見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第374話】魔人ダンザルグ

 

 

 帝国トーマス隊との合流から一夜明け、俺は昼前に目を覚ました。他の皆はとっくに起きていたらしいが、疲れている俺を起こさないようにそっとしておいたのだと同じテントにいるグラッジが教えてくれた。

 

「それじゃあガラルドさんが顔を洗ったらトーマスさんのいるテントへ向かいましょうか。今もソルさんやサーシャさんと一緒に今後の事を話し合っているはずなので」

 

 グラッジの言葉に従い、顔を洗った俺はすぐにトーマスのいるテントへと向かった。テントに入ると奥には昨日大勝利を収めたとは思えないほどに渋い顔をしたトーマス、ソル兵士長、サーシャが座っている。一体何があったのだろうか? みんなに尋ねよう。

 

「おはようみんな、どうしたんだ朝っぱらから険しい顔をして……何かトラブルでも起きたのか?」

 

 俺の問いかけに対し、ソル兵士長が代表して答える。

 

「目覚められたか、ガラルド殿……寝起きに聞かせるには重たい知らせですが聞いてください。実は早朝に魔人ダンザルグが自害してしまったのです。奴の全身には自分で発動したと思われる闇属性魔術の毒が検出されました。誰かも分からないぐらいに黒紫色でドロドロの遺体へと変貌していたのです……」

 

「なんだと……もしかしてダンザルグは拷問を受けて情報を流してしまうことを恐れて自害したのか?」

 

「いえ、どうやらそうではないらしいのです。ダンザルグは我々人間には一切口を開きませんでしたが、一緒に拘束されているザキールとは話をしているようでしたので。その時ザキールには自害する理由を話したらしいのですが……」

 

「話したらしい? その言い方だとザキールから理由を聞けていないのか?」

 

「そうなのです、ザキールはダンザルグとは違った気難しさがありますからね。何も喋ってくれないのです。全く困りましたな……」

 

 ザキールが喋らなかったのは本当に気難しさが原因なのだろうか? 何か別の理由がある気がする。ソル兵士長に口を開かなかったのなら大嫌いな俺にはますます口を開かないかもしれないが失敗覚悟で聞きに行ってみることにしよう。

 

 俺はグラッジとサーシャを連れてザキールが拘束されている岩場へと向かう。そこには大勢の兵士がいて、中心にいる手足を縛られたザキールを離れた位置から円形に囲んでいた。ザキールの危険性を考慮した監視体制だ。

 

 俺は囲んでいる兵士の間を縫って近づくとザキールは哀愁に満ちた顔で俺に声を掛ける。

 

「随分と遅い目覚めじゃねぇかガラルド。お前もダンザルグの遺体を見にきたのか?」

 

「遺体の確認をしにきたわけじゃない、ザキールに話を聞きに来たんだ。ダメ元で聞くがダンザルグが自害した理由を教えてくれないか?」

 

「ソルって男と同じことを聞いてくるんだな。答えてやってもいいが、その前に俺様の質問に答えろ。ガラルドはどうしてダンザルグが自害した理由を知りたいんだ?」

 

「ダンザルグが情報を漏らさない為に死んだのか、人質にされるのを避ける為に死んだのか、もしくはプライド(誇り)を守るために死んだのか、その理由が知りたかったのもある。だが、ここに来た目的は自害の理由を聞くことだけじゃない」

 

「ほう、聞かせてみろ」

 

「残酷な死や刑が迫っている訳でもないのに自害を選択するのには理由があると思うんだ。『何か大きな目的があったのか』『死を以てでも何かを伝えたかったのか』『死の直前に誰かへ想いを託したかったのか』それらの内どれかである可能性があると俺は考えている」

 

「…………」

 

「もし、ダンザルグに叶えたかった願いがあるのなら可能な範囲で叶えてやりたいと思ってる。だから自害した理由が知りたいし、ザキールに遺した言葉があるのならそれも知りたいと思っている」

 

 俺が自分の考えを伝えるとザキールは暫く考え込んでいた。するとザキールは両手足を拘束されたまま数メード離れた位置の地面に手を当てて、土を掘り始めた。

 

 一体何をしているのだろうか? 土を掘るザキールを眺め続けていると、ある程度の深さを掘ったところで中から黒紫色をしたドロドロの物体が姿を現わした。恐らく闇属性魔術で自害したダンザルグの遺体と思わしき物体だ。ドロドロの物体を前にザキールは沈痛な面持ちで語り始める。

 

「自害の理由を知りたいだけではなく、ダンザルグの望みまで考慮してくれるのか。お優しいガラルドに免じて特別に話せることを話してやろう。ソルから聞いているとは思うが、このドロドロがダンザルグの遺体だ。どうやらダンザルグはアスタロト様のみが使える闇属性魔術ザハードを独自に改造した魔術で自害したらしい。この事実が示す通りダンザルグは部下の魔人の中で1番アスタロト様を尊敬していた」

 

 闇属性魔術ザハードと言えば、確かアスタロトがペッコ村でカッツ達を長々と苦しめて殺す為に発動した魔術だ。そんな稀有な魔術を改造して自分のものにするなんて……ザキールの言う通り尊敬の度合いが伺える。もう少しダンザルグについて聞いてみよう。

 

「それじゃあやっぱり、アスタロトに迷惑をかける確率を少しでも下げる為に自害を選んだということか?」

 

「それもあるだろうが、奴は死の直前にこう言っていたんだ『アスタロト様の為なら喜んで死ぬ者がいるのだと人間どもに思い知らせてやりたい。そしてアスタロト様の部下である私は敗北後に潔く散る戦士であると証明し、永遠にアスタロト様の記憶に残りたい』とな」

 

「そんな……人間だろうが魔人だろうが散る事に価値を見出そうとしちゃ駄目だろう……生きていてこそじゃないのか……これじゃあまるで狂信者じゃないか……」

 

「ああ、ガラルドの言う通りだ。俺様はダンザルグのこともアスタロト様のこともよく分からなくなってきたぜ。誰かを崇拝できる人生は幸せで輝いているのかもしれないが、俺様には到底真似できない。アスタロト様の為に働きたいという気持ちはあるが、結局俺様は自分の命が1番大事だからな。記憶に残りたいなんて理由で自害出来るわけがねぇ」

 

 改めてアスタロトの怖さ、カリスマ性を知る事となってしまった。ブロネイルもクローズもそうだが、アスタロトの何がそこまで他者を惹きつけるのだろうか? 俺にはただただ暴走した可哀想な男にしか見えない。

 

 ザキールはダンザルグの遺体の前で膝をついたままを俺の方へ向いて口を開く。

 

「敵であるガラルドに頼むのも癪だが、1つ俺様の希望を聞いてくれないか? その願いはドロドロになったダンザルグの遺体を瓶に詰めて、アスタロト様に渡して欲しい。仮にアスタロト様が勝てばダンザルグに敬意を込めて墓に埋めてくれるだろう。万が一、お前達が勝った時はシンバードの海に流してやって欲しい」

 

「戦いの前後に渡せるタイミングがあったら渡してもいいぞ。だが、俺達人類側が勝った時は本当にシンバードの海に流していいのか? 俺たちなりに墓を建ててやってもいいが……」

 

「フン、魔人ディアボロスの墓を建てようとしたグノシス王やグラドみたいなことを言うのだな。揃いもそろって善人様で感心するぜ。だが、余計な気遣いは無用だ。ダンザルグは元々大陸北の海を愛していた男だ。人と同じ墓地に埋められるぐらいなら海に還りたいと死の直前に言っていたからな」

 

 ザキールはこちらのことを善人様だと揶揄ってはいるが、奴も同じ魔人族の遺志を叶えてやろうとしているのだから一緒ではないのだろうか?

 

 そもそもアスタロトの部下である4人の魔人は仲が悪く、お互いが出世をかけたライバル同士だから仲間ではないと言っていたはずなのだが――――もしかしたらライバル故の想いがあるのかもしれない。

 

 もちろんザキールの申し出を断る理由は無い。俺達は全員ザキールの願いに応えることに決めた。瓶に詰められたダンザルグの遺体と魂に質量以上の重みを感じながら俺達はトーマスのいるテントへ戻る事にした。

 

 

 

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