見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
死の山戦争1日目の夜――――各国の代表達と明日以降の戦い方について話し合いを終えた俺とグラッジはサーシャがいるテントへ向かった。
シンバード組の要人が寝泊まりする大きなテントの中心ではサーシャが目を閉じたまま正座していた。恐らく既に黒猫サクを遠隔操作で南方へ動かしているのだろう。グラッジはサーシャの集中力を切らさないように小声で進捗を尋ねる。
「サーシャさん、サクの移動は順調ですか? 何か発見はありましたか?」
「ううん、まだテントを出てから1時間ちょっとしか経ってないからね。これといった発見はないよ。サクの視点からだと夜目は効くけど、魔力の波動を感じる事は出来ないから隠れている敵も発見し辛いしね」
「そうですか、では情報を聞けるのはもっと後になりそうですね」
「そうだね、だからグラッジ君達はひとまずゆっくり寝ていていいよ。何かあったら見張りの兵士さんが呼んでくれるだろうし」
「分かりました。それじゃあ僕らは一足先にお休みさせてもらいます。どうか無理しないでくださいね、サーシャさん」
俺達はひとまずサーシャのお言葉に甘えて眠らせてもらう事にした。
※
1日目は順調に戦えていたとはいえ少し疲労が溜まっていた俺とグラッジは一瞬で眠りにつき、時刻は日の出前になっていた。ぼやけた視界で時間を確認した後、周りを見渡すと自分から少し離れた位置で今も黒猫サクを動かし続けているサーシャの姿があった。
流石にもう眠っているだろうと思っていたからサーシャに疲労が溜まり過ぎていないか心配だ。グラッジも俺と同じタイミングでサーシャのことに気が付いたようで彼女を気遣って声を掛ける。
「サーシャさん! ずっと探索を続けていたんですか? 流石に頑張り過ぎでは……」
「おはようグラッジ君。確かにちょっと張り切りすぎたかな……でも、その分、2つほど気になる情報を得られたよ。1つは魔獣集落にいる魔獣の数についてなんだけど、どうやら死の山の中心と南方の魔獣集落も北側と同じように魔獣の数が少ないみたいなの。この事実は魔獣の数が偏っているなんて話では片付けられないと思う、もしかしたら90万匹と仮定していた魔獣は40万匹ぐらいしかいないかもしれないよ」
「それは妙ですね。僕達は2つの魔日が重なる日を狙って死の山に攻撃を仕掛けましたから、アスタロトや他の魔人が魔獣を引き連れて死の山から離れている可能性も考えられますけど、それにしたって総数が少な過ぎますよね。過去の
サーシャの予想である40万匹という数字が正しければ俺達は確実に勝利を収められるだろう。しかし、死の山の表面的な場所で姿が確認できないだけで、地下空間のような存在があるかもしれないから油断は禁物だ。現にグラドの手紙が置いてあった洞窟のように遠目からは確認しづらい場所もあったのだから。
続いてサーシャはもう1つの情報について語る。
「サーシャが見つけたもう1つの気になる点についても教えるね。それはクローズのアジトがあった場所の景観についてなの。サクは間違いなくアジトのあった場所に移動出来たのだけど、その辺りの地形がガラッと変わっていたの。過去視ではマグマ滝の裏にアジトがあったけど、そもそもアジトがあった辺りからマグマ滝そのものが消えていてね。周囲の隆起した岩場も全く違う形状に変わっていたの。ガラルド君はこの状況をどう思う?」
「死の山は過去に噴火などで地形変動を起こしたことがあると聞いたことがある。だから景観が変わる可能性もあり得なくはない。だが、もし変わっているのがアジトの周辺のみだとしたら怪しいな。アジトから少し離れた位置の景観が過去視と変わっていなくて、尚且つアジトがあった辺りが地形変動によって破壊された形跡がないのなら人為的な変化が施されたと判断できそうだな」
「それじゃあ最後のひと踏ん張りでアジトから少し離れた位置を確認してくるね」
サーシャは疲れた体に鞭を打ち、サクでの確認作業を続けてくれた。結果、俺のにらんだ通りアジトから離れた位置に環境の変化はなく、アジトのあったエリアだけが変わっているようだった。
これはきっと何かがあるはずだ。俺はサーシャに仮眠を取るように伝えた後、顔を洗って他の国の代表達が起きるのを待ち、サーシャの得た情報を伝えた。
その結果、全ての国が怪しいポイントを早急に調べるべきだという意見となり、急遽機動力に長けた精鋭を集めた調査隊を作る流れとなった。
調査隊は主に腕利きの前衛職で固める事となり、俺、グラッジ、サーシャ、パープルズからフレイムとブレイズ、ルドルフ、そして足の速い移動に特化した伝達兵20名で行く事となった。
本当はサーシャのことを今すぐ休ませてやりたかったのだが、サーシャは「実際にアジト周辺を見たサーシャが行かないと違和感に気付けないよね。仮眠をとって休めたし、ついていくよ」と言って、意地でもついていくと聞かなかったから許可する事にした。
まぁサーシャは黒猫サクを使役できるから自分の足で走らなくても済む強味がある。疲れていても俺達より長距離移動は速いはずだ。魔量切れで疲れて倒れないようにだけ注意して見守る事にしよう。
準備を整えた調査隊の俺達は北側3つの軍が動き出すよりも1時間ほど早く麓を飛び出して、アジトのある方へと向かった。
全員足しても30人にも満たない集団ゆえに魔獣の大群に襲われたら一巻の終わりとなる。俺達は慎重かつ静かに走り続けた。そして移動を続けること3時間、不眠とスキルの連続使用によって早くも疲れの色が見え始めたサーシャは黒猫サクの動きを鈍らせ始める。
「ご、ごめんなさい。無理やりついてきたのにサーシャが足を引っ張ってしまいそう……ハァハァ……もし、邪魔になりそうなら迷わずサーシャをおいて行ってね。大事なのは共倒れを防ぐことだから」
まずい……あの時、無理やりにでもサーシャを休ませるべきだった……。今から兵士達にサーシャを運ばせたとしても、戦闘力が特別高いわけではない伝達兵ではサーシャを運んでいる道中に襲われて死んでしまう危険性がある……俺達がいないと危険だ。
かと言って俺達全員がこのまま北側の麓へ戻ったら大幅に時間をロスしてアジトに着くのが夜になってしまう。そうなると暗すぎて調査は相当やり辛くなるだろう。
アジトは死の山の中でも南側にあるから、もしサーシャの体力が最後までもってくれていたならば調査を終えた後、そのまま南側の軍へ合流してサーシャを預ける事が出来たのだが……。どの選択を取るべきか……出来の悪い俺の頭がパンクしてしまいそうだ。
厳しい状況をどうするべきか悩んでいると突然グラッジがサーシャの前に移動して、背中を向けたまま、その場でしゃがみ込んだ。
「僕が残りの道中、サーシャさんをおんぶで運び続けます。乗ってくださいサーシャさん」