見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「モードレッド……まさか、総大将のあんたが既にここまでシンバードに近づいていたとはな。シンを直接殺しに来たのか? それとも弟達の敵討ちか?」
俺の問いかけに対しモードレッドは首を横に振ると、ここにいる理由を語り始める。
「シンとガラルドが此処にいるなんて知らなかったさ。ついさっき兵士から報せを受けたばかりだからな。勿論バイオルとミニオスの敵討ちでもない。そもそもガラルドは極度のお人好しだ、バイオル達を拘束することはあっても殺す事はできないだろう?」
モードレッドには見えないようにバイオルとミニオスを拘束して隠したというのにバレバレなようだ。俺は一応反論しつつ、モードレッドの目的を探る事にした。
「さあな。バイオルとミニオスは既に殺しているかもしれないぜ? それか人質として交渉のカードにするかもしれないな。どっちにしても奴らがどうなっているのか答えるつもりはない。だが、モードレッドには俺の質問に答えてもらうぜ。お前はシンが西へ移動したことを知らなかったはずなのにどうしてここにいるんだ? そして、お前の最終目的は一体何なんだ?」
「私の質問には答えないくせに私には答えさせるのだな、まぁいい、教えてやろう。私がここにいる理由はシンプルだ。バイオルとミニオスがシンバード制圧に手間取っているから自ら赴いただけの事だ。我々帝国は1度シンバードの街に侵入できたもののシンバードの戦士と救援に来た同盟国が思った以上に抵抗しているらしくてな。やはり私が直接手を下さなければいけないと判断したわけだ」
「戦況的な事情は分かった。次は戦争を仕掛けた理由について尋ねさせてもらうぜ。帝国はアスタロト陣営と組んで『魔獣、変化の霧、吸収の霧』に手を染めてまでシンバードを攻める理由はなんだ? そんなに帝国の栄光が大事か?」
「簡単なことだ。同盟陣営は一国一国は弱くとも束になると手強く、帝国すら飲み込みかねない程に急成長しているからな。利害が一致するアスタロト陣営と一時的に組んで潰しておく方がいいと判断したのだ。協力して同盟陣営を潰した後は勿論アスタロト陣営とも決着をつけるつもりだ」
「堂々と言い切っていて清々しいくらいだな。帝国は自国の発展・存続の為なら同じ人間である善良なシンバード同盟陣営を皆殺しにしても構わないと?」
「我々帝国も人を殺さずに済むなら殺したくはない。だが、ものごとには優先順位がある。帝国は未来永劫大陸一の国であり続ける義務がある。その為なら手段を選んではいられない。そして全ての歯車は統一された意思で動かなければならない。バイオルとミニオス、そして皇帝である私ですらも帝国の歯車でしかないのだからな」
モードレッドは自分の事をもっと絶対的な王であると主張するかと思っていたが意外な答えが返ってきた。それにアスタロト陣営との協力も一時的なものであり、将来的にはアスタロト陣営も倒すつもりとは……正直驚きだ。
だからといってモードレッドを倒さない理由にはならない。もう少し質問して情報を引き出してから奴と決着をつけることにしよう。
「帝国は将来的にアスタロト陣営も潰すつもりなんだな。って事は勝算があるって事か? アスタロトの弱点を知っていたりするのか?」
「弱点があるなら私が聞きたいぐらいだな。せめてバイオルとミニオスが私と同じレベルまで強ければ対シンバード戦を無事に終えた後、そのまま対アスタロト陣営と戦って情報の1つや2つ持ち帰ってもらう事が出来たかもしれないがね。まぁ元々期待などしていないが2人とも予想以上にあっさりやられてしまったからな。やはり品の無い戦い方をする奴らでは碌な結果を生み出さない」
「品の無い戦いか……父であるアーサーを殺し、弟を駒の様に扱い、グリメンツで人の生き方をコントロールするお前が偉そうに語ってんじゃねぇぞ。俺は旅を通して色々な人間と接してきたが1番血の通っていない人間だと感じたのはお前だぞ?」
あまり面と向かって人格の事を言いたくはないが我慢できなかった。それだけモードレッドに対して怒っているし、モードレッド自身に異常であると気付いて欲しいからだ。
だが、俺の想いとは裏腹にモードレッドは馬鹿にしたように笑い始め、これまでの帝国について語り始めた。
「フッ、そういえば戦争前にグリメンツの霧からガラルドの伝言を聞かせてもらったな。シンに負けず劣らず青臭い男だと笑ってしまったぞ。ガラルドは人間が根本的に善の生き物だと信じているのだろうな。だから皇帝である私の言動に憤り、説教し、生き方を変えてやろうと考えているのだろう? だが、そもそも前提からして間違っている」
「前提だと? どういう事だ?」
「帝国が
「ミストルティンによる魔獣のコントロールがあると知った今では部分的に魔獣を戦力扱いしているのだろうなと考えはじめたよ。それでも帝国は死の山へ兵士を派遣して魔獣を倒す意思を見せている側面もある、だから根本的には魔獣殲滅を願っている国だと思っていたぞ……それすら違うって事か?」
「最終的には魔獣が1匹もいなくなればいいとは思っているが、優先順位が違う。私も歴代の皇帝も魔獣殲滅よりも先にまず他国を滅ぼしたいと考えていた。そして、皇族の血が流れる者の大半がミストルティンを使えるという事実……これが我々をある行動に駆り立てたのだ。それはミストルティンを持つ我々皇族が
「
「ああ、その通りだ。我々帝国は
モードレッドが告げた真実は吐き気を催すものだった。見方を変えれば俺達は魔獣を介して帝国と争っていた事になるわけだ。
俺はリリスと出会う前からハンターとして
それに加えてリリスと出会ってからもヘカトンケイルとシンバードで立て続けに
俺とモードレッドの因縁は思っていたよりずっと前から繋がっていたのだ。それと同時にモードレッドは『レックがハンターとしてヘカトンケイルに滞在』している事実を知ったうえで魔獣群を差し向けた可能性すらある。
最悪の可能性が頭をよぎってしまった以上、真実を確かめないわけにはいかない。俺はヘカトンケイルが襲われた
「まさか、ヘカトンケイルが襲われた
「ほほう、ガラルドは中々勘が鋭いな。その通りだ、ヘカトンケイルを襲わせたのは私の指示だ。当時のレックは愚弟という言葉が相応しい一族の恥だったからな。魔獣群を差し向けて活躍すれば名を売れるうえに経験にもなると考えたのだ。そして、仮に戦死してしまったのならばそれまでの男だったということになる。つまり死を以てリングウォルド家から除名できる。故にどちらに転んでも痛くないというわけだ」
この言葉で確信した。モードレッドは根っこから腐っている人間だ。理不尽な過去によって心を闇に墜とされたアスタロトの方がまだ人間臭くて同情もできる。
モードレッドを倒す事に一片の迷いも無くなった。俺は棍の先端をモードレッドに向けて、宣言する。
「モードレッド、お前に負けられない理由ができた。俺は絶対にお前を倒す、そしてレックへ謝らせてやる」