見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第415話】廃王園

 

 

「嫌だなぁ~、今日の私は戦いに来た訳ではないよ? アスタロトから伝言を預かってきただけなのだけどね~」

 

 クローズは過去視や湖の洞窟で見た時と変わらない飄々とした態度で話している。個人的にはクローズが世界で一番信用のならない男だと思っている……だから僕はすぐに緊急事態を知らせる赤色の信号弾を空へ放った。

 

 信号弾を見つめるクローズは「まぁ、別にギャラリーが増えても構わないけどね。お望みなら仲間が来るまで待ってあげるよ」と余裕の表情で言い放ち、何もせずに空へ浮かび続けていた。

 

 信号弾を放ってから30秒ほど経ったところでシンさん達が集まり、ドライアドにいる主要メンバーのほぼ全員が揃ったところでレックさんがクローズに問いかけた。

 

「久しぶりだなワン、いや、クローズと言った方がいいか。時々モードレッド兄さんの横にいるのを見た事があったが、まさかお前が諸悪の根源だとは思わなかったぞ。お前が敵陣ど真ん中へ伝言を届けにくる為だけにわざわざ単身で飛んでくるとは思えない……本当の狙いは何だ?」

 

「う~ん、本当に伝言を届けに来ただけなのだけどねぇ。今までの行いが悪すぎて信用してもらえないのかな? だったら信用してもらえるように動くしかないねッ!」

 

 言葉の最期で急に語気を強めたクローズは魔力の翼を激しく動かし、超スピードで僕から後方10メードほどの位置にいるシンさんの元へと急降下する。

 

「ちょっとだけジャッジメントを借りるよ」

 

 そう呟くとクローズは目にも止まらぬ速さで手を動かし、一瞬でシンさんからジャッジメントを奪ってしまった。いくらシンさんが疲弊していてスキルを発動していなかったとはいえ、とんでもない速さだ。

 

 言葉を失っているシンさんを尻目にクローズは15メード程離れた位置に素早く移動すると「今まで喋ったことに嘘偽りはないと誓うよ」と呟き、ジャッジメントを自分の腹へと突き刺した。結果、刀身は真実を示す青の光に染まっている。

 

「ね? 言ったとおりでしょ? これで戦う意思も無く、伝言を届けに来ただけだと証明できた。私が伝えに来たアスタロトの言葉は至ってシンプルでね……『私はシンバードの廃王園(はいおうえん)で待っている。此処こそが全ての決着をつけるのに相応しい場所だ』……だってさ」

 

 シンバードの廃王園(はいおうえん)とはどんな場所なのだろうか? 仲間内で比較的シンバード滞在歴の短い僕はまだ行ったことのない場所なのかもしれない。

 

 僕は詳細を尋ねる為にシンさんの方へ視線を向けると何故かシンさんは険しい顔をしていて質問できる雰囲気ではなかった。シンさんは暫く沈黙を続けた後、クローズを睨みながら問いかける。

 

「何故お前らが廃王園(はいおうえん)を知っているんだ? あの場所は俺と四聖を含む一部の人間しか知らないはずだ……」

 

「君達より何十倍も長生きしているからね。昔の地理や歴史に関しては誰よりも語れる自信があるさ」

 

 2人が話している廃王園(はいおうえん)という存在がどうしても気になる僕は勇気を振り絞り「シンさん、廃王園(はいおうえん)について教えてください」と尋ねた。するとシンさんはバツが悪そうな顔で教えてくれた。

 

「数千年前……とある王国が大規模な地形変動に巻き込まれる事件があったらしくてね。大地が街を丸々覆いかぶさる形となり、滅んでしまったみたいなんだ。そして月日は流れ、滅びた国の真上に覆いかぶさった大地の上に新たな国が出来た、それが今のシンバードなのだよ。俺はシンバードを作るずっと前から地下深くにある廃国の跡地……つまり廃王園(はいおうえん)で秘宝を探していたんだ」

 

「シンバードの遥か下に国があったなんて……もしかして秘宝ってジャッジメントの事ですか?」

 

「ああ、その通りだ。と言ってもジャッジメントだけを探していた訳ではない。単に冒険心を刺激する地下王国で秘宝や楽しい冒険が待っていないかと思って潜っただけなんだけどね。ただ、地下王国である廃王園(はいおうえん)は俺が思っていた以上に力を秘めた場所だった、と言うのも廃王園(はいおうえん)には――――」

 

 それからシンさんは廃王園(はいおうえん)について詳しく語ってくれた。シンさん曰く廃王園(はいおうえん)はカリギュラのアビスロードに近い性質の場所らしく、下に潜れば潜るほど高価で歴史的価値のある宝が出てきたらしい。

 

 ジャッジメントは地下300層あたりの位置で見つけた台座に刺されていたらしく、石碑には使い方と廃王園(はいおうえん)の歴史などが書かれていたらしい。

 

 シンさんを慕う人々から新しい国を作ってくれと言われた際、最初の頃は廃王園(はいおうえん)で得た財宝を元手にして人や資材を集め、少しずつ規模を大きくしていったらしい。レックさんは『シンバードを10年ちょっとで大国に仕立て上げられた理由がようやく分かった』と納得していた。

 

 シンさんが話を終えるとクローズは小馬鹿にした笑みを浮かべる。

 

「まるで稀代のカリスマ扱いされているシンバード国王様は蓋を開ければ運が良いだけの男だった訳さ。元手となる金銀財宝を小出しにすることで経済大国の仮面を被り、偶然手に入れたジャッジメントを政治に利用して『闘争と(まこと)の街』なんていう大層な看板を掲げていたのさ」

 

 クローズの言葉を受けたシンさんは下唇を噛みながら堪えている。そしてクローズは更に罵倒を続けた。

 

「大陸各国から一目置かれている男の正体なんてこんなものさ。シンという男じゃなくても廃王園(はいおうえん)の存在さえ知っていれば今のシンバードを築き上げる事は可能なのさ。どうだい? 君達の慕っている男は想像よりずっと浅さかったわけだ、ガッカリしただろう?」

 

 

――――馬鹿を言うな。どんな過去があっても、シンは俺達の誇りだ

 

 

 僕の後ろ側から突然クローズを否定する声が聞こえてきた。僕が慌てて後ろを振り返ると、そこには疲弊した体を引きずりつつも瞳に闘志を宿したガラルドさんが立っていた。

 

 眠っていたはずのガラルドさんがここにいるという事は信号弾の音で起こしてしまったのかもしれない。だけど、ガラルドさんの一言は場の空気を一気に変えてくれるパワーがあった。シンさんの表情が少しだけ明るくなったのに対してクローズが渋い表情をしていたからだ。

 

 ガラルドさんはゆっくりとクローズの前まで歩いていくと凄味のある声で話し始める。

 

「シンが廃王園(はいおうえん)とジャッジメントを見つけたのは確かに偶然かもしれない。だが、シンの夢と冒険心と努力が運を手繰り寄せたんだ。動かない者に運は巡ってこないからな。それにシンは掴んだ幸運を私利私欲ではなく、すべて他の誰かの為に使ってきた。そんなシンだからこそ皆がついてきたんだ。お前の罵倒は的外れなんだよ」

 

「フッ……そうか、英雄ガラルド殿は戦闘だけでなく口も達者なようだね。言い返すのは止めておこう」

 

「そうかよ、だったらさっさと自分の居場所に戻るんだな。それともここで倒されていくか?」

 

 ガラルドさんの挑発を受けたクローズは視線を下に落とすと大声で笑い始める。

 

「ハッハッハ! 流石はグラドの息子だ、君は本当に面白い。グラドに似た闘志と正義感、シルフィさんのような優しさ、アスタロトが直々に叩き潰したくなるわけだよ。それじゃあ予定を変更して挑発に乗ってあげよう。少しだけ暴れさせてもらおうかな」

 

 

 

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