見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる 作:腰尾マモル
帝国第4部隊の兵士を背負って走り出した俺はレックとグラッジがいる場所への道順を教えてもらいつつ、これまでに何があったのかを説明してもらっていた。
「では時系列順に説明させていただきます。ドライアドに滞在していた第4部隊の兵士達はドライアドの商人からレック様とグラッジ様のいる場所と状況を秘密裏に教えてもらいました。すぐに助けに行かねばと判断した私達は現場へ直行したのですが、話に聞いていた以上にレック様は自我を失っており、激しく暴走しておりました……」
「レックの暴走っぷりは俺もこの目で見て驚かされた。圧倒的なパワーに震えたよ。言っちゃあ悪いが第4部隊の兵士が駆け付けたところで強さの次元が違いすぎてグラッジの助けにはならなかったと思うぞ」
「ええ、ガラルド様の言う通りです。駆け付けて自分の目で見た瞬間に確信しました。なので私達兵士は2人から距離を取って戦いを見守っていたのですが、そこで問題が起きてしまいました……グラッジ様と私達第4部隊兵がモードレッド様管轄の兵士に囲まれてしまったのです。彼らは私達とは違い魔力砲などの兵器を持つ手練ればかりでした。加えて今回の戦争における第4部隊がシンバード寄りに動いていることも知られており、最悪の状況へと追いこまれたわけです」
「そいつはマズいな……ん? だが、大穴の入り口には誰もいなかったぞ? 皆まとめて下に落ちたのか?」
「…………」
詳細を尋ねると兵士は何故か言葉を詰まらせてしまう。背負っているから表情こそ見えないが何となく話し辛そうなのが伝わってくる。
返答を急かさずに暫く待っていると彼は自分なりに言葉をまとめて状況を語ってくれた。
「戦力にならない私達とは対照的に兵器を持った帝国兵は数が集まれば充分脅威になると判断したグラッジ様は驚きの行動に出ました。このままではグラッジ様1人対レック様&兵器所持の帝国兵という状況になるのを避けるために爆発で地面に衝撃を与え、私達とグラッジ様とレック様だけが下に落ちるように崩落させたのです。結果、兵器所持の帝国兵と私達は分断されて守られる形となりました」
「そうか、それじゃあ崩落はグラッジの手によるものだったんだな。恐らく地面を爆破したのも
「敵兵は暗い大穴の中を追ってこられない事情があるのです。それは敵兵の中に魔力砲やサクリファイスソードを持つ者はいても『変化の霧』による強化を施している者は1人もいなかったからです」
「ん? 魔力砲やサクリファイスソードを使う者が追ってこられない理屈がよく分からないぞ? どういう事だ?」
「魔力砲などのいわゆる『吸収の霧』を利用した兵器は他者から魔力を吸い取って自身を強化する反動で自我をコントロールする事が難しくなります。加えて興奮状態になり破壊衝動も強くなります。ですので暗闇の中で冷静に索敵しながら戦うことが難しいのです。そう言う意味では変化の霧によって暴走しているレック様の方がまだ理性的で暗闇にも順応できるのです。私達がグラッジ様に『霧の情報』を伝えたことによって地面を破壊して落とす作戦を閃き、落としてもらえたのです。魔力砲を使っていない敵兵は暗闇だと分が悪いと判断したらしく増援を呼びに行ったようですね」
「だから一時的に大穴の入り口に人がいなかったのか。だったら俺達が大穴を出る頃には敵兵に入口を囲まれているかもしれないな……。それに待機しているリリス達も心配だ。シンがいるから大丈夫だとは思いたいが……」
「こんな厳しい状況の中、我々第4部隊が全く役に立てず申し訳ございません……」
「いや、そんな事はないさ。貴方達の助言があったからグラッジは下に逃げる手を打てたわけだろ? それに貴方がいなければ俺はグラッジとレックの元へは辿り着けないからな、感謝してるぞ。それより、もう1つ聞きたいことがある。どうして外に出ようとした貴方があんなにも消耗していたんだ?」
「その答えは……あちらを見てください。あそこにいるレック様の挙動が答えになります」
俺に背負われた兵士は震える腕を伸ばして北方向を指差した。すると、遠くに光魔石で照らされたかなり広い空間があり、第4部隊と思われる20人以上の兵士が集まってレックを囲んでいた。どうやらレックを止めようとした結果消耗したようだ。
よく彼らは生きて逃れられたものだなと感心しつつ、異様な光景に驚かされた俺はすぐに第4部隊の人達を助けに行かねばと全力で走った。すると、彼らに近づいたことで俺は更に驚かされる。
なんとレックがほとんど無傷なのにも関わらず、かなり消耗しているのだ。加えて囲んでいる第4部隊の兵士達は全員が無傷状態で立っている。兵士達がボロボロでレックがピンピンしている状況なら分からなくはないが現実は逆の状態になっている。
レックを囲む兵士達の後ろで戦況を眺めていた俺は訳の分からない状況に困惑していると背負っている兵士が「後ろを見てくださいガラルドさん」と言ってきた。急いで後ろを確認すると、そこには別の兵士に担がれてボロボロになっているグラッジの姿があった。
グラッジは到底戦えそうにはない程に消耗し、体から血を流しているが、そんな事はお構いなしに俺へ話しかけてきた。
「ガ、ガラルドさん……助けに来てくれたんですね……ここに来られたということはモードレッドを止められたんでしょうか?」
「ああ、結果的に奴はサクリファイスソードの反動で亡くなってしまったが、一応止める事はできた。それにリリス達も全員無事だぞ。だが、今は俺達の事よりグラッジ達の事を聞かせてくれ。グラッジが意図的に崩落させたところまでは聞いたが、その後はどうなったんだ? 無傷の兵士がレックを囲んでいる異様な状況は一体なんなんだ?」
「分かりました。僕らが大穴に落ちた後、何があったか全てお話しします。レックさんの視界に入ってしまう前にひとまず向こうの岩陰に隠れましょう」