見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第381話】ハイリスクハイリターン

 

 

「まぁ色々と俺の強さの秘密を話したけれど、それでも修行を積んできたガラルド君とグラッジ君は今の俺より強い、だからしっかり守っておくれよ? じゃあスキルの話も終わった事だし、今度はバイオルとミニオスを止める作戦を話し合おうか」

 

 シンが戦争の話題に変えると早速サーシャが手を挙げてシンに質問を投げかける。

 

「シンさんにお聞きしたいのですが、仮にバイオル殿下とミニオス殿下がスキル『ミストルティン』で魔獣を動かしていた場合、どの辺りにいると思いますか? モードレッドさんと旧知の仲であるシンさんが1番ミストルティンの性質に詳しいと思うので推測できそうでしたらお願いします」

 

「う~ん、そうだなぁ。ミストルティンは死の扇動(クーレオン)みたいな『特定の指令』を送る性質のスキルではなく『圧力を掛ける性質』だからね。広範囲には使えても細かい動きは指定出来ないはずだ。だから魔獣群からあまり離れていない位置にいると思うし、魔獣の動きも画一的になものになると思う」

 

「そうですか、なら魔獣群がどういうルートでシンバードに来たのかを知る事が出来れば、バイオル殿下とミニオス殿下の位置を特定することが出来そうですね。サーシャ達は遅れてシンバードに来たので、魔獣群の動きを把握できていません。教えてもらえますか?」

 

「ドライアドをはじめとしたシンバードより西にある国や町から早馬で送られてきた情報によると、魔獣群はドライアドの少し南側を経由しつつ、西から東へ真っすぐ一列にシンバードを目指してきたらしい。だから列を辿っていけば自然とバイオル達と遭遇でき……あっ!」

 

 話の途中でシンがいきなり驚きの声をあげた。理由が分からず俺達が首を傾げていると、シンはこぼれんばかりの笑みを浮かべる。

 

「シンバードに向けられている魔獣群の攻撃を止める方法を思いついたぞ! だけど、その前に確かめておきたいことがあるからグラッジ君の力を借りたい。グラッジ君、リヴァイアサンは水中に潜った状態で最大どの程度まで近づく事ができるかな? シンバードの南側という条件の元、リヴァイアサンに聞いてみてくれないか?」

 

「え? はい、分かりました。少し待ってくださいね」

 

 リヴァイアサンが作り出した泡の中で屈んだグラッジはリヴァイアサンの肌に触れて、質問を投げかけた。リヴァイアサンは水中でも存在感のある重低音の鳴き声で答えを返すと、早速グラッジが訳してくれた。

 

「リヴァイアサンが巨体過ぎる点、そしてシンバードの街に入り込んだ魔獣群の遠距離攻撃を被弾しない距離、2つの条件を考慮すれば2キード……2000メードが限界みたいです」

 

「なるほど、それぐらいの距離なら作戦を実行できそうだな。よし皆、俺の作戦を聞いてくれ。俺達は一旦海中を移動して近づける限界までシンバードに近づいた後、モーデックでシンバード南港へ行きたいと思う。そして『国王である俺は生きているし、ここから逃げさせてもらうぞ!』と叫んでから海中にいるリヴァイアサンの元へ逃げ込もうと思う。そうすれば魔獣群は一旦シンバードに向けている攻撃の手を止めるはずだろう?」

 

 シンが考えた作戦は想像以上に自身を危険に晒すものだった。確かにシンが体を張ればシンバードへの攻撃は一気に軽減されるとは思うがリスクが高すぎる。俺はすぐに反対した。

 

「何度も言っているがシンがやられたらその時点で同盟陣営……いや、人類側は敗北なんだからな? その作戦はあまりにリスキーすぎる……俺は反対だ」

 

「ガラルド君の言う通り『俺が死なないこと』も重要な要素だ。だけど、俺が死ぬ以外にも敗北条件はあるのだよ? それは再起不能レベルまで同盟陣営がやられてしまう事だ。今はとにかく少しでも時間を稼いで近隣諸国からの増援を待ち、帝国・アスタロト陣営を退けなければならない、そうだろう?」

 

「その為に一時的に魔獣群のヘイトを国王である自分自身に向けるという事か。フッ、俺が知っている歴史上、王様が囮をするなんて聞いたことが無いぞ」

 

「今回の戦争はモンストル大陸史上類を見ない大規模勢力同士の戦いだ。それ故に数パーセントの戦力差が響く戦いとなるだろうし、どこの戦力を腐らせていても勝敗に響いてくるだろう。王ですら骨を折る勢いで戦わなければ掴めない白星だ。それに俺は愛する国民を1人でも多く守りたいからね」

 

「分かった、シンの熱意には負けたよ。こうなったら優しい王様にどこまでも付き合ってやるし、絶対に守ってやる。やりたいようにやってくれ」

 

「ありがとうガラルド君! それじゃあ、シンバード港へ出発だ、頼むよリヴァイアサン!」

 

 リヴァイアサンはまだグラッジが言葉を訳していないにも関わらず雄叫びをあげて進み始めた。もはや付き合いが濃くなり過ぎて言葉が通じなくても想いが伝わるようになったのだろうか?

 

 大きくて頼りがいがあり過ぎる盟友の背に乗り、海中を進んだ俺達は僅か数分でシンバード港南側の海へと到着する。シンはサーシャのアクセラによって魔量を回復させたこともあり、活き活きとした顔でモーデックを召喚する。

 

「送ってくれてありがとうリヴァイアサン! それじゃあ、行ってくるよ。出でよ白鯨モーデック! 俺達をシンバード南の上空へと運んでくれ!」

 

 底なし沼があった森で召喚した時よりも更に大きく強そうな白鯨モーデックが出現して海中から飛び出すと、俺、シン、リリス、サーシャ、グラッジを背に乗せて空を駆ける。

 

 猛スピードで空を駆けたモーデックはあっという間にシンバードの上空へ到着し、シンは眼下で戦う魔獣、兵士、ハンター、アサシン達を見下ろしながら過去1番の大声で叫ぶ。

 

「帝国陣営、そしてアスタロト陣営の魔獣たちよッ! シンバード国王である俺はここにいるぞ! 俺を殺す為に街を傷つけることは許さないぞ! 殺したければ、この白鯨を追ってくるといい!」

 

 何千何万の戦闘音が消え、水を打ったように静まり返った。眼下にいる者全てが手を止めシンを見つめているからだ。シンはヘイトが自分に向けられたことを確信すると、すぐにリヴァイアサンの元へ帰るべく、モーデックを反転させる。

 

 しかし、眼下にいる魔獣やアサシン達は目の色を変えると一斉にシンへ向かって遠距離攻撃を放ち始めた。

 

 弓、魔術、投石、投槍など、見るだけで気を失いたくなるような猛攻撃が下から昇ってきている。だが、どれだけの攻撃を放たれようと関係ない。俺達はシンを護衛する為にモーデックの背に立っているのだ。

 

 シンの体力を回復し続けているサーシャを除き、俺とリリスとグラッジは各々が放てる名一杯の防御技でシンとモーデックを守った。

 

「熱砂よ、攻撃を弾き飛ばせ、レッド・ストーム!」

 

「降り注げ氷塊! アイスメテオ・シャワー!」

 

「押しのけろ、岩の抜刀……虹ノ一閃(にじのいっせん)……楯岩撃(ジュンガンゲキ)

 

 高出力と数のぶつかり合いが凄まじい衝撃を生み出し、双蒸撃(そうじょうげき)を彷彿とさせる爆風がモーデックの真下で巻き起こった。モーデックの背から引き剥がされそうになりながらも仲間達で何とか体を支え合って堪える。

 

 ぶつかり合った技と技のエネルギーがどのような反応を起こしたのか分からない。濃霧のように真っ白な煙で不鮮明な空間が生まれ、敵味方ともに周りの景色が見えなくなったからだ。

 

 この煙が晴れたらすぐにまた遠距離攻撃が飛んでくるかもしれない。精一杯警戒していると、煙の奥――――モーデックの尻尾より少し後方から聞き覚えのない甲高い男の声が聞こえてきた。

 

「ほっほっほ、これがシンバードの英雄たちですか、大したものですね」

 

 聞こえてくるはずの無い位置から聞こえてくる声に不気味さを感じた俺は「誰だ! 名を名乗れ!」と叫ぶ。煙が晴れ、目線の先には見た事の無い魔人が浮かんでいた。

 

 その魔人は恐らくザキール達と同格である魔人であり、死の山から飛び立って情報を伝える役割をこなした魔人だろう。

 

 その魔人の見た目は今までに見た事がない紫色の皮膚と羽をしており、目もぱっちりとしていてまつ毛も長く、細身で中性的な見た目をしている。髪も金髪で腰まであるポニーテールをゆらゆらと揺らしている。

 

 声も中性的で高いこともあり、いまいち性別が推測しにくい奴だ。魔人はアンニュイな表情で溜息を吐くと、自己紹介を始める。

 

「はじめましてぇ、シン国王、そして英雄ガラルド。アタシの名前はソニア。アスタロト様、クローズ様の次に偉くなる予定の魔人よぉ。悪いけど貴方達にはここで死んでもらうわねぇ」

 

 

 

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