見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「どうした? 英雄と名高いガラルドの力はこんなものか? これならすぐにお前を倒し、レックに加勢できそうだなァ!」
獲物を捕らえる寸前の様な鋭い目を向けてモードレッドは言い放つ。奴の言う通り、このままではすぐにやられてしまう。せめて『変化の霧』による強化状態だけでも解除出来れば勝てる可能性もあるのだが……。素早く動くモードレッドにレストーレを当てられる気がしない。
モードレッドは打開策を考える時間すら与えてくれない程に連撃を加え、俺がよろけたタイミングで剣を振りかぶる。
「隙を見せたな! これで終わりだ!」
勝ちを確信し、邪悪な笑みを浮かべたモードレッドは垂直に剣を振り下ろす。よろけて左右に避けることも出来ない俺は大ダメージ覚悟で両手を上にあげて回転砂を纏わせた。
モードレッドの振り下ろしに対し、慌てて作った
だが意外にも俺の両腕に走った衝撃は想定よりもずっと弱かった。それどころか振り下ろされた剣は俺の両腕に弾かれた挙句、モードレッドの手からすっぽ抜けて遥か頭上へ跳びあがっている。
モードレッドは目を点にしながら「何が……起きた?」と呟いている。一方、俺は自身の身体を覆っている魔力を見て何が起きているのかを理解した。モードレッドの振り下ろしが当たる直前に黒猫サクが俺の踵に触れてスキル『リパルシブ』を発動したのだ。
リパルシブは重力とは逆の『斥力』を発生させる力だ。故に反発する力が発生したことで体感する衝撃は弱くなり、逆にモードレッドは剣の持ち手に想像以上の衝撃が生じて思わず手を離してしまったのだろう。
モードレッドに見つからないようにサクを移動させたのも凄いが、それ以上に剣と両腕がぶつかる瞬間にリパルシブを発動させるサーシャのセンスに驚かされる。味方ですら言葉を失う程の立ち回りを見せたサーシャに応える為にも、ここでモードレッドにダメージを与えなければ。
「今だよ、ガラルド君!」
サーシャの合図と同時に俺は走り出す。離れた位置に落下した剣を取りに行こうとするモードレッドを後ろから追いかけ、連撃を放つ為だ。
「拾わせないぞ! 喰らえ、レッド・ラッシュ!」
「ぐっ! 小賢しい真似を!」
剣まであと5メードほどのところで俺とモードレッドの打撃戦が始まった。変化の霧で身体能力が上がっているモードレッドは確かに手強い……だが、それでも剣術主体のモードレッドにとって素手オンリーの戦いは都合が悪いようだ。
モードレッドの不慣れな拳撃を躱し、カウンターで俺の拳撃を当ててダメージを与え続ける。少しずつ風向きが俺に向いてきた。
「オラオラ! 剣は拾わせねぇぜ! 拳でやり合おうぜ!」
「チンピラ風情がっ! 図に乗るなよ!」
上の鎧は砕け、顔と上半身が痣だらけになったモードレッドは今日1番の怒りの表情を見せている。するとモードレッドは何故か突然甲羅に閉じこもる亀のように手足を折り畳んでうずくまった。
傍から見れば降参ともとれるポーズをしているものの奴が降参する訳がない。迂闊に手を出すべきではないと動かず身構えていると、モードレッドの懐から魔術の波動が漏れ出しているのが見えた。
奴は少しの停止期間を作り出して魔術を練り込む時間を生み出していたのだ。慎重になって攻撃を止めた俺の判断は間違っていた……俺はうずくまっているモードレッドへすぐに拳を振り降ろす。
「魔術は撃たせないぞ!」
「引っ掛かったな! 喰らえ、アイス・ホールド!」
俺の拳がモードレッドの頭に当たる直前、上体を逸らして両手を前に突き出したモードレッドは手元から強烈な氷魔術を解き放った。目を背けてしまう程の青白く眩しい光が発生すると、一瞬で俺の手とモードレッドの手が一塊の氷で繋がれていた。
まるで氷の手錠とでも言わんばかりの氷塊はレッド・モードの熱を以てしても全く溶ける様子はない。モードレッドは繋がった氷塊を俺ごと持ち上げると、さっきの仕返しと言わんばかりに豪快に振り回し、俺を地面に叩きつける。
「ぐはっ!」
両手を固定されて受け身の取れない俺は後頭部と背中へダイレクトな衝撃を受けた。かなりの勢いで振り回されたが、それでも俺とモードレッドを繋ぐ氷塊は解除されていない。
このまま何度も叩きつけられたら堪ったもんじゃない。次は俺も引っ張って抵抗するべきか? それかどうにかして氷塊を消失させるか? いや、まずは足と
再び氷塊ごと俺の体を持ち上げたモードレッドはさっきと同じ要領で俺の体を振り上げた。体を持ち上げられた以上、引っ張って抵抗する事は出来ない。叩きつけられる直前に足と
しかし、モードレッドは意外にも振り下ろしの瞬間に氷塊を解除して俺の体を遠くへ放り投げてしまった。これではまるで球投げだ。放り投げられて空を舞っていた俺は体を捻ってキッチリと両足で着地し、すぐさまモードレッドに向かって走り出す。
しかし、距離が離れてしまったことでモードレッドは既に落とした剣を拾い上げてしまっていた。これでもう素手のハンデは無くなってしまったことになる。
モードレッドは剣を握って笑みを浮かべると突然、懐から細い針のような物を取り出して自身の首に刺してみせた。すると、モードレッドの腕に浮かんでいた光る紋章が首から腰あたりまで範囲を拡大してしまった。
「ふぅ……やはり、変化の霧を取り入れすぎると気持ちが高まり過ぎるな。だが、これで私はますます膂力と魔力を増大させることができた。おまけに剣まで取り戻すこともできた。もう勝ち目はないぞ、ガラルド」
モードレッドは息を荒くしながらも自信を持って言い切っている。理性を保った状態でまだ強さを上げてくるとは……気が滅入ってくる。だが、モードレッドは変化の霧の追加に満足する事はなかった。更に最悪の言葉で畳みかけてきた。
「先程の攻防はガラルドの強さと粘りもさることながら、サーシャのスキルと機転が見事だった。流石はドライアドの聖女と言ったところか。まずはサーシャから潰させてもらうことにしよう」