見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「教えてくれソル兵士長。さっき貴方はブロネイルのスキルがどんなものか予想がついていると言っていたよな? 外れていてもいいから予想を聞かせてくれ」
俺が尋ねるとソル兵士長はブロネイルに視線を向け、警戒しながら答えてくれた。
「恐らくブロネイルには2つの能力があると思われます。1つは一瞬でガラルド殿の背後をとった移動技です。ガラルド殿は視線をリザードマンの群れに向けていたので気付かなかったようですが、我々は黒い影が一直線にガラルド殿に向かっていくのを目撃したのです」
「黒い影……噂になっていたやつか」
「はい、その黒い影が止まると同時にブロネイルの姿になったので間違いないかと。私の予想では直線限定で高速移動ができる技だと思います。そして、恐らく高速移動中は攻撃が出来ず、移動直後は硬直する性質もあると思われます、ガラルド殿の背後に移動した直後は3秒ほど固まっていたので」
「なるほど、少しアイ・テレポートに似た性質だな。ならば誰かは必ず奴から目を逸らさないようにしないといけないな。それじゃあ『増えるリザードマン』についてはどう考えてる?」
「そちらについてはまだ確信に近い事は言えませんが気になっている点があります。それは我々が目を離している隙にリザードマンが増えている点です。奴は意図的に視線を誘導しているような気がするのです。もしかしたら魔獣が増える瞬間を見られないよう避けているのかもしれません」
魔獣を転送するにせよ隠しているにせよ出元や中継点を見られたくない可能性は高いだろう。
そう考えればリザードマンの群れを俯瞰で見る者、ブロネイルの挙動を確認する者、リザードマンの群れと戦う者、3つの役割に別れた方がいいのかもしれない。ここにきて戦力を分担しなければいけないのは厄介だが……。
俺達がこうしている間にも時間を稼いでくれている兵士達はどんどん消耗している。ここはなりふり構わずブロネイルを一気に叩きに行くべきだろうか? 色々な考えがよぎる中、横になっていたグラッジがとんでもない提案を持ちかける。
「提案があります。リザードマンの群れがいる辺り一帯を僕の
「力技で丸裸にしちまう訳か、発想がぶっ飛んでるな。でも、意外と悪くない提案だと思うぞ。1番広範囲を破壊できるのはグラッジの
「……なんとかやってみます。今、戦ってくれている兵士達はイグノーラの人が多いですから、ちょっと無理してでも
グラッジはお茶らけた言い方をしているが、疲れた体に鞭を打って頑張る覚悟を決めている。
グラッジが
「総員! 今からグラッジ様が動き出すぞ! 30秒後、リザードマンの群れの中心より
――――オオォォゥゥッッ!――――
兵士達の掛け声からも『大爆発が起きるから離れろ』という意図は伝わったようだ。兵士達がそれぞれ攻撃態勢を解除して離れる準備を進める一方、グラッジは出来るだけ大きな爆発を起こす為に時間をかけて集中し、両手に火と氷の槍を作り出して
上空から俺達の様子を眺めていたブロネイルは最初の内は首を傾げていた。しかし、兵士達とグラッジの様子を見て勘付くと血相を変え、叫びながらこちらへ飛んできた。
「そ、それは例の
奴はザキールから教えてもらったのか
あとはブロネイルをグラッジに近づけさせないように守るだけだ。俺とソルは急降下してくるブロネイルを迎えるべく、奴に飛びつく。
俺とソル兵士長は空中で勢いよくブロネイルにタックルし、俺がブロネイルの左腕、ソル兵士長が右腕をガッシリと掴む。足元に浮遊させた
「ぐっ! 離せ、お前ら! くだらないことを企むんじゃないッ!」
焦っているブロネイルが至近距離で割れんばかりの怒号を飛ばしている。しかし、そんなブロネイルをソル兵士長はせせら笑う。
「どうした魔人? 紳士的な喋り方が消えてしまっているぞ? それだけ
「ええい! 黙れ! お前らみたいな脆弱な人類なんぞ、無理やり振り払って――――」
ブロネイルは両腕に何度も力を込めているが、俺達が腕を振りほどかれることはなさそうだ。どうやらブロネイルの膂力はザキール程ではないらしい。魔術の威力はかなりのものだったから魔人ごとに得手不得手があるのだろう。
俺とソル兵士長がブロネイルを抑えている間にグラッジは火と氷の槍を完成させてリザードマンの群れへと走り出す。
兵士達もリザードマンから適度に距離を取りつつ囲んでいる。
「それじゃあ、いきますよ皆さん! はああぁぁっっ!」
グラッジが二対の槍を投げこむために飛び上がり、風を足裏に発生させて空中に浮かんだ。あとは空中で火と氷の槍の熱量を最終調整してから投げて大爆発が起きるのを見届けるだけだ。俺はブロネイルの腕を握っている手に一層力を込める。
「絶対に離さないぜ、そこで爆発を見届けやがれ」
「くっ……こうなったら仕方がない。駆けろ
ブロネイルは突然聞いたことのない言葉を呟く。すると、ブロネイルの腕を握っていたはずの俺の両手がいきなり空を切り、右手と左手がぶつかり合ってしまった。
俺とソル兵士長の前から突如ブロネイルの姿が消えてしまったのだ。この事実が意味するのはブロネイルが高速移動を発動したということだ。姿そのものが一瞬消えるアイ・テレポートと同じだ……体を固定しても意味がないという点にまで頭が回らなかった。
俺は急いで視線をグラッジの方へ向けた。そこにはグラッジの背後に浮かぶブロネイルの姿があった。皮肉にもさっき背後に立たれた俺と同じような状況になっている。俺はグラッジへ大声で呼びかける。
「グラッジ! 後ろだ!」
慌てて後ろを振り返ったグラッジは何も出来ずに膠着してしまった。だが、そうなるのも無理はない。
手に持った二対の槍を目の前のブロネイルに投げてしまったら自分ごと大爆発に巻き込まれてしまうからだ。かといって今すぐ下方へ投げたところで間もなく硬直が解けるブロネイルが着弾前に妨害してしまうだろう。
このままでは
なんとグラッジが腰にかけているサイドポーチの中から最小化された黒猫サクが飛び出してきたのだ。グラッジすら知らなかった潜伏にブロネイルは目を点にして驚いている。
黒猫サクは自身の身体を発光させながら一直線にブロネイルに飛び掛かり、離れた位置にいるサーシャが大声で叫ぶ。
「
リリースという言葉で俺は2重に驚かされる。さっきブロネイルのアイス・メテオから俺を守る為、サクにダメージを吸収させて蓄えていたことを忘れていたからだ。
「サクッ! 魔術をお返ししちゃえ!」
サーシャに呼応し、凄まじい魔術エネルギーを纏ったサクは小さな体で隕石の様な重たいタックルをブロネイルの腹部へお見舞いする。
「うぶぅぅぁぁっっ!」
自身の強大な魔術エネルギーをまともに受けたブロネイルは言葉にならない声で斜め上へと吹き飛ぶ。これでもう
「ふぅ……今度こそ決めます! 弾けろ!
イグノーラでの戦争以来となる目を開ける事すら厳しい超爆発がリザードマンの群れを中心に巻き起こる。その規模はグラッジが疲れていてもなお、以前の爆発よりも大きい。顔の皮膚が後ろへ引っ張られるような爆風だ。
兵士達はリザードマンの群れから距離を取っていたとはいえ、それでも心配になる程の大爆発である。爆風そのものでダメージは受けなくても坂道を転がってしまったり、岩壁に叩きつけられた兵士がいないか心配だ。
超爆発で砕けた岩と風の影響で10秒ほど視界が遮られてしまった。ようやく視界がクリアになり視線を向けると、そこには奇妙な光景が広がっていた。