見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第378話】見せた事のない力

 

 

「敵を殺す事に躊躇していたらこっちが殺されるぞ、ガラルド君!」

 

 

 シンは説教ともとれる言葉を放ち、俺を見つめていた。ストレングにしっかりしろと怒られた時もそうだが俺は彼らと違って甘さがある。覚悟が足りないのかもしれない。

 

 グラッジがブロネイルに凄まじい殺気を放っていたように俺も戦場に立つ戦士として揺るぎない精神を持たなければいけないのだ。シンは先程とは打って変わって優しい笑顔を浮かべると俺に背を向けて語り始める。

 

「いや、甘さを貫く方がガラルド君らしいのかな。今は2つ3つ先の戦争を見据えて戦士の心得を刻ませる時ではないね。ガラルド君はガラルド君らしく最後まで優しくて甘い英雄でいてくれ。ブレずにそのままの君で最終決戦に勝利してしまえばいい」

 

 最初は弱い俺への皮肉かと思ったが、真っすぐで温かい声色からは悪意なんて感じられない。シンは本気で言っているようだ。

 

 俺よりずっと賢くて思慮深いシンが何を以て『そのままでいい』と言ってくれたのか。理解できる時が来るのかは分からないが、今は自分のやれることをやっていこう。

 

 俺は再び拳を構えて周囲のアサシンを睨んだ。奴らはシンを警戒してか、再び距離を取って戦い方を伺っているようだ。もう1度レッド・テンペストを放って頭数を減らすべきだろうか? だが、連発するのも魔量が気になるところだ。

 

 俺が次に取るべき行動を迷っているとシンは自分の剣を鞘に納めて作戦を語り始めた。

 

「ガラルド君、今から30秒だけでいい、時間を稼いでくれないかい? 時間を稼ぐと言っても俺達全員の周囲を回るようにサンド・ストームを展開してくれればそれでいい」

 

「構わないが、時間を稼いだ後はどうするつもりだ?」

 

「サンド・ストームを解除した直後に俺のスキルで纏めてアサシン達を退けるよ。君達に見せた事のない力でね」

 

「見せた事のない力? いや、詮索は後だな、了解した。30秒も防ぎ続けたら流石に俺も疲れちまうから絶対に決めてくれよ? それじゃあいくぜ! サンド・ストーム!」

 

 俺が魔力を解き放つと周囲を砂の嵐が旋回し、アサシン達を一時的に後ろへ下がらせた。大雑把な防御技を前に困惑しているアサシン達。砂嵐の防御壁をナイフで斬りつけ、魔術で削ろうと躍起になっているが単純な力比べなら絶対に負けるつもりはない。

 

 全く問題なく敵の攻撃を弾け続けること30秒――――シンのアイコンタクトを合図に俺はサンド・ストームを解除した。すると、突然シンが自身の身体を白く発光させ、凄まじい魔力を纏いはじめた。

 

 だが、驚いたのは発光だけじゃない。シンの体は地面から少しだけ浮いていて、背中には服越しでも分かるぐらいに強い光で描かれた白鯨モーデックが描かれている、まるで光るタトゥーと言ったところか。

 

「時間を稼いでくれてありがとう、ガラルド君。後は俺が全てのアサシンをやっつける。君達は一か所に固まっておいてくれ。少々危険な範囲技を放つからね」

 

 俺達に注意を促すとシンは目にも止まらぬスピードでアサシンの懐へと移動した。アサシンですら反応できない速度を見せつけたシンは正拳を1発腹に叩き込むだけでアサシンを戦闘不能にしてみせた。

 

 その後もアサシン達の間をジグザグに移動し、次々とアサシンを片付けていくシン。あの強さの秘密は一体何なのだろうか? 背中に白鯨モーデックが宿っている様に見えるからシン本体とモーデックの力が足し算されているのかもしれない。

 

 気が付けばアサシンは残り9人にまで減っていた。シンの圧倒的な強さにたじろぐアサシン達はせめてリリス1人だけでも殺してやろうと考えたのか全員が一斉にリリスに向かって突進を始める。

 

 サーシャ、グラッジは全方位をケアできるように武器を構え、俺はアサシン達が少しでも攻撃しにくくなるように再びサンド・ストームを展開する。それと同時にシンは右手を天に掲げると、勝ち誇った笑顔で魔術を解き放つ。

 

「今から広範囲に氷の雨を降らすよ、ガラルド君達のいるポイントには出来るだけ降らさないように調整するつもりだけど、当てない保証はできない。しっかりと守ってあげてくれよ! アサシンを一掃しろ! アイス・レイン!」

 

 シンが物騒なことを言い残し、魔術を放つと空から夥しい数の(ひょう)が矢を超える勢いで降ってきた。馬鹿げた数が織りなす轟音は目も耳も塞ぎたくなるほどの衝撃だったものの、シンの調整によりサンド・ストームにはほとんど当たっていなかった。

 

 そんな恐ろしいアイス・レインは5秒以上続き、アサシン達は避ける余裕も無く全員がうめき声をあげて戦闘不能になっている……恐ろしい威力だ。

 

 近くにあった底なし沼にも(ひょう)が落ちた影響で泥の飛沫が広範囲まで飛び散っており、沼の容積がかなり減っているようだ、これじゃあまるで隕石だ。

 

 結局ほとんどのアサシンをシンが1人で片付けてしまった。まさか、こんな力を隠し持っていたなんて恐ろしい男だ。

 

 シンは身に纏っていた魔力と背中に光る白鯨モーデックを解除すると、その場にドサッと座り込み大きな溜息を吐いた。どうやら相当疲れているようだ。

 

 サーシャが直ぐに黒猫サクのアクセラで回復を始めるとシンはサクの頭を撫でながら現状を話し始める。

 

「死の山で何があったのかは分からないが助けに来てくれてありがとう。現状を話すと俺とリリス君は突然のシンバード襲撃に為すすべなく東に逃げるしかなかったんだ。ガラルド君達は一体どうやってシンバードの危機を察して戻ってきてくれたんだい?」

 

 俺は死の山でザキールから得た情報をシンに伝えた。頷きながら情報を噛みしめ続けたシンだったが、結局情報交換をしても帝国側が大量の魔獣を動かせている仕組みは分からず頭を悩ませていた。

 

 活路の見えない重苦しい空気が俺達を支配していた。

 

 

 

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