見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし リベンジ果たして成りあがる   作:腰尾マモル

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【第417話】レックの奇策

 

 

 クローズがドライアドから飛び去っていくのを見届けた僕達は明日の事を話し合う為に集会所の円卓を囲んでいた。

 

 シンさんが中心となって話し合いは進み、まずはシンバード付近の現状がある程度分からないと具体的な攻め方は決められないとシンさんは語る。一旦、僕たちは断続的に遠方を調べに行っている兵士達の帰還を待つことにした。

 

 僕らが集会所に入ってから20分後、ちょうどシンバード方面から帰ってきた第4部隊の兵士から早速シンバード周辺の戦力状況を尋ねることにした。

 

 結果、シンバードには40名ほどのアサシンと5万匹ほどの魔獣が守りを固めていることが判明する。この5万匹は恐らくアスタロトが魔人としてスキル死の扇動(クーレオン)によって使役している魔獣だと思われる。

 

 イグノーラや死の山での戦争を経験した僕達なら5万匹ぐらいの魔獣包囲網なら突破できそうな気がする……と思ったけれど兵士曰くウッド・ローパー級の強力な魔獣が点在しているらしい。

 

 確かアスタロトはザキールほど死の扇動(クーレオン)が得意ではないと言っていたはずだ。だからこそ数が少なくても強力な戦陣を張れるように一個体の平均値を上げているのかもしれない。

 

 厳しい状況をシンさんは唇を噛みしめながら分析していた。

 

「う~ん、これは中々厳しいね。数だけなら大したことはないけれど報告書を見る限り強力な個体が多過ぎる。帝国兵と手を組めるようにはなったものの、シンバード兵も帝国兵も疲弊しているしね。タイムリミットも明日の夕方までだから時間は限られている」

 

 唸るシンさんの横でサーシャさんは一緒に地図を見ながら策を練っていた。彼女は廃王園(はいおうえん)の具体的な位置が気になったらしく、シンさんへ質問を投げかける。

 

「シンさん、詳細な侵攻計画を立てたいので教えてください。地下に埋もれている廃王園(はいおうえん)はどこから侵入できるんですか? あと廃王園(はいおうえん)の広さも知っておきたいです」

 

「面積はシンバードの8割ぐらいで高さは100メード程の空間だね。廃王園(はいおうえん)は元々シンバードの土台となっている大地が覆いかぶさっている形だから極端に言えば穴を掘り続ければシンバードと廃王園(はいおうえん)を合体させた2層の都にできるってことだ。まぁ、そんな事をしてたら時間がいくらあっても足りないけどね。だからシンバード王宮殿の細い地下階段から直接行けるようにしてあるよ。もっとも、この事実を知っているのは四聖を含めて10人もいないけどね」

 

「なら包囲網を突破したうえで最奥にあるシンバード中央の王宮殿に行かないといけないですね。これだけの距離があると流石に白鯨モーデックで空を駆けても魔量が持たないですよね。高度が上がれば魔量消費も上がりますから。かと言って低く飛べば魔獣から遠距離攻撃の的にされますし……う~ん」

 

 今度はサーシャさんが唸り始めてしまった。その後も途中までリヴァイアサンで近づく提案が出たりもしたけれど、港から上陸すれば逃げ場も無くなり、圧力が一点にかけられて潰されてしまい乗り込める人数もかなり限られてしまうから却下となった。

 

 加えてガラルドさんが「シンとリリスの魔量は絶対に温存しなきゃだめだ。敵が強すぎたらシンだけでも逃す余力を残しておかないとな」と呟いた。納得させられるのと同時にますます打つ手が狭まってしまった。

 

 集会所全体に重い空気が漂い始め、皆が頭を抱えている。するとレックさんが何か考え付いたらしく手を挙げる。

 

「グラッジ殿のスキル『魔獣寄せ』は神獣と会話する事ができるのだったな? ならば樹白竜(じゅはくりゅう)と対話して力を借りるのはどうだ? 樹白竜(じゅはくりゅう)なら飛行能力がある。十数人規模を一気に王宮殿へ運びきることなど容易だろう?」

 

 樹白竜(じゅはくりゅう)――――確か僕が仲間になる前にレックさんやガラルドさんが戦った巨大な竜だと聞いた覚えがある。

 

 当時、焦って功績をあげようとしたレックさんが樹白竜(じゅはくりゅう)の洞窟に入り、幼体を狩りながら奥へ進み、樹白竜(じゅはくりゅう)に追い詰められたところをガラルドさん達が助けたはずだ。

 

 確かに樹白竜(じゅはくりゅう)の洞窟は近いし、力を貸してくれさえすればアスタロトの包囲網を飛び越えて一気に廃王園(はいおうえん)に突っ込めるとは思う。だけど僕のスキルと対話で本当に助けてくれるだろうか?

 

 そもそも樹白竜(じゅはくりゅう)が神獣ではなく魔獣だったら話すら通用しない可能性もある。懸念点を伝えておこう。

 

「ちょっといいですか? 個人的に心配なのが樹白竜(じゅはくりゅう)との会話が成立するかどうかです。僕は会ったことがないので分かりませんが、巨大なだけのただの魔獣だったら会話できない可能性もあります。それに僕が今まで話してきたリヴァイアサンとグリフォンも仲良くなれるきっかけや土台があったから仲良くなれただけですし……」

 

樹白竜(じゅはくりゅう)は大陸北でも指折りの希少な存在だ。故に神獣である可能性は高いと思う。仲良くなれる可能性については正直厳しいかもしれないな……人間、特に幼体を殺した俺や第4部隊の兵士の事を覚えていたら会話どころか殺しに来るかもしれないな、ハハッ……」

 

 自虐的に笑うレックさんを見つめているガラルドさんは自分の事のように苦しそうな表情を浮かべている。過去の自分に苦しめられるレックさんを見るのが辛いのだろう。

 

 それでもレックさんの意思は固く、樹白竜(じゅはくりゅう)を説得するという選択を変える気はないようだ。レックさんは暗くなっていた表情を切り替え、真っすぐな瞳で言葉を続ける。

 

「大丈夫だ、仮に樹白竜(じゅはくりゅう)が俺を憎んでいても説得する策は考えてある。詳しくは樹白竜(じゅはくりゅう)に会ってから話すから、まずは洞窟に向かう事にしよう。ダメだった時は逃走して別の手段を考えればいい」

 

 硬い意志を持ったレックさんに押されてシンさんもガラルドさんも首を縦に振るしかなかったようだ。

 

 対話役である僕もレックさんの熱に押され承諾すると早速僕、レックさん、ガラルドさん、シンさん、リリスさん、サーシャさんの6人で樹白竜(じゅはくりゅう)の洞窟へ向かう事となった。

 

 

 

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