見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第409話】外からの光

 

 

 変化の霧の呪縛を乗り越えて気を失ったレックを地面に寝かせた俺は安堵の涙を出し切り、放心状態になっていた。

 

 そんな俺を心配して見つめていた兵士の1人が話しかけてきた。

 

「あの~、ガラルド様、体の方は大丈夫でしょうか? もし、平気でしたらこれからのことを相談したいのですが」

 

「ああ、すまない。一段落してボーっとしていたよ。問題ないから話を聞かせてくれ」

 

「分かりました。では、次に私達がどう動くべきか提案させてください。ガラルド様が降りてこられた大穴は恐らく今頃帝国兵に囲まれている事でしょう。もしかしたら次期皇帝……次期最高責任者となるベラン様も来ている可能性もあるでしょう。ですので別の出口を探し出して地下空間を脱出するべきだと考えています」

 

「別のポイントから出るのは賛成だ。だが、動き出す前に1つ教えてくれ。次期最高責任者と言っていたが、もう決まっているのか? いくら俺達がモードレッドを倒し、バイオルとミニオスを拘束したからって早すぎはしないか?」

 

「帝国には皇族直系の血筋を軸にしたうえで基本的には年齢順、つまり親、子供、孫の順に皇帝の座が引き継がれていきます。厳密に言えば兄弟も順番に組み込まれますのでアーサー様、モードレッド様、バイオル様、ミニオス様の順になりますね。とはいえシリウス様は皇族を追放されましたし、レック様は変化の霧によって半ば兵器扱いにされていたので枠組みから外れます。故に直系血筋の者がいなくなった今の帝国は分家の長ともいえるベラン様が引き継ぐ形となるのです」

 

 政治から街の外観まであらゆるものがカッチリとしている帝国らしいというべきか。モードレッドの言う通り皇族であろうが繁栄の歯車でしかないと全員が自覚している感じだ。

 

 ベランという男がトーマスのように話の分かる男ならいいのだが、モードレッドと共にシンバード襲撃軍の指揮を取っている以上期待は出来なさそうだ。それでも一応どんな男なのか聞いておこう。

 

「そのベランってどんな奴なんだ? 第4部隊とはいえ敵国であるシンバードの人間である俺に言いたくないかもしれないが教えて欲しい」

 

「ガラルド様はドライアドを分け合う仲間であり、私達がお慕いしているレック様を救って頂いた恩人なのですから当然お教え致しますよ。それにベラン様はレック様たち4兄弟を常日頃から邪魔に思っている人なのでモードレッド様亡き今、レック様と我々第4部隊を潰そうとするでしょう。ベラン様……いや、ベランほど合理的かつ狡猾な思考を持った帝国軍人はいないので……」

 

「教えてくれてありがとう。今の言葉だけでベランが凄く嫌われているってことが分かったよ。それじゃあ早速別の出口を探すとするか。兵士達には出口を見つけるアテはあるか?」

 

「確信は持てないのですが、先程別の兵士から少しだけ風の流れを感じる場所があると報告を受けました。もしかしたら抜け穴や出口に繋がっているかもしれません。方角は東側……つまりガラルド様が歩いてきた大穴の方とは真逆の位置になります。ガラルド様はお疲れでしょうからレック様共々私達がおぶって運ばせていただきますね」

 

「それは申し訳ないから遠慮しておく……と言いたいところがだが、貴方の言う通り正直限界だ。甘えさせてもらう事にするよ」

 

 俺は兵士におぶってもらい、レック、グラッジ、第4部隊と共に東側へと進んでいった。兵士達も疲れているはずだから体格の良い俺をおぶってもらうのは申し訳ない気持ちになってくる。

 

 だから、せめて体力の回復を早めて少しでもおぶってもらう時間を減らさなければ。俺は心地よく揺れる背の上で少しだけ眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガラルド様! 起きてください、どうやら無事出口に出られそうですよ!」

 

 閉じた視界に聞き覚えのある兵士の声が聞こえる。この声はさっきまで俺と話していた兵士だ。俺は少しだけ体力が回復したのを感じながら目を開ける。前方斜め上から一筋の光が降りてきているのが見えた。

 

 その光の先にはうっすらと青空が見える。俺達は無事出口を見つけることが出来たらしい。

 

 背におぶられたまま後ろを振り向くと一定間隔に目印となる松明が光っているのが見える。1番遠くに見える松明の光はさっきまで俺とレックが戦っていた場所を照らしている。

 

 目測ではあるが俺達は3キードほど緩やかな上り坂を運んでもらっていたようだ。恐らく20~30分ほど眠っていたのだろう。この間にレックも少しだけ体力が回復できたらしく、俺が起きた数分後に目を覚ました。

 

「ん? 俺は眠って……しかも運ばれていたのか。ここはどこだ?」

 

 出口を目指していることを知らないレックは困惑しているようだ、説明しておこう。

 

「よう、お目覚めだなレック。疲れて動けなくなった俺達は兵士達に出口まで運んでもらっているところだ。もちろん大穴の入り口ではなく、別の出口にな。これで第4部隊以外の帝国兵に見つからずに済むかもしれない」

 

「なるほどな。部下達にも世話になりっぱなしだな」

 

「ああ、そうだな。後でたっぷり恩返ししろよ」

 

「分かってるさ。今の俺は救われた立場だからな。寝て起きて少し体が軽くなったことで改めて実感するが俺は本当に生きているんだな……。あれだけ暴走していたのに嘘みたいだ」

 

「大昔にレストーレを拾ってきてくれたシリウスにもお礼しなきゃだな。ところで話は変わるが体の方は大丈夫か? もう完全に変化の霧は体内から消え去ったか?」

 

「ああ、体内に違和感も無いし暴走する気配もない。ただ、1つだけ気になるのは左の鎖骨から首にかけて紋章が残っている点だけだな」

 

 紋章が残っているというレックの言葉が気になり注視してみると確かに首元から変化の霧発動時に光っていた紋章が見える。といってもさっきまでの光る紋章とは違い、薄くタトゥーを彫っているような見た目だが。

 

 完全に消えたわけではない紋章に不安が増してきた。俺はもう1度念を押して大丈夫なのか尋ねることにした。

 

「しつこく聞いて悪いが本当に大丈夫なのか? 残った紋章がどうしても気になってしまって……」

 

「ああ、学問的な根拠は無いんだが、不思議と絶対に大丈夫だと確信が持てる。今までは変化の霧が血や内臓にまで侵食している感覚だったんだが、今は変化の霧を装備や魔力として『纏っている』感覚に近いんだ。だから暴走する心配はないと思う。それに1度暴走してから元に戻ったことで分かったこともあるしな」

 

「分かったこと?」

 

「変化の霧に浸食されていたとはいえガラルドを嫉んでいたのは本心だ。変化の霧は火種に油を注いだだけに過ぎない。少しでも邪念があるからこうなったのだからな。本当に……本当にすまなかった……」

 

「もう、その話はいいって。さっきも言ったが人間に打算や邪念はつきものだ。俺は減点式で人を量るつもりはない。過去の自分を反省し、命懸けで俺達の事を助けてくれたレックが俺にとっての友人だ。だから今回の話はここでおしまいだ。それにレックが発するべき言葉は謝罪の言葉じゃない、お礼の言葉だ」

 

「謝罪の言葉じゃない……か。そうだな、お礼の言葉の方がよっぽど互いにとって気持ちいいものだしな。ありがとうガラルド、グラッジ殿、そして我が自慢の部下達よ」

 

 暗い地下空間の中でもレックの晴れやかな笑顔をしっかりと確認できた。これでレックが自分を責める事はないだろう。その後も俺達は兵士達におぶってもらいながら進み続け、外から差す光に触れられる位置まで辿り着いた。

 

 兵士達の中で地属性魔術が得意な者が集まって5分ほどで簡易的な土の螺旋階段を作り上げてみせた。俺達は全員で高さ50メード程の螺旋階段を登り、外へと顔を出す。

 

 ずっと暗い地下空間にいたから太陽の光が眩しく感じる……。平原の爽やかな風が凄く気持ちよくて俺の肺をクリアにしてくれているようにすら思える。幸い出口の周りには帝国兵も魔獣もいない、安全に全員が地下空間を出る事が出来た。

 

 後は何とかシン達と合流しつつ安全な場所へ移動して休みたいものだ。これからどう動くべきか地べたに座って考えているとグラッジが血相を変えて俺の体を引っ張った。

 

「ガ、ガラルドさん! こっちへ来てください!」

 

「な、なんだよ、そんなに慌てて。俺はまだ疲れて――――」

 

 グラッジが連れてきたポイントは地下空間の出口より少し高い位置で、辺り一帯の平原を見渡せるポイントでもあった。そこでグラッジは西側を指差しながら声を震わせる。

 

「向こうで大量の帝国兵が白鯨モーデックを……シンさん達を囲んでます!」

 

 

 

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