見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
ソル兵士長と兵士達が中心となって戦い、ブロネイルの羽を切り落としたことで遂に拘束することが出来た。俺達は
まずは奴に逃亡は不可能だということを知らしめつつ、こちらに殺意がないことを俺が伝えておこう。
「サーシャ、疲れているところすまないがサクのグラビティでブロネイルの体を重くして逃げられないようにしてくれ。それから北東軍から一緒に来てくれた者はブロネイルの止血と痛み止めの処置を頼む。敵とはいえ殺したくはないし、痛みも減らせる範囲で減らしてやりたいからな」
サーシャ達は俺の指示に従いそれぞれの仕事を進めてくれた。一方、ブロネイルは指示を出した俺を鼻で笑った。
「フッ、噂通り甘い男のようですね。尋問は喋りたくなる程の苦痛を与えるのがセオリーだと思いますがね」
「俺らには俺らのやり方があるんだよ。そんなことより幾つか質問に答えてもらうぜ。まず最初の質問は謎の地下空間についてだ。俺達は今回の戦争で死の山の魔獣が想定よりも随分少なくて驚いた。少なかった理由は死の山の各ポイントに地下空間があって、魔獣が隠れているということでいいんだよな? 一体どのくらいの数の地下空間があって、どのくらいの魔獣が隠れているか教えてくれ」
「ハッ、貴方たち人類を敵だと思っている私が答えるわけないでしょう。それに情報を与えてアスタロト様からの評価を下げる訳にはいきませんからね」
「ほほう、仲間の為とか武人の誇りとか、そういった理由を最初に挙げないんだな。アスタロトからの評価を随分と気にしているようだが……。アスタロトから高い評価を貰えたらブロネイルにとってどんなメリットがあるんだ?」
「誇りや友情なんてものは躍進の邪魔になりますからね。メリットはいたってシンプルなものですよ。アスタロト様から評価を頂き、アスタロト様の右腕となり、人類を滅ぼした後も1番近くで貢献し続けること……それこそが私にとってのメリットなのです」
ザキールがアスタロトに畏怖の念を抱いていた点、そしてブロネイルの言葉から察するにアスタロトはまるで教祖の様な信頼を得ているようだ。
それに『人類を滅ぼした後も』という言い方も気に掛かる。アスタロト陣営にとって人類殲滅はゴールではなく過程なのかもしれない。奴らがどんな未来を見据えているのか聞いてみよう。
「ブロネイルの言い方だと人類殲滅後も目的があるみたいだな。お前たち魔人は人間側に勝つ自信があるんだろ? だったらサービスして俺達に教えてくれよ」
俺は少し下手に出て情報を聞き出そうとしてみた。しかし、ブロネイルは呆れた表情で溜息をつくと、小馬鹿にしたトーンで言葉を返す。
「やれやれ、散々愚かな選択をしてきた人類にアスタロト様とクローズ様の崇高な理想を教えても意味はありませんよ。それに質問に答えることは我々の戦力を明かすこと以上に禁忌とされています。絶対に答える事はありません」
「愚かな選択……か。確かに人類はやらなくてもいい戦争で血を流し、私利私欲で多くのものを傷つけてきた。だから基本的に大人しい魔人族から説教されれば何も言い返せないな。だが、人類にだって英雄グラドのような立派な人間だっているんだぜ? そんな人間が力を合わせれば『愚かな人類』という枠から抜け出せる時がくるかもしれないぜ?」
「クククッ、そうですか、貴方達にとってグラドは立派な人間ですか、そうですか、フフフ」
ブロネイルは何故か俺の言葉を受けて不愉快な笑みを浮かべている。そして、ブロネイルは自身の思う英雄像を語り始める。
「私が思う英雄の条件とは『善の変化をもたらす者』なのです。その点を考慮すればグラドがどれだけ半端なことか。ペッコ村に居た頃はアスタロト様を虐める
いくら俺達がきつく尋問しないからって言いたい放題言いやがって……腹が立ってきた。だが、横で聞いていたグラッジの怒りは俺の比ではなかった。
据わった目でブロネイルを見つめるグラッジからは溢れんばかりの殺気が漲っており、歴戦の猛者であるソル兵士長ですらたじろいでいる。
グラッジはゆっくりとブロネイルへ近づいて2メード程前で立ち止まり、拘束されているブロネイルを無言で睨んでいた。
何も言わずに静かに怒りのオーラを出しているグラッジにブロネイルは困惑している。すると、グラッジが突然懐から短剣を取り出し、思いっきりブロネイルに向かって投げつけた。
短剣はブロネイルの左頬を少しだけ掠り、凄まじい速度で地面に突き刺さる。ブロネイルの顎には頬から流れた血が垂れている。1歩間違えれば殺しかねない投擲だ。俺は慌てて止めようとしたが、グラッジの横顔があまりにも恐ろしく言葉を飲み込んでしまった。
グラッジの豹変にブロネイルは肩を震わせている。一方、グラッジは今まで聞いたことのない低く威圧的な声で言葉をかける。
「言葉を選べよ魔人。ガラルドさんが殺さないと言っても僕が殺さない保証はないんだからな。お前はただ質問に答えろ、それでお前は用済みだ」
「ヒイィィ! うぅぅ……」
「返事はどうした?」
恐怖で声が出せなくなっているブロネイルに対し、グラッジは再び短剣を投げつけ、今度は右頬に傷をつけてしまう。
俺は今度こそグラッジを止めなければと後ろから抱きついて制止させようとしたが、この時のグラッジは疲労状態にも関わらず何故か体が岩の様に重く、力が強くて抑えられなかった。
グラッジは片手で俺を引っぺがすと再びブロネイルに返事を要求する。
「もう1度聞く。僕の質問に答えろ、分かったか?」
「……はい……分かりました」
ブロネイルの目の中には絶望の色がうつろっている。もう完全に奴の心は折れたようだ。結局、脅すような形になってしまったが何とか情報を聞き出す事が出来そうだ。
そして、俺達は改めてブロネイルに対して質問することにした。