見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「やかましいハエどもめ……そんなに殺されたいならさっさと殺して差し上げますよ……」
追い詰められて人相の変わったブロネイルは強い魔力を纏った体で殴りかかってくる……かと思ったが、何故か後ろへと下がっていき、リザードマンの群れの中に入ってしまった。
このままリザードマンの群れを盾にして逃げるつもりだろうか? ブロネイルがザキールと同じように多くの魔獣を操れる魔人なら自分が戦うより魔獣を使役した方が合理的だと考える可能性もある。
だとしたら、先々の為にここで奴を倒しておきたいところだ。俺は疲れた体に鞭を打ち、リザードマンの群れの上を
しかし、上からリザードマンの群れを眺めてもブロネイルの姿が見当たらない。リザードマンが急に出現したのと同じ原理でブロネイルには姿を隠す能力があるのだろうか?
不可思議な現象を分析するのは上空にいて俯瞰できる俺が1番適しているはず……そう考えて目に意識を集中させ、リザードマンの群れを眺め続けた。
「絶対に何かカラクリがあるはずだ……俺が何とかして見つけ――――」
――――ガラルドさん! 後ろです!――――
俺の呟きをかき消すようにグラッジの大声が響き渡り、慌てて後ろを振り向く。そこには拳を振り下ろそうとしているブロネイルの姿があった。
俺は
「ぐはっ!」
背中と後頭部を同時に地面へぶつけた俺は呻き声を出すと同時に視界の揺らぎを感じていた。地面に落ちて2秒ぐらいで視界は冴えてきたけれど、リザードマンの群れの中心に落ちていた俺は気が付けば両手両足をリザードマンに押さえつけられていた。
そんな俺の姿を上方から見つめるブロネイルは両手に力強い氷の魔力を溜めている。
「よしよし、トドメを刺すのでしっかりと押さえておきなさい。消し飛べ、アイス・メテオ!」
マズい……このままでは無防備な状態で魔術を受けてしまう……。両手足を上手く押さえられている以上、回転砂だけでも防御を展開したいところだが、頭と背中をぶつけた衝撃でスキルに意識を集中できない。
急いで魔力を練る俺を見下ろしたブロネイルは口角を上げた笑顔で強大な氷塊を撃ちだす。奴はリザードマンごと俺をぶっ潰すつもりだ……。高速で近づく氷塊の痛みに耐えるべく俺はギュッと目を閉じる。すると俺の耳に窮地を救う声が飛び込む。
「
俺の目先5メード程の位置まで近づいていた氷塊はリザードマンの間を縫って走ってきたであろう黒猫サクと衝突し、バラバラに砕け散った。久々に見たあのスキルは1度受けた衝撃を溜め込み、後に放出する事が出来るリベンジ&リリースという能力だ。
これでサーシャは1撃だけだが強力な攻撃手段を得た事になる。一方、ブロネイルはサーシャのスキルを知らないらしく困惑した表情で俺とサーシャを交互に見つめている。
ブロネイルはサーシャの方を見ながら舌打ちをすると、今度は両手の爪に魔力を集中させて直接俺を攻撃する為に急下降してきた。
「何をしたのかは分かりませんが、少し寿命が延びただけのこと。未だ拘束されている貴方を私の手で殺してあげましょう!」
ブロネイルはザキールに負けず劣らずのキレっぷりで目を血走らせている。あの爪で攻撃されたら厄介そうだ。だが、サーシャが時間を稼いでくれたおかげで今の俺は思い通りに体を動かせるはずだ。
近づいてくるブロネイルにはお仲間のリザードマンをぶん投げてやる。未だに俺の両手首を掴んで拘束できていると思い込んでいるリザードマンを寝転んだ状態のまま、力任せに真上へ持ち上げた。
2匹のリザードマンが作り出す肉の盾は爪を立てて急降下するブロネイルと衝突し、見事に止めてくれた。まさかリザードマンをぶん回すとは思っていなかったのか、俺の足首を押さえている残り2体のリザードマンもブロネイル同様、目を点にして驚いている。
気を取られている今がチャンスだ! 俺は爪に刺されたままのリザードマンをブロネイルごと思いっきり地面に叩きつけた。
「うごあぁっっ!」
初めて聞いたブロネイルの呻き声に確かな手ごたえを感じる、このまま連撃を加えて倒し切ってやる。俺は火を纏った
「うぐぅっぁ!」
投げと棍撃の完璧な2連撃だ! 持ち手に響いた感触、熱砂が生み出す蒸気が確かな手ごたえを確信させてくれる。だが、油断は禁物だ。俺は続けてもう1撃加えるべく棍を振り下ろす。しかし、今度はブロネイルに当たった感触はなく、地面にめり込んだ感触が持ち手に響く。
ブロネイルは転がって避けたのだろうか? 熱砂が生み出した蒸気が晴れ、ブロネイルが倒れている地点を目視すると何故かそこにブロネイルの姿はなかった。
ブロネイルは特別肉弾戦が強いわけではないが、さっきから瞬間移動のような動きを繰り出している気がする。
俺は周りを囲んでいるリザードマンをサンド・ストームで吹き飛ばし、再びブロネイルの姿を探し始める。すると、今度は離れた位置にいるサーシャとグラッジの方に黒い影が高速で飛んでいた。さっき遠目から見た黒い影はブロネイルの高速移動技だったのだ!
このままではサーシャがやられてしまう……俺は急いで助けに行こうと足に力を入れたものの距離が遠すぎて間に合いそうにない。ブロネイルはサーシャの前で手を突き出すと、勝ち誇った顔で詠唱する。
「さっきはよくも止めてくれましたね、御嬢さん。今度は確実に消し飛ばします、アイス・メテオ!」
さっき俺に放った時と同じぐらい強力な魔術がブロネイルから放出される。反応が遅れたサーシャは魔術でもスキルでも迎撃できる状態ではない……。万事休すかと思えたその時、近くにいたグラッジが一心不乱にサーシャの前に飛び出し……
「うわあぁっ!」
アイス・メテオをもろに喰らってしまう。
グラッジは潰れた声をあげ、額から血を流し、衝撃で遠くへ転がってしまった。いつものグラッジなら庇うと同時に防御もできていたと思うが……明らかに動きが悪い。パープルズと同様に相当疲労が溜まっていたから防御もままならなかったようだ。
ブロネイルは満足気な表情を浮かべると、指を1本立てて呟く。
「ターゲットには当たりませんでしたが、まずは1人片付けられましたね。次に消してさしあげるのはもちろ――――」
ブロネイルが喋り切るよりも先にソル兵士長が爆風を背に飛び出していた。その出足は凄まじく速く、レックのバック・ガストやグラッジのウィンド・ダッシュを彷彿とさせる風の移動技だ。
どうやら暫く会っていない間にソル兵士長も相当な訓練を積んできたようだ。この速さには流石のブロネイルも危険を感じ、上空へと飛んで距離をとる。額の汗を拭ったブロネイルは大きな吐息と共にソル兵士長を褒め始める。
「いやはや、見事な高速移動ですね。シンバードや帝国以外にもここまで腕の立つ者がいたとは。確かイグノーラ兵団にいるソルという名前の兵士長でしたかね?」
「ああ、私が兵士長のソルだ。褒め返してやりたいところだが、貴殿には尊敬できるところが1つも無いな。コソコソ隠れ、背後から攻撃し、魔獣も煙に巻くような使い方だ。恐らく黒い影となって移動しているのもスキルか何かだろう? 大体性質の予想はついているのだよ」
「予想できたからと言ってどうだと言うのですか?」
「忠告をしているのだ。これまでのような戦い方は止めた方がいいとな。貴殿に武人としての誇りが少しでもあるのなら今からでも地上降りてきて正々堂々と戦ってみてはどうかね?」
「私は喧嘩バカのザキールとは違って近接戦はあまり好きではないのです。これまで通りヒット&アウェイでいかせてもらいますよ。ですからソルさんの挑発に乗るつもりはございません。それより皆さん、私に視線を向けていてもいいのですか? 貴方達にとって再び厳しい状況が出来上がっていますよ?」
再び厳しい状況が出来上がる――――不穏な言葉の意味が分からなかった俺はすぐさま周りを見渡した。すると、最悪な事にリザードマンが更に30匹ほど増えてしまっていた。本当に無限に出現させることが出来るのかと疑ってしまいたくなるほどに厳しい状況だ。
ここは一旦ソル兵士長とサーシャに合流し、グラッジを守りつつ、戦い方を話し合った方が良さそうだ。俺は素早くリザードマンの間を縫ってサーシャ達と合流し、グラッジを担いでリザードマンの群れから少し距離を取った。
俺がグラッジを地面に寝かせ、サーシャがスキルのアクセラでグラッジを回復させてくれている。その間にソル兵士長は兵達へ『俺達を守って時間を稼ぐのだ!』と指示を送ってくれた。これで少しは時間を稼げるが兵士達の体力は有限だ。早めに打開策を見つけ出さなければ。
ひとまずブロネイルの能力についてソル兵士長に意見を伺っておこう。
「教えてくれソル兵士長。さっき貴方はブロネイルのスキルがどんなものか予想がついていると言っていたよな? 外れていてもいいから予想を聞かせてくれ」