見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第370話】ジェロイ

 

 

「……貴様らはイグノーラの戦争でアーティファクトを使って俺様のスキル情報を盗み見たはずだろう? だったら俺様が3つ目のスキル『ジェロイ』を使わない理由は分かるだろ?」

 

 俺達がホラを吹いていたことを知らないザキールはスキルを知られている前提で問いかけてきた。少し言い辛いけれど俺が仕掛けた喧嘩だから真実を答える事にしよう。

 

「あー、グラッジが『全知のモノクル』の光でザキールを調べた時のことだが、実はモノクルに表示された古代文字は部分的にしか読めなかったからジェロイとかいうスキルのことを分かっていないんだ。だが、ザキールに揺さぶりを掛けたかったから俺もグラッジも知っているフリをしていたんだ」

 

「ハァ……まさか、200日以上経っている今、嘘だったと知らされるとはな……俺様はつくづく貴様らが嫌いになったぜ」

 

 ザキールは溜息を吐きながら悪態をついているけれど、言葉ほど怒っている様子はない。むしろ少し笑って感心しているように見える。今の俺達がやっているのはただの喧嘩だ、そこに種族の誇りや責任感なんてものは存在しない。ただただ相手を認め合っているだけの時間なのだ。

 

 ザキールは突然大きく深呼吸をして目を瞑ると自身の左胸の辺りに小さな黒炎(こくえん)を生み出した。そして黒炎の中から攻撃能力の無い黒い糸を俺の左胸まで伸ばして付着させると最後のスキルについて語り始める。

 

「勝とうが負けようがガラルドとの戦いはこれで最後だ。特別に3つ目のスキル『ジェロイ』について教えてやる。この黒炎(こくえん)が灯り、黒糸(こくし)で繋がっている間、俺様は繋がっている相手にだけ、いつも以上の力を出せるようになる。ただし、ジェロイを展開している間は黒糸(こくし)で繋がっている相手以外には防御力が激減してしまうデメリットがあるのだがな」

 

「最後のスキルを使えとは言ったが説明してくれなんて言ってないぜ? 随分とサービスがいいな。どういう風の吹きまわしだ?」

 

「単に貴様が塩を送ってきたから俺様も返そうと思っただけだ。それにジェロイで上昇する力は相手に対して抱いている憎しみの総量によって変動する性質があるからな。俺様に激しく恨まれているお前は確実に死ぬはずだ。だから冥土の土産に教えてやろうと思っただけだ」

 

「執念深くてお前らしい能力だな。いいぜ、やれるもんならやってみろよ」

 

 俺は今すぐ倒れてしまいたい体を何とか奮わせ、再度両こぶしを構えた。一方、ザキールは両腕を脱力させて前に垂らし、顔を下に向けて呟く。

 

「これが貴様に抱いていた憎しみの全てだ……簡単に死んでくれるなよ? ジェロイの黒炎(こくえん)よ、俺様にガラルドを倒す力を与えよ」

 

 ザキールが呟くと左胸に灯っていた黒炎はザキールの全身を覆い、まるで黒炎の鎧と言わんばかりの形状へと変化を遂げる。ザキールは先程とは見違えるスピードで突進を繰り出してきた。

 

「なんてスピード――――ぐああぁっ!」

 

 俺が驚きの言葉を言い切る前にザキールの肩が俺の胸へと衝突する。近くの岩に背中から叩きつけられた俺は追撃に備える為、すぐにレッド・モードを展開する。しかし、全ての能力が向上したザキールは俺のレッド・モードでも防御すらままならない打撃を繰り出し続ける。

 

 ザキールの拳撃をガードする度に俺の腕が痣だらけになり、肘からは血が滴っている。このままではマズい……ザキールに最後のスキルを使ってみろ、と偉そうな事を言ったばっかりに殺されそうだ。

 

 次第に腕での防御も出来なくなり、顔と腹に強い打撃をもらった俺は飛ばされた勢いで後ろにある岩場を破壊しながらゴロゴロと地面を転がった。そんな俺を見下ろすザキールの目は冷たく据わっている。恐らくジェロイの反動で心の制御が効かなくなっているのだろう。

 

 逆に考えれば既に消耗している状態からこれだけの破壊力とスピードを生み出し、精神面にまで支障をきたすスキルならば絶対に長持ちしないはずだ。回避と防御主体で長期戦に持ち込めば勝てる可能性はあるだろう。

 

 だが、俺は時間稼ぎなんかで勝ちたくない。勝利を得るなら時間を稼ぐことが正解なのは分かっているけれど、ジェロイで精神を乗っ取られた状態だとしても今の戦いは兄弟喧嘩だ。ザキールの攻撃を防御する事はあっても、消極的な戦いだけはしたくない。

 

 

 

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