見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第410話】自慢の部下

 

 

「向こうで大量の帝国兵が白鯨モーデックを……シンさん達を囲んでます!」

 

 グラッジの指さす西方向に下っていく坂……その終点にある大穴の上空でシン達が白鯨モーデックに乗って浮かんでいる。そんなシン達を逃さないと言わんばかりに大量の帝国兵達が下から見上げている。

 

 恐らくシンは大穴という地形を逆手に取り、敢えて大穴の上で浮かぶことによって帝国兵達が近づけないようにしているのだろう。

 

 俺が大穴を降りて第4部隊の兵士から話を聞いた時点で帝国兵に囲まれる可能性を考えてはいた。けれど想像以上に帝国兵の数が多い。

 

 加えて帝国兵達の囲み方が妙だ。帝国兵達はシン達をぐるりとドーナツ状に囲むのではなく、大穴付近から10メード程の等間隔で東西南北に兵士が並んでいる。まるでチェック柄のような配置は軍演習やパレードを彷彿とさせる。

 

 幸いシン達は遠距離攻撃を喰らっている様子は無く、帝国兵達は見上げることしかできないようだ。とはいえ、あのままではシンの魔量が切れて落下するのも時間の問題だ、すぐに助けに行かなければ。俺は早速皆へ呼びかけた。

 

「このままじゃシン達が危ない、早く助けに行こう!」

 

 

――――ちょっと待ってくれ!――――

 

 

 俺が呼びかけるとすぐにレックが止めに入り、自身の考えを語り出す。

 

「俺もガラルドもグラッジ殿も消耗しきっている。今の状態で助けにいくのは無茶だ! かと言って第4部隊の兵士達だけでは中央にいるシン殿まで辿り着けはしないだろう。幸い俺達はまだ帝国兵達に見つかっていない。ここは慎重に考えるべきだ。それに俺達は帝国兵達があれ程までに散在している理由すら分かっていないのだぞ?」

 

「確かに帝国兵達が展開している陣形は謎さ。だが、狙いが分かったとしても広くて見渡しの良い平原で打てる手なんて無いだろ? 心配しなくてもレック達は休んでていい。ある程度魔量を回復させた俺が一直線に包囲網をぶち破るからな」

 

「何を言ってるんだ、強がりも大概にし――――えっ?」

 

 レックは反論の途中で言葉を詰まらせた。その理由を俺は知っている。何故なら俺が目の前で強い魔力を纏い、魔量をかなり回復させていることを証明したからだ。

 

 たった数十分眠っただけなのに俺の魔量は3割程度回復していたのだ。まるでサーシャのスキル『アクセラ』で回復してもらったかのような速度に自分自身驚いている。

 

 今までも他の人間に比べて回復速度は早い方だったが、それにしたって異常な回復速度だ。俺の中で何か大きな変化が起きているような気がする。それが絶対に仲間を守りたいと思う集中力が生み出した結果なのか、それとも何か別の理由があるのか、俺には分からない。

 

 レックは俺の魔力を見て驚いたものの、すぐに冷静になり、微笑を浮かべながら呟く。

 

「全く……これじゃあどっちが霧の力に浸食された化け物か分からないな。まぁいい、想定よりも回復していたのは嬉しい誤算だ。ガラルドが助けに行くのも止めはしない。だが、それでももっと合理的な攻め方はあるはずだ。しっかり考えてから突っ込んでも遅くはあるまい」

 

「分かったよ。でも、シンの魔量がどれぐらい残っているか分からない。さっさと作戦を考えて助けに行きたい。皆、どうか俺に知恵を貸してくれ」

 

 それから俺達は坂の下にいる帝国兵達に見つからないよう岩陰に隠れたまま、どうやってシン達を助け出すか話し合った。

 

 俺、レック、グラッジだけでなく第4部隊の兵士からも色々と意見が出たものの、どの救出方法でもリスクを負うのは変わりなかった。結局、第4部隊の兵士に俺達を守ってもらいながら下り坂を勢いよく下りて、大穴付近にいるであろうベランに接触する流れに決定した。

 

 第4部隊が道を開き、俺、グラッジ、レックがどうにかしてシンを救い出すという場当たり的でシンプルな作戦になってしまったが、とにかく頑張るしかない。

 

 一応レックがベランを説得できないのか尋ねてもみたけれど、レック曰く

 

「ベランはシンか俺達4兄弟、どちらかを殺せるとしたら間違いなく俺達4兄弟を殺すぐらい嫌っている。だから説得はまず無理だろうな」

 

 と厳しい答えが返ってきた。もう覚悟を決めて命懸けでシン達を救い出すしかないようだ。

 

 これで俺達の次の行動は定まった、後は実行に移すだけだ。俺は全員に移動開始の合図を送ろう……としたところでグラッジが突然手を挙げて提案をもちかける。

 

「ちょっといいですか? 坂道を一気に下って帝国兵の包囲網に突っ込んでいくなら良い考えがあります。それは下り坂を利用して一気に距離を詰める作戦です。僕達はこれから地属性魔術か氷魔術で厚めの板を作り、下り坂を滑って下りて行くんです。どうでしょうか、ガラルドさん?」

 

「そんなことが出来るのか? 確かにここの坂はそれなりの傾斜があるし、大穴まで一直線ではあるが……」

 

「普段なら少し勢いが足りないと思いますが、幸い今日のシンバード領は雨上がりですから坂の地面は濡れた草がひしめいています、滑るにはもってこいです。それに平原の植生は短めの草が広がっていて坂道も例外ではありません。風魔術を使って加速させられる者もいますし、敵に考える時間を与えずに突っ込むのに適した移動方法だと思います」

 

「まるでサーシャみたいな奇策を考えるじゃないか、凄いなグラッジは。それじゃあその作戦でいこう。坂道を途中まで帝国兵に見つからないように移動して、ある程度近づいたらグラッジの提案した移動方法で一気に中心へ近づこう。今なら帝国兵の視線は全てシンと大穴に集まっている、それなりに近づけるはずだ」

 

 結果的に俺達は狙い通り帝国兵に見つかることなく大穴から1・5キードほど離れた位置まで近づく事ができた。あまり人数が多くなかったのが功を奏したようだ。

 

 岩陰に隠れて石や氷の板を用意した俺達は俺のハンドシグナルを合図に一斉に大穴へ向かって滑り出した。帝国兵達は自分達から見て東側が突然騒がしくなったのを感じ、目線を坂道に向けると全員が目を点にして驚いていた。

 

 帝国兵に視認された以上、もうコソコソと口を閉じる必要はない。俺は第4部隊の士気をあげる為に大声で鼓舞する。

 

「今こそ反逆の時だ! このまま一気に突き抜けろ!」

 

 

――――ワアアアアァァァァァ――――

 

 

 第4部隊の大歓声と共に高速移動の勢いを乗せた俺達は兵士達の包囲網を一気に駆け抜けた。目測だが、ここから後800メード程進めば大穴……つまりベランの元へ辿り着けるはずだ。

 

「シンバードの戦士とレック様……それに第4部隊の奴らが攻めてきたぞ! 総員 中央へ近づけさせるな!」

 

 帝国兵の1人が大声で指示を出した。既に滑りによる移動は勢いが消えている。ここからはダッシュによるシンプルな一点突破のフェーズだ。

 

 第4部隊の戦闘力がどれほどのものか分からないが、とにかく彼らに頼るしかない。俺とグラッジとレックは護衛に守られる王様のように堅く死守されながら、一歩一歩ベランがいるであろうポイントへと近づいていった。

 

 散らばっているとはいえ数の多い帝国兵の包囲攻撃を第4部隊の面々だけで耐えるのは短時間でも厳しいだろう……と考えていた俺だったが予想は良い意味で裏切られることとなった。

 

 流石はレックに鍛えられている第4部隊の面々だ、1人1人がかなりの強さを持っている。ソル兵士長の部下達みたいに集団で1つの技を極めているわけではないが、シンプルに近接戦闘・魔術に優れた者ばかりだ。

 

 俺、グラッジ、レックを守る円形の守りは全く危なげなく前進を続け、帝国兵を退けながらたった5分ほどで大穴付近までの移動することができた。彼ら第4部隊の面々と戦う事にならなくて本当によかった……と安堵する中、レックが自慢気に笑う。

 

「流石は俺の自慢の部下達だな。少数とはいえこれだけ優れた兵団はそうそうおるまい。シンバード兵団よりも優秀……いや、大陸一と言ってもいいのではなかろうか。どうだ、ガラルド?」

 

「得意満面ってのはこういうことを言うんだろうな……。親馬鹿ならぬ隊長馬鹿というべきか。まぁ役に立ってくれるなら何でもいいさ。それより大穴の前に立ったら、いよいよシンを助け出すぞ。まずは浮くのに手一杯になっているシンを地面に降ろして、そこから包囲網を脱出す――――」

 

 

 

――――勝手に連れて行かれては困りますなぁ、ガラルド殿――――

 

 

 

 俺の言葉を遮るように鼻につく甲高い男の声が聞こえてきた。声のした方を振り向くと、そこには多くの兵士に囲まれた銀色の派手な鎧を着た初老の男が立っていた。

 

 初老の男は俺達を囲んでいた帝国兵を少し離れさせると自身がつけていた兜を外し、綺麗に整った短い白髪を掻きあげてこちらへ一礼し、自己紹介を始める。

 

「初めまして、英雄ガラルド殿。私はモードレッド様の後任ベランと申します。あなた方が自ら死地に飛び込んでくださり手間が省けました。ありがとうございます」

 

 

 

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