は最終決戦で勝利を収める為に最後のミッションをこなしてもらいたくて君達を呼ばせてもらった。最終決戦までの残り時間が僅かという今、君達が最後にやるべきこと……それは何だと思うかね、グラッジ君?」

 

 いきなり名指しされたグラッジは集まりの場で普段あまり喋らない事もあって動揺している。シンにジッと見つめられ、回答を迫られたグラッジは自信なさげに答えを返す。

 

「えーっと、最後の瞬間まで強くなることを求めて特訓する事ですかね? いや、体に疲れが残っても良くないからイメージトレーニングかな? 合っていますか?」

 

「う~ん、グラッジ君は相変わらず真面目だなぁ。残念ながら俺が求めていた答えはそれじゃないよ。きっとサーシャ君なら分かるかな? 君は1度痛感している事でもあるのだけれど」

 

 シンが尋ねると、サーシャはバツの悪そうな表情で頭を掻きながら答える。

 

「ゆっくり休むって事ですよね? サーシャは1度ディアトイルで倒れてしまったから。お言葉の通り身に染みていますよ。意地悪な聞き方しないでくださいよ、シンさん」

 

「はっはっは、ごめんごめん。でも分かってくれているか確かめたくてね。そう、サーシャ君の答えが正解だ。人が最高のパフォーマンスを発揮するには心と体、両方を全快にするのが重要だ。だから決戦前に疲れを残すようなトレーニングをするのは駄目だし、過度にイメージトレーニングをして頭を疲れさせたり、緊張感を持ちすぎるのもよくない。だから君達には3日間ほど思い切って休息してきてほしいと思っている」

 

 いかにも国民・配下を優先するシンらしい考えというべきか。本当に良い王に恵まれたと改めて実感する。だが、シンの心遣いは嬉しいものの、いきなり3日も休みを貰ってもどう使えばいいのか全く分からない。

 

 俺はわりと無趣味なタイプで好きな事といえば飯を食う事、工作、旅行ぐらいしかない。体を休める目的がある以上、遠すぎる旅行に行くのは疲れてしまうかもしれないし、そもそも時間が足りない。

 

 だからのんびり好きな物を食って、思いっきり寝て、余った時間で工作にでも勤しむこととしよう。

 

 グラッジもいきなり時間を与えられて困惑しているようだ。とりあえずグラッジと一緒に美味い飯をたらふく食べに行こう――――そう思って声をかけようとした瞬間、グラッジの横にひょっこりと現れたサーシャがグラッジの腕を掴む。

 

「いきなり時間を貰ってもグラッジ君はやる事がないよね? よかったらアケノスでのお返しをしたいから一緒に出掛けない? 案内したいところがあるの!」

 

 サーシャの言葉は捉えようによってはデートの誘いとも解釈できる。グラッジは若干頬を染めながら首を縦に振っていた。

 

 俺の大事な飯仲間であるグラッジを取られたのは残念だが、若い2人の幸せを祈るのも人生の先輩の役目だろう。俺は喉まで出かかっていた誘いの言葉を飲み込んだ。

 

 

 

 

 さて、これで俺は孤独になってしまった。しょうがないからもう1人の大食漢シルバーでも誘うことにするか。足先を外に向けると今度はリリスが俺の肩をつついてきた。

 

 リリスもシルバー程ではないがよく食べる方だから誘っておこうかな……なんて事を考えていると、リリスはいつになく真剣な表情で俺にお願いしてきた。

 

「ガラルドさん、もし良かったら私と一緒に出掛けませんか? 最終決戦前に2人だけで色々とお話できたらと思いまして」

 

「なんだか、随分と改まった言い方だな。俺は食って寝るぐらいしかやる事が無いから構わないぞ」

 

「やった! ありがとうございます! では、私と一緒に1度ポセイドまで行きましょう! サーシャちゃんとグラッジさんも2人で行動するみたいですからグラッジさんが離れてしまう前にリヴァイアサンで運んでもらえるかどうか聞いてきますね!」

 

 リリスはスキップしながらグラッジとサーシャの元まで駆け寄り、リヴァイアサンに運んでもらう時間があるかどうかを尋ねる。2人とも首を縦に振るとサーシャがこれからの予定を話し始める。

 

「うん、リリスちゃん達を運ぶのは問題ないよ。そもそもシンバードからポセイドって船ですら半日もかからない距離だからリヴァイアサンなら直ぐ到着するしね。それじゃあ、グラッジ君はリリスちゃんとガラルド君をポセイドに送り届けたらシンバードに戻ってサーシャを拾ってね。そして、そのまま2人でウィッチズガーデンに行こう!」

 

 どうやらサーシャとグラッジは大陸の北端にあるウィッチズガーデンに行くみたいだ。サーシャの生まれ故郷であり、サーシャが1度孤児になった町でもある場所だ。一体どんな目的があるのだろうか?

 

 ウィッチズガーデンに行く目的が気になった俺は早速尋ねてみた。しかし、サーシャは「うふふ、ナイショだよ」と小悪魔な返答で躱されてしまった。

 

 アケノスの時と同様、またデートの内容を知る事が出来ないのは残念だ。だが、2人だけの秘密にしておきたいことも色々とあるだろう、これ以上追求しないようにしよう。

 

 結果的に時間を潰せる予定が入ってホッと一安心だ。俺とリリスとグラッジは早速港から少し離れた位置へ小舟で移動した。いきなりリヴァイアサンに乗り込まず小舟で離れた位置に移動したのは民衆をびっくりさせない為だ。

 

 リヴァイアサンの泡の力で小舟を囲ってもらった後、そのまま高速で海を駆けていき、あっという間にポセイドの近くの海へ到着する。

 

 そこからグラッジと別れ、小舟でポセイドの港から上陸した俺とリリスはこれからの予定を話し合いつつ、遅めの昼食を済ませる為に町のレストランへ歩を進めていた。

 

 グラッジとサーシャがウィッチズガーデンに何をしに行くのかは分からないが、これからは戦いで忙しくなる一方だ。休暇を目一杯楽しんできて欲しいものだ。

 

 

 

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