見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
「フッ、リリスが感情に任せ、シンの護衛を放棄してくれて助かったぞ。リリスが倒れた今、これで確実にシンを殺す事が出来る」
モードレッドが白鯨モーデックで浮かんでいるシンを見上げながら呟いた。認めたくはないがモードレッドの言う通りだ。リリスが負傷してアイ・テレポートによる護衛が出来なくなることは即ちシンが襲われる事と同義だ。
今のモードレッドの視界には背中を派手に斬りつけた俺ではなくシンしか映っていないようだ。俺はモードレッドが浮いている位置まで
だが、モードレッドはまるで俺の存在を忘れてしまったかのように風魔術で素早く上昇してしまう。地上ですらモードレッドのスピードについていけないというのに空を飛ばれたらお手上げだ。俺はシンに近づくモードレッドを見上げる事しか出来なかった。
一方、シンは白鯨モーデックをその場から動かそうとはしなかった。リリスがいない今、モーデックで逃げても追いつかれてしまうと判断したのだろう。
モードレッドとシンの様子を真下から見上げていてはモーデックの体が陰になってしまい、二人の姿を視認できそうにない。俺は横へ膨らむように上昇しながら2人のいる位置へと向かっていった。
慣れない空中移動で遅れる俺を尻目にモードレッドは空中で魔力を溜め、さっき俺に放ったアイス・バレットをシンに向かって発動していた。
サクリファイスソードで一層強化されたアイス・バレットは想像を絶する威力を有しており、白鯨モーデックの上で立っていたパープルズ全員分の魔術障壁をボロ紙のように打ち破り、衝撃によって飛散する氷片が下にいる俺のところへ降り注ぐ。
今のアイス・バレット1発でパープルズとシンが纏めて殺されたかもしれない…… と心配した俺だったが、衝撃によって発生した白煙の中からはボロボロになりながら5人を守ったモーデックの姿が現れた。
モーデックがアイス・バレットを被弾してから10秒後、ようやくシンのいる位置まで上昇した俺は5人へ「大丈夫か?」と問いかけた。
しかし、パープルズは意識こそ保っているものの4人全員が頭と体から血を流し、返事が出来る状態ではなく今にも倒れてしまいそうだった……。モーデックといえども完全にアイス・バレットを防げた訳ではなかったようだ。
もう戦える人間はシンと俺しか残っていない。シンは歯を軋ませながらボロボロになったパープルズを見つめていた。身を挺して守ってくれた4人の事を思うと悔し気な顔になるのも無理はない。
シンは俺の方へ視線を向けると険しい顔から一変して優しい笑みを浮かべ、俺にお願いをしてきた。
「ガラルド君、すまないが4人を地上へ運んでやってくれないか? 俺は今から合体強化を発動するつもりだ。リリス君がやられた時点で合体強化の準備を進めていたから時間稼ぎをする必要もない。でも発動しちゃうとモーデックが消えてしまって4人が地上へ落下してしまうからね、ガラルド君の手を借りたいんだ」
「お、おい! 1人で戦うつもりか? シンがやられちまったら同盟陣営は終わりなんだぞ?」
「ここはまだドライアド付近でありシンバード領だ。だから
「フッ、命令か、シンからそんな言い方をされたのは初めてだな。あんたがどれだけ本気なのかが伝わったよ。最後は俺が絶対に何とかする……だから絶対に死ぬなよ、シン」
「ああ、もちろんだ」
シンと約束を果たした俺は
俺とパープルズがそろそろ地面に降り立つタイミングでシンは眩い光を放ちながらモーデックの力を取り込み、合体強化を完成させた。離れた位置から見ているから確かな事は言えないがモードレッドもシンも薄っすら笑っている様に見える。
あの2人が本気でぶつかり合ったらどんな戦いになるのだろうか? 危機的状況にも関わらず少しだけ戦士の血が騒いでくるのを感じる。
シンとモードレッドは互いに剣を構える。数秒ほど睨み合うと空中とは思えない高速移動で互いの剣をぶつけ合った。その衝撃は上空で発生したにも関わらず地上にいる俺にも空気振動が伝わってくるほどだ、2人の膂力の強さが伺える。
とはいえ自身の未来を捨ててまでサクリファイスソードによる強化を施したモードレッドとまともに戦えるとは思えない。俺はまだモードレッドを止める方法を思いついてはいないけれど直ぐにシンを助けに行った方がいいのだろうか? どう動くべきなのか分からず揺れていた。
考えが纏まらないまま戦いを眺めていた俺は1つ違和感を覚えた。俺の予想よりもモードレッドの動きが鈍いのだ……もしかしたらシンと比べて空中戦は苦手なのだろうか? それともサクリファイスソードによる負荷が強すぎて早くもガタがきているのだろうか?
どちらにしても風魔術が使えず
その後もシンとモードレッドによる激しい衝突は続いた。剣による突進と高次元魔術のぶつかり合いは隕石と隕石が衝突したかのような迫力で互いを吹き飛ばし合っている。魔術の直線状にあった台地は線状に穿たれ、平原は穴だらけになっていた。
基本的に一点集中型の攻撃が多い俺にはここまで広範囲に衝撃が及ぶ戦いの経験が無い。スキルではなく魔術を極めた者同士による戦いは災害と災害が押し合う様相だ。おとぎ話以上に現実味の無い光景が広がっている。
こんな戦いを繰り広げているモードレッドにもう1度レストーレを当てる事なんて出来るのだろうか? 不安な気持ちで戦闘を見続けていると何かが俺の靴をツンツンと突いてくる感触が伝わってきた。
俺は感触のした方に視線を向ける。そこには血だらけになりながらもシンに負けないぐらい目に闘志を宿したフレイムが口をパクパクさせながら横たわっていた。
喉を潰されたのか、それとも消耗しきっているのか声が聞き取れない。さっき地べたに寝かせたフレイムが何故俺の事を呼んでいるのかさっぱり分からない。耳を近づけて聞いてみる事にしよう。
「どうしたフレイム? 体が痛むのか? 悪いが俺は再びモードレッドのところへ行かなきゃいけないんだ。だから――――」
俺が話していると言葉の途中でフレイムは顔を横に振った。そして、満身創痍のガサガサ声にで自分の考えを伝える。
「ぼ、僕らの魔力を……使って……モード……レッドを……止めてくれ」