見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第367話】馬鹿げた望み

 

 

 

「ザキール、1つ聞かせてくれ。お前は何でアスタロト陣営のことをここまで教えてくれたんだ? 捨て駒みたいに扱われた腹いせに裏切りたかったのか?」

 

 俺がザキールに心の内を尋ねると奴は首を横に振り、口角を片方だけ上げて吐き捨てた。

 

「いいや、俺様はアスタロト様に腹を立てられる身分じゃないからな。腹いせどころか虚無感しかない。俺様がわざわざ情報を教えてやった理由は至ってシンプルだ。現実を知ったガラルドが絶望する顔を見たかっただけだ。同盟陣営の顔でもあるガラルドは『出来るだけ早く帰ってシンバードを守る』と皆の前では言うのだろう? だが、心の奥底ではお終いだって分かっているんだろ?」

 

「相変わらず性格が捻くれてやがるな。絶望しているのはザキールも同じだっていうのによ……地獄に落ちるなら一緒に落としてやりたい訳だな? だが、お前は1つ大きな勘違いをしているぜ? 俺は本気でシンバードを守り切るつもりだ、その為に素早く帰る算段も立ててある」

 

「なんだと? デタラメを言うな! 空を駆ける事が出来ない貴様らが素早くシンバードへ帰る方法なんてないはずだ!」

 

 ザキールを含む敵陣営はリヴァイアサンの事を知らないから信じられないのも無理はない。死の山から出て海岸に行く事さえ出来れば海中の移動は1日程度で済むはずだ。

 

 ただ、いくらリヴァイアサンの体が大きいといっても泡で船を囲んだまま移動するのは4,5隻が限界だろう。海路で素早く戻れる人数は300人程度が上限だ。慎重にリヴァイアサンへ乗り込む人材を選ばなければ。

 

 俺が先の事を色々と考えている間もザキールはこちらを睨んでいた。俺達がどうやって素早くシンバードへ向かうのか知りたがっているようだが、教える義理はない。俺はザキールにお別れの言葉をかける。

 

「ザキールが何て言おうと俺達はシンバードへ帰るぜ。勿論どんな移動手段で帰るかは秘密だ。ザキールが捻くれているおかげで俺達の次の行動が決まったわけだ、ありがとよ。さあ、ここからザキールはどうするつもりだ? 俺達に攻撃を加えて邪魔をするのか? それとも諦めて拘束されるか?」

 

「…………」

 

 俺の言葉に対し、とうとうザキールは黙り込んでしまう。捨て駒にされたザキールが唯一やりたかったことが俺への精神攻撃だったのなら仕方ない。それすら失敗に終わって本当に空っぽになってしまった可能性がある。

 

 だとしたらこちらにとっては好都合だ、このままザキールを拘束して1度意識を失わせれば死の山に張り巡らされている幻影魔術は解除されるはずだ。

 

 俺は拘束する為に下を向いて黙ったままのザキールの右腕を掴もうとした。すると、ザキールは突然腕を振り払い、俺の手を弾く。置物の様になっていたザキールがいきなり機敏に動き出してビックリしたが、それ以上に俺はザキールの表情に驚かされる。

 

 さっきまでの腑抜けた態度は抜けきり、過去に死闘を繰り広げた時と同じぐらい殺気に満ちた目を俺に向けているのだ。そしてザキールは自身の想いを語り始める。

 

「アジトから出られる気になってんじゃねぇぞ! どっちみち貴様らはここで俺様に殺されるんだ。貴様らが未だにシンバードを救える気になってるのが癪なんだよ! 俺様がいる限りシンバードへ帰るのは不可能なんだからな!」

 

 どうやらザキールはここで俺達全員を皆殺しにできるつもりらしい。きっとイグノーラでの戦争後も自分なりに鍛錬を積んできたのだろう。禍々しい魔力を身に纏い、スキル『悪魔の右手』で強化された腕は以前に見た時よりも重く、硬そうな見た目をしている。

 

 本当ならここにいる9人でザキールを囲み、数の力で制圧するのがベストなのだろう。現にグラッジ達も武器を構えて円形に広がり距離を取っている。だけど、この時の俺は頭がおかしくなっていたのだろう……グラッジ達に馬鹿げた指示を出してしまっていた。

 

「みんな、悪いがザキールと1対1で戦わせてくれ。上手く言えないがザキールは俺の手だけで倒しきらなきゃいけない気がするんだ」

 

 

 

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